13話 千由
話しは、続く。
「私の父さんが、パチンコで借金した。借金は、返せなくて悪い連中の言いなりになってヤバイこと、やらざるを得なくなった。
でも、捕まるのがヤダで辞めたいと悪い連中に言った。でも、母さんが人質になった。
それが、私が12才の誕生日の日だった。
仕事を続けるか、母さんを死体にするか迫った。でも、父さんは泣きながら俺を殺してくれと言った。
直接、奴らが来たことも 、電話が時間に関係なく、かかってきたわ。
私と弟の新次は、しばらく怯えてた。今も、風の音でさえ恐怖を感じてる。
父さんが、思いきってお金借りたビルに行った。けれど、アイツらは姿を消していた。
警察に事情を話したけど、結局形だけとりつくろって手掛かりすら、無いまま。
捜索願いは、出してるけど警察はアテにならないし。
だから、自分でなんとかならないかって考えたわ。バカでしょう?
しょうがないでしょう!警察、何にもしてくれないんだから!
まあ、陽斗と福知と快晴3人が、探すの手伝ってくれたのは、うれしかったっけ。
母さんが、見つからないまま時間がドンドン過ぎていった。
でも、去年の夏突然のことだった。
快晴が、母さんを見つけたのよ!あ、正確には、快晴が木下さんの仲間から教えてもらった、だわね。
もちろん、何かの間違いだろうと思った。
でもね、言われた場所にそう! 間違いなくいたのよ!
暑いのに赤い色のパーカー着た連中と一緒にいたのよ!
違和感を感じたのは、タバコを吸っていたのと高そうなスーツを着ていたこと。
他にも逃げられるのに逃げないことと若くみえたこと(実際にはあり得ないね)。
外車が、来ると母さんはそれに乗ってどこかへ行った。
そうそう。一緒に快晴とハンさんが、いたのよね(ちゃんと言ったでしょ)。
ハンさんが、走りだそうとした私をがっちりホールドしたの。
私、ひたすら泣いていた。泣いて、泣いて。
何かしら叫んでたらしいわ。
車種とナンバーを元に調べてみたら、竜の爪と関係ある組織だって。しかも、またエンジェルキッスって言うヤバイ、クスリ売るために再組織されたキノワ(鬼の輪だって。何の輪かしら?ネットワークのことかしら?)と判明した時、前園の組の木下は、撤収を提案したの。
ほんのちょっと、捻れば潰れるような組だからって理由で。もちろん、相当ヤバイ相手だと言われた。
文字どうり、子供だし大人のしかも、やばい世界なんて分かりはしない。
でも、いる場所は分かってるのよ!行かずにはいられないでしょう?
ほんのちょっと、見る。見たら、すぐに帰るって約束でその場所に行ったわ(もちろん、木下の仲間と快晴が、一緒にいた。もうね、快晴って何者って考えはなかった)。
ワラビ陸橋のそばの潰れたパチンコ屋よ。
一見すると木の板でふさがれていて、中の様子は、分からなかった。
でも、裏口からは人の出入りはあった。段ボールをワゴン車に積んでいた。中身なんてどうでもいい。あの人たちが、何をしていようがそれも含めて。
ひょっとしたら、母さん、今日は来ないかもしれない。おなか、空いたとか喉かわいたとか、そんなの感じてもどうでもいいと思った(快晴、弁当作ってくれたの。食べても味なんて分からなかったでしょ)。
約束では今日1日だけ。それ以上は、危険だから無理と言われていた(こっそり、1人で行くからいいもん)。
夕方、それはおきたわ。
最初は、熱中症で幻覚でも見ているのかと思った。けど、快晴が間違いないって言ってくれた。ぬるま湯みたいなスポーツドリンク、一気に飲んでその車を見たの。
確かにあの時の車って思った。
サングラスをかけた母さんが、外に出てきてダルマみたいな顔した人と一緒にビルの中に入って行った。
もちろん、確認したからここで終わるはずだった。けどね、気づいたら走っていたの。
最初は、快晴が私の肩を掴んだけどすぐに振り払った。
叫んでいたそうよ(覚えてない。興奮してたのね、きっと)。
気づいた母さんは、ビルの外に出てきた。
でも、取り巻きの連中に捕まったわ。力ずくで地面に押さえつけられたわ。
泣きながら母さんを呼んでいた。
母さん、母さんって泣き叫んでいたそうよ。
その時の快晴たちは、動けなくて隠れたの。
まあ、当然ね。捨てられても、仕方ないことね。
母さん、しゃがみこんで私をジイって見た。
何て言ったと思う?
