8話 公園

皆川の話しは、続いた。 社長は、さっきから何も言わない。 イタズラが、バレてどうしようと考えてる子供みたいだ。 例えが、いまいちだが。

「おでは、死んだ彼のために・・・。 いや、カタキを討つために仕事を続けただ。

あの時に話したように双子は、週末必ずあの堤防に現れた。

そちらさんの仲間と一緒にその車を尾行しただ。 そんなある日だ」

缶のお茶を飲みながら言う。

「Y市に行く途中にある工業団地でのことだ」

ゆっくりと話すその内容は、次第に恐ろしいものになっていく。

双子以外からも麻薬の材料が、ヤクザに渡されていたこと。

銃器、売春婦、借金返済ができなくてドレイになった人たちが、取引されていたこと。

ヤバイ物を専門に運ぶトラックの人間たち。

裏稼業を縮小したかのような光景が、そこにあったそうだ。

「おでみたいなのが、フラッと行っても分からないんじゃないか、そう思っただ」

月に一度、見本市みたいな感じで(もちろん夜中)、人と物が売り買いされていく。

「本当にここは、日本かと思っただ。 そしたらだ、あるトラックに目が、いっただ」

自分が、ある倉庫に派遣された時にそのトラックの主を見たことが、あった。

「確認するんでおでたちは、跡をつけただ。そしたら、ソイツはどこに行ったと思うだ?」

ナゼ、そこで聞いてくるんだ。 ほら、丸さんがそっぽ向いたぞ。

「ワザワザ、聞くんだから私たちに関係が、ある場所なのか?」

お? 田島の兄貴が、ようやく冷静を取り戻した。 鈴木も、落ち着いてきたようだ。

社長は、相変わらずうつむいたままだ。

だが、それが答えだった。

「トラックは、朝の8時半にここの倉庫に入っただ。 何くわぬ顔で仕事していっただ。

なあ、社長さん?」

くるっと回って丸さんを見る。

「報告をうけた時、驚いたよ。 こんな身近に犯罪に関わった人間がいるってことに」

さっきとは、違って声のトーンが下がっていた。

奇妙な感じの間が、あった。

「私は、すぐには切れなかった。 個人でやっているとは言え、周りに怪しまれると思ったんだ。 けど、失敗だった」

社長は、後悔の念をこめて話す。

「皆川君に言われて彼に問いつめた。 は、見られてはいけないものだろう? そうでないなら、見せてくれと言った。

けど彼は、売上げの足しになるから。 借金が、なくなり次第やめるよ、絶対に。 迷惑はかけないからと言って押し通そうとした」

「けれどその運転手は、結局捕まった。 細かいことは、言わないが」

「ちょっと、いいかな?」

「なんだ?」

丸さんが、代りに答える。

「話しの筋からするとそこら辺で、今回の案件はだいぶ分かっていたんじゃねぇのか?」

俺は、感情をこらえながら聞く。

「え? てことは、こうなるのも予測できたってことじゃ⁉」

ショックを隠せずに言う。

「社長! 丸さん! はっきり言ってください!」

俺より先に鈴木が、キレた。

「なんで黙っているんですか? 我々は、一体なんのために危険を冒したんですか?

