00-3.事件

【語り部:加藤保憲やすのり



 賀陽かやは新宿、特に歌舞伎町の住人に贔屓にされている私立探偵。2年目ながら、トラブルを解決するので、顔はそこそこ売れている。


 相当な剣道の腕をもっている彼は、最後はいつも力技で強引に決着をつける。(今のところ正しい(であろう)結果には導いているが。)

 よって、彼の事を用心棒稼業の人間だと思っている人も少なくない。


 顔が売れた探偵……商売になるのかは疑問だが、今のところ経営は続いている。


 さて、本題だ。


3日前、彼のお得意さんのクラブの店長が彼に相談を持ち掛けてきた。1週間前からホステスが一人出勤してこないという。その子の実家は関西で、震災の影響はない。


 今まで一度も無断欠勤はなかったので、不審には思っていたものの、状況が状況なので、親戚やら友人やら、なにか事情があるのだろうと思い、放っておく事にしたらしいのだが……昨日、2人目のホステスが行方不明になったという。


 賀陽かやとは互いに情報提供の約束をし、その日は別れた。


 が・・・・・・


 賀陽の相談を受けた2日後。一人目の行方不明者が、新宿区戸山公園で遺体となって発見された。



 ―――捜査室。


「先輩。この状況下なので行方不明者は数えきれないほどでています。ですが、2週間以内の発生、歌舞伎町のホステスで絞込をかけると、他にも2名程、行方不明者がいます」


 豊島の手で2枚の写真がホワイトボードに張り付けられる。


「これも張っておけ」

 私は手に持っていた、別の女性2名分の写真を差し出す。


「これは?」


賀陽かやからの情報だ」


「賀陽さんの?」


「三鷹在住の専業主婦、それと西麻布在住のOL。どちらもホストクラブの常連客らしい。この二人も行方不明者だ」


「なるほど。さすが賀陽さん。夜方面には明るい」

 ……皮肉めいた言い方をするが、賀陽のこと、完全否定でもないらしい。


「やっぱり星は歌舞伎町ですかね……」


「お前も言っていただろ?行方不明者は数えきれないほどいる。他にも注意は怠るな」


「はい」


「お前は歌舞伎に限らず、広く情報を集めてくれ。俺はひとまず歌舞伎に焦点を絞る」


「承知しました」


「しかし、死に方も気になるな。外傷無し……。司法解剖の結果がでたら知らせろ。私は出てくる」

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