004 ロボコンに決めた!
「凄いじゃんヨーコ! お手柄だよっ!」
発見を連絡した翌日、大興奮の悠香が肩を叩いてきた。
陽子は思わず肩を竦めてかわそうとする。
「いや、お手柄っていうか……」
「謙遜しないのー」
亜衣までがそんな事を言ってくる。
「校舎内とは盲点を突かれたなあ。でもまあよく考えりゃ当たり前だよね、図書館前っていっつも何かしらの広告貼ってあるもんね」
「……まだ探してもいなかったのに」
「私もー」
麗と菜摘も、やや残念そうな表情を見せた。そんなにこのネタ、喜ばれるのかな。陽子は改めて、ポスターを撮影した写真を見返してみる。
『全日本スーパーロボットコンテスト THE-BATTLE2015』。
主催者名には理化学研究所や宇宙航空研究開発機構──JAXAの名前が挙がっていた。主催している所が所だけに、それなりの知名度はあるコンテストに違いない。
単なるロボットコンテストなら、五人全員がテレビ番組で放映しているものを見たことがある。こんなに仰々しいタイトルだったかどうかは覚えていないが。
「ロボコンって、アレだよね? ボールを運んだりしてスピードを競うやつ」
「私もそれ、想像してた」
「……『スーパー』って書いてあるってことは、他のロボコンよりもやばい要素があるんじゃない? しかも『例年より過激』なんて怖いことが書いてあるし」
口々に言い合う四人、いや麗は黙っているから三人だ。要領悪いな、と陽子は嘆息した。
「……勧誘の宣伝ばっか見てたって、具体的な事なんかわかりっこないでしょ」
業を煮やしてポスターを表示したスマートフォンを引ったくった陽子は、画面を打ち始めた。「ここに書いてある番号に電話かけてみりゃ済むことじゃん。@@@-@@@@-@@@@……」
さすが、行動派の陽子である。こういうときは手際がいい。電話担当は決まりだな、などと悠香は小さな声で言った。
が、間が悪かったようだ。
「ダメだ……。何回掛けても繋がんないよ」
掛け続けて三分、陽子は電源を切ったスマホの画面に向かって吐き捨てた。
「電波障害?」
「違う、『お話し中』だって」
それなら仕方あるまい。
「んじゃ、時間おいて後でまたかけ直せばいいね」
悠香のその一言で、五人はそれぞれの席に戻っていった。
いつもの朝。授業開始五分前の予鈴が鳴り終わり、教室にはもう生徒の六割方が集まってきていた。
半ば上の空で、悠香は席についた。
──ロボットコンテストに、私が参加するだなんて。
机に頬杖をつき、悠香は目を閉じる。仄かな冬場の陽の光が、肌に心地よく感じられる。
──どれだけのことが出来るかなんて、まだ分かんない。けど、きっとこれはチャンスなんだ。私が、変わるための。
いったいどんなロボットを作るのだろう。テレビを見ている限りだと、火星探査機のようなマシンが会場内を走り回っているイメージだったが、如何せん『スーパー』だ。もしかしたらもっと、特異で面白かったりして。
空想は無限に膨らむ。えへへ、と悠香はちょっとだけ笑うと、近くの大窓いっぱいに広がった冬の空を眺めたのだった。
あの空に飛び立つ誰かの姿を、ぼんやりと思い浮かべながら。
◆ ◆ ◆
玉川悠香、隅田陽子、鶴見亜衣、渡良瀬菜摘、相模麗。
五人の挑戦は、こうして幕を開けたのである。
その運命の交差線上に、どんな
そんな事など、まだ何も知らずに。
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