理由を、理由をはっきり言ってください!」

社長から丸さんへと移動し、つめ寄る。

「・・・前園の組は、よそ者を常にマークしていた。 連中の偵察隊の行動もチェックしていた。 予想どうりと言うべきだろうな」

俺たちの顔をチラッと見たあと、話しを続けた。

「連中と皆川のは、やはり同じ工業団地だった。 この町でとてつもなく、ヤバイことがおきていると結論づけた」

「その頃だ。おでの友人が、殺されたのが」

「俺たちは、じゃ一体なんのためにはたらいていたんだよ?」

「大元の人物を知るため、だな」

「それって竜の爪のメンバーじゃ⁉」

「いや。 確かに資金は提供してるようだが、メンバーはほとんど、動いていない」

「つまり、竜の爪に影響を与えられる人間が、関わっていると考えたんだ」

社長が、顔をあげてそう言った。

「どういう奴かは、まだ分からない。 けれど、間違いなくデッカイ獲物がいると判断をした」

「で、俺たちを使って調べあげようとしたんだな?」

「そうだ」

社長は、はっきり答えた。

「でも、そのわりには一度通ったあとをまた、調べているようですが?」

「敵が、いつやり方を変えるか分からないからな。なんかの拍子に新しい発見が、あればと考えて実行した」

丸さんが、答える。

「でも、でてこなかった」

「アア・・・。 今後、前園の組が動くようだとさらに敵は、慎重に且つ巧妙になるだろう。 その前に答えを見つけたい」

沈黙する俺たち。

普通に考えれば、ここで手を引くべきだ。

他にいると思われるメンバーに、全てを委ねるべきだ。

俺たちは、だ。 進んでは、いけない。 だのに。

「案外、竜の爪を語っているだけで違う組織が、やってるだけ。 と言う考え方は、もうしてるんですか?」

田島の兄貴が、丸さんに聞く。

いや、終わりにしましょう、ここで。

「考えた。 日本で失敗してあげく、自分の国でも激しい取り締まりにあっている。 金がいくらあっても、活動は難しいとふんでいる」

「だから、影響力のある大元が、資金をださせているって思ったわけですか?」

「そう、だな。 エンジェルキッスは、本物だったから関係はあるはずだ」

要するに儲かったら売上げの一部が、竜の爪に行くわけだ。

「おでたちが、命かけて材料をパクっただ。

調べて分かったは、ほんの少しで死んじまうくらいヤバイ、葉っぱが使われているだ」

「正体は、まだ不明だが本格的に使われれば・・・」

「廃人が、増えるな」

「アア、そうだ」

なんでそんな物騒な物が、この世にあるんだろうか。 それよりも、俺は違うことを聞くことにした。

「あんまり、知りたいとは思ってなかったんだけどよ。 丸さん、ちょっといいかな?」

下でに聞いたつもりだ。

「なんだ?」

「・・・丸さんって何者なんだよ? ハッキリ答えてくれ」

また、沈黙。

うるさい、お前は駒なんだ。黙れと言うかもと予測していた。 だから、この質問はあまり意味のないもんだ。

以外な答えが、返ってきた。

「もともと、警察で仕事をしていた」

俺の目を見て答えた丸さん。

言葉が、でてこなかった。 代りに脂汗が、ジワリと噴き出した。


前園の組が、俺たちに連絡してきたのは、月が変わって少したってからだ。

時間が、平日の午後。 場所は、元郷の公園。

月曜から金曜までというわけだが、さすがに仕事片手間にカバー、できるわけない。

皆川が、元のホームレスに戻ってキノワ(鬼の輪)か、若しくはあの双子が、来るか見張っている。 とは言うものの、実際に連絡きてもすぐには動けない。

なので丸さんのところが、請け負うことになった。

だけど随分、おおざっぱだな。 もっと時間と曜日、絞れなかったのか。

範囲が、広すぎるとモチベーションの維持が大変だ。

皆川から社長に連絡が、あった。

金曜の15時から17時の間に双子が、公園に現れるらしい。

双子は、相変わらず赤と緑のジャージを着ているそうだ。 誰かと接触するか、それとも品物をどこかに隠すか。

16時を回った。 さらに時間が経つ。

警戒して来ないか、果てはガセだったか。

俺は、仕事のおつかいとして公園に来ていた。 用意されたくたくたの背広を着て皆川の連絡を待つ。

「来ただ」

その一言に緊張する俺。 今は一人。 あとから田島の兄貴と鈴木が、来ることになっていた。 ヘマをしないようにしないと。

「目標物は、入り口から3番目の南側のベンチ

の下に白い箱を隠した模様だだ」

よおし、行くか。

俺は、トラックを降りてそこへ足を向けた。

目標物をかっさらい、前園の組の木下にわたす。 多分、取引材料にするんだろう。

渡された携帯と地図が、書かれた紙があるのを途中で確認する。

ヘマは、絶対できないゼ。

蒸し暑いなか余計に汗が、噴き出してくる。

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