『バカな娘。わざわざ、死にに来たのか?』
声は、間違いなかった。でも、言葉に感情がこもってなかった。
続けてこう言った。
『お前の母さんは、私がもらった。この魂は、もう少ししたら消滅する。だから、もう来るな』
つまり、誰か分からない人に盗まれたのね。
なんていうのは、理解したの結構あとなんだけどね。
ビルの中に引きずりこまれた私は、どうなったと思う?
正直、母さんが帰ってこないならここで殺されてもいいかなって思った。
母さんが、こう言った。
『言っておくが、私が無理矢理この体に入ったわけでは、ない。勘違いするなよ。娘、この女とはちゃんと面談をして了解を得て入ったのだ。
娘、この女は何て言ったと思う?』
すごく、歪んだ顔で聞いてきたの。
思いつくわけないじゃん。母さんが、私たちを捨てるなんて考え、もってないんだから!
『もう、あの家に帰りたくない。働いても働いても貧乏!しかも、あのバカは、パチンコなんかやって挙げ句ヤミ金に手、だして!
ものすごくバカみたいよ!自殺するくらいならあんたにくれてやる』
ハッキリとくれてやるって言ったってさ。
私は、今だに信じてないけど。でも、ムカツクよ、マジ。
だってさ、子供にとっては大事な存在なんだから!裏切られても、結局信じてしまう。
ソイツが、何者なんてどうでもよかった。
母さんが、家に帰ってきて又、普通の何でもない日常をおくれればいいと思った(これ、大事なとこ)。
そうよ、退屈な日常がこんなに大事なんてさ、だいたい気づくわけないじゃん?
おおかた、失ってから気づくじゃない。
ソイツは、もっともらしくこう言ったの。
『何でもない日常が、どんなにゼイタクか理解したろう?この間抜けが!死ぬまで後悔すればいい。娘よ、覚悟しろ!』
で、ゲンコツで殴ってきたの。すぐに口の中が、切れたわ(追いかけるように鼻からもね。口の中で混じって吐きたいくらい) 。
快晴たちは、逃げたんだって思いながら何度も殴られたわ。
意識が、もうろうとしてきたとき、外が騒がしくなったの。
友よ、やっと来てくれたかと最初思った。
けど、違ったの。
涙越しに見えたのは、父さんだったの(驚きよ。来るなんて想像してなかったし。ヒントすら言ってなかったのにどうしてって思ったわ)。
幻かな?
でも、父さんの声がハッキリ聞こえてようやく、理解したわ。
『アズ、アズ』って叫んでいた。泣いていたわ。まあ、若い男たちに捕まっていたけど。
嬉しいと思うまえに信次、どうするなんて考えたわ。1人になってカワイソウねって。
『何をしに来た?仕事なんぞやらせない』
『アズと千由を返せ!この~返せっ!」
暴れる父さんに母さんは、言ったわ。
『グズのダメ男が、何を言っている?貴様は、捨てられたのだ。いいか?捨てられたのだ!分かったか?』
今度は、父さんを殴りはじめた。
アア、私たちこうして殺されるのね。
でも、母さんに殺されるならいいかなって思いはじめてた。
ここでようやく、快晴とハンさんたちが、助けに来てくれたの。
とは言え、子供とヤクザの2人よ。なんの足しになるんだと思った(ごめんね。でも、誰でもそう思うよ)。
母さんは、指示をだした。
『面倒だな。よし、撤収だ!急げ!急げ!』
突き放された私と父さんは、コンクリの床に倒れたわ。
『アア、そうだ。次からは、リシン様と言うんだよ。じゃないと即、殺すからね!』
その時のなんて言っていいか分からない。
目が、異常なくらい光ってて顔が、あんなに歪むなんて。恐ろしい、禍々しい。
とにかく、背筋が凍る。そして、本能的に危険だと感じた。
無力、無能、最低。
泣きじゃくる私の頭にネガティブな言葉が、浮かんだ。
助けられるはずなのに助けられない。
悔しくて悔しくて(よくドラマとか批判してたけど、結局、皆そうなるのよ。なぜ、なぜって。うちひしがれて泣くのよ)。
ハンさんの仲間が、乗ってきた車でこの事務所に来た。
手当てをうけて(顔が、擦り傷だらけ。アザもあちこちにあった)、一休みしてると弟の新次が避難してきた。
しばらくいたらと言われたの。
確かにいつ、襲われるか分からない。
でも結局、父さんだけ家に戻ると言った。
この時、私は一番後悔してるのは父さんだって気づいた(薄々、分かっていた。でも、父さんを責めるために気づいてないふりをしていたの。でないと私も、もたないから)。
『父さんなら大丈夫』
何さ。よく、そんな事言えるわね!
