始まりの終わり。終わりの始まり。
退院したあとの僕の生活は、悲惨だった。
まず、住む所が無い。両親は、既に他界している。 友人も、唯一連絡とれるいとこも、断られた。
アパートの爆発は、僕と無関係だが(もちろんだ)、とんでもない悪人だというウワサが、流れたため不動産には全て断られた。
まあ、無職なのも理由だろう。
千由とは、連絡はおろか家に行ってもいなかった。
友人の話しだと、有給をとって実家に帰ったと言う。
おかしい。
彼女の両親も、既に他界している。
親戚だって相手にしてもらえないのに。
分からない。
どこに行ったのだろう。
「本当。どこに行ったの、私のコアちゃん」
人の頭のところで浮いている快晴が、ボソッと言う。
なんでも、起爆スイッチをつけられた自分のコアが、行方不明らしい。
「白い箱に入ったコアが、リアルに暴れてくれたら信憑性が、上がるのに~」
「暴れるってどうやって?」
「ん~と。巨大化してビルを破壊してまわるとか」
「アホか」
すると快晴は、僕をくすぐり始めた。
「やめ・・・」
端から見たら一人で笑ってるわけだから、おかしな人と思われる。
いや、遅かった。
しゃがんで自分の子供を守る女性が、目にはいった。
青ざめていて恐怖にかられている。
何か言ったら叫びそうな感じだ。
早く、この場を去ろう。
快晴にくすぐられながら考えた。
その時、右肩をつかまれた。
ソロリと振り返ると警官が、ニラミをきかしていた。
かつての後輩の眼差しは、羨望から怒りと憎しみにとって変わっていた。
「ちょっとそこまでいいですか?」
微かに彼の手は、震えていた。
「いや、違うんだ!聞いてくれ」
叫ぶようにして言う僕。
「ええ。天野先輩に逃げられたアナタの話し、交番で聞きますよ」
何かの怒りを抑えながら後輩は、答えた。
そこへ爆発音が、辺りに響きわたる。
「なんだ、アレはっ?!」
サラリーマン風の男が、そちらを指差した。
どデカイ白い箱だ。
「お~、スゴい」
いや、すごくない。
手当たり次第、建物とかを光線みたいので攻撃している。
「お前の言ったことが、現実になってるじゃないか!どーするんだよ!」
と、心の中で叫ぶ。
同時に後輩の手を振り払い、僕は逃げた。
「早く、アレをどうにかしろ!」
頭に捕まっている快晴に言う。
彼女の言った事が、本当になった。つまり、引っ込めと言えばそうなるはず。
「ならないね?」
「タイムラグが、あるんじゃ?」
「そうなのかな~」
そうこうしてるうちにそれは、消えた。
「ほら、やっぱりだ」
自販機の影に隠れるなり僕は、そう言う。
だいたい、お前がそうやって出てこれたんだからできないのが、おかしい。
「ん~?よく、分からない」
「早く、アレがこっちに来るように念じるんだ!」
「いや、その前に来たよ」
「え?」
おおよそ、30センチくらいの長さの白い箱。
僕らをじっと見てるように感じた。
「どうした、快晴?早く、捕まえないと」
その快晴は、何かおかしかった。
見えないヒモか何かで縛られてるように見えた。苦悶の表情をうかべている。
「ツカマラナイ」
確かにそう、聞こえた。
「間抜け、マヌケ!ツカマラナイから」
そうして、白い箱はスゥーと消えた。
プハーと地面に四つん這いになった快晴が、大きく息を吐いた。
「一体、どうなってるんだ?」
「分からない。けど、自分の意思を持ってるみたい」
そんな!じゃ、どうすればいいのだ?
黒い煙が、のぼっているマンションを見ながら僕は、呆然とする。
「意思が、あるなら捕まえるのは大変ね」
ノンキに言う快晴。
事態は、最悪である。
どうすればいいのだ?
こうして新たな『夢』世界が、始まる。
僕は、まどろみのなかでそれを知り、また絶望する。
もう僕は、帰れない。
平凡で退屈なあの日常に。
怪味、フルーツアタック 赤井 昭 @single21717
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