幻想電子な最恐双姫をスマートフォンで鳴動召喚! ~もしもしメリーさん? 異世界にトリップした俺だけど、米袋20kg届けてくれない? あと、おやつの『オレオ』も頼むわ!~
第5話「わたしメリーさん……美容のため毎日豆乳飲んでるけど効果に疑問を感じるの」
第5話「わたしメリーさん……美容のため毎日豆乳飲んでるけど効果に疑問を感じるの」
「九條様。キャロルはお待ちしておりましたわ」
冥介とイド娘とテケテケは、王城に戻る。
帰還を祝福する兵士には脇目を振らず、真っ先に王女の寝室へ向かう。
寝室にいたのは、淑やかな令嬢。
椅子に腰掛けた姫君が、にこやかに待っていた。
どうやら読書の最中だったようで、読みかけの魔道書「月刊ネクロノミコン ~はじめてのせっくす特集号~」を閉じる。
椅子に置かれたクッションは、両面に「YES」と書かれたハート型の枕。
クールなフェイスの冥介は、頬を染めるキャロルに言った。
「どうやら、準備は滞りないようだな」
「はい。九條様に最高の一夜を過ごしてもらうべく、キャロルは準備して参りました」
「そうか。褒めてやる」
「ご褒美はベットで所望しますわ。やんごとなき身分のキャロルが大事に守り通してきたロイヤル処女膜を、九條様の――」
「というわけで、貴様は寝室から出て行け」
「……はい?」
「王女の寝室は、これよりテケテケの処女を奪うのに使用する。貴様は邪魔だ。魔道書図書館にでも行って、時間を潰していろ」
「そ、そんなぁ……」
キャロルが潤んだ瞳で冥介を見るが、その腕に抱きつく別の女がいた。
モヒカンヘアーがほどけた、上半身だけの美少女妖怪だ。
上半身だけの美少女妖怪は、キャロルに見せつけるように冥介に抱きついて。
――ププッ。
優越感をたっぷりと込めた、侮蔑混じりの嘲笑を向ける。
「そ、そんな……わたくしとの関係は、遊びでしたのっ!?」
「ふん。利用できる女がいたから使ってやった。せいぜい光栄に思うんだな」
「ヒドいですわ! キャロルは冥介様に――」
「口答えは許さん」
――タンッ!
腰から拳銃が引きぬかれて、姫君のロイヤル頭蓋骨をヘッドショットする。
「そら……キレイ」
脳漿を垂らすキャロルは、床に倒れる間際。
大理石の天井を仰ぎ見て、現実逃避の妄想の中で死んでいった。
「井戸娘。キャロルの遺体を片付けろ」
「はいです。腐敗すると処理が面倒なんで、後で僧侶に蘇生させておきますね」
「良きに計らうがよい」
「御意です」
死体処理をイド娘に任せて、冥介は王女の寝室を見渡す。
準備を命じたかいもあって、寝室の具合は男女の営みに相応しいセッティングだ。
豪華な天幕付きのベットには、シワひとつ見受けられない純白のシーツ。
ガラスの壁で覆われたバスルームには、香水と花びらが散らされた湯船。
恋する都市伝説のテケテケは、瞳をハートにしながら言った。
「ステキなお部屋……」
「上半身だけのマドモアゼル――お気に召したようで何よりだ」
「嬉しい。わたしの処女を貰ってくれるだけじゃなくて、素敵なお部屋をプレゼントして貰えるなんて」
「プレゼントは、これだけではない」
言い終わると同時に冥介は、親指を「パチンッ」と弾く。
すると、背後に美少女が出現した。
殺害対象がどこにいようと、背後にワープする異能を持つメリーさんだった。
地球でおつかいを任されていたメリーさんは、見事役目を果たした。
彼女の傍らには、少女の下半身が付き添っていたのだ。
「ま、まさか……」
「上半身だけのフロイライン――夜の生活に不自由するお嬢様に、今宵は特選のプレゼントをお持ちした」
「わ、わたしの下半身……地球に置き去りにしちゃったハズの……」
「この娘ね、地球で妖怪やってたのよ」
テケテケの疑問に答えるのは、世話焼き幼なじみ系の美少女。
黒髪ショートの都市伝説、メリーさんだった。
「べとべとさん――暗い夜道で足音だけが聞こえてくる