引っ張たいてやろうかと思ったけどやめた。
お互いに傷つけあって何になるのか。
そっとしとこう。私も疲れたし。
死ぬなら、死ぬなら。
思っているのと違うこと言っていたわ。
死なないで。お願いだから!
それから、2週間くらいかな?
夏休み半ばあたりで事件が、おきたのよ。
新次が、さらわれて行方不明になった。
父さんが、よろよろと真っ青な顔で私にこう言ったの。
『絶対にアイツらだ。どうしよう』
泣くのをこらえながらね。
快晴の話しだと友達と一緒に遊びに行ったそうよ(この時、事務所から家に戻ってきたの。いつまでも、厄介になるわけいかないでしょう?)。
図書館に行ってる私が、心配しないように快晴にことづけしてったのね(しっかりしてるでしょう)。
快晴が、家に来てくれたけど敵から連絡すらなくてどうしていいか、何を話していいか分からなかった。
そうしたら、父さんが突然家をでたのよ。
驚いた私たちは、あとを追った。
はだしで走ってる父さんを途中でどうにか、つかまえたの。
アイツらから連絡あったって。
元郷の公園の噴水に来いと言われたって。
警察に言ったら殺すって言われて本当に通報をしてなかった。
1人で行かないといけないって言うけど、危なっかしいから私が、一緒について行くことにした。快晴には、コンビニにある公衆電話から通報してもらうよう頼んだ。
本当に警察来るか分からないけど、父さんの腕掴んでその場所に行った。
噴水には、5人か6 人の男たちがいた。
母さんの姿は、なかった(リシンなんて呼ばないから!)。
夜遅いのにサングラスかけてる男が、大きい声で言ったわ。
『弟、返してほしいか?なら、姉ちゃんがこっちに来ないとな!』
ゲラゲラ、笑ってキモイわ。
それよりも、猿ぐつわされてる新次が、カワイソウで見ていられなかった。
私なんてどうでもいいって思ってた。
『ふざけるなっ!新次を返せっ!』
父さんが、怒鳴り返すとその男は、新次を突き放さしたの。地面に倒れた新次の猿ぐつわとかはずした時、男はこう言ったの。
『せっかくだから、3人一緒に死んでもらおうか』
男の仲間たちが、姿を変えたの。
月の光に照らされたソイツらの姿は、物語にでてくる狼男そのものだった。
声もでず震えてる私たちにソイツらは、ゆっくりと近づいてきた。
父さんが、泣きながら殴りかかった(バカじゃないの? 私たちに覆いかぶさるでしょ!普通は!)。
敵に頭をつかまれて放りなげられる父さん。
相手の鋭い爪が、ギラって光ってた。
あれで殺すんだ。震えながらそう、思った。
快晴が、来てもコイツら見たら逃げるだろうな。警察、来ても同じかな。
意外に冷静な自分がいたわ。怖くて体が、震えてるのに。
そうしたら、火の玉みたいのが降ってきたのよ。最初は、何か分からなかった。
幾つ目か分からないけど、目の前でそれが爆発した時、ようやく理解した。
気配を感じて、後ろを振りかえると快晴が、そこにいたの。
手のひらが、パシって光ると火の玉が狼男にあたって爆発した。
狼男たちは、倒されて木の人形になった。
いや、元に戻ったのね。
私たちの頭の中は、ひどく混乱してた。
『さあ、急いで! 逃げるよ!』
快晴に言われて私たちは、とにかく走った。
後ろを振りかえることなくね。
止まったらあのサングラスの男に捕まる。
そう、思いながらね。
気づいたらここにいたわ。
あのあと、どうしたかな?
もう、ひどくこんがらって考えられる状態じゃ、なかった。
下の受付のところで4人、仲良く寝転がって息をきらしてたわ。
そうよね、快晴?」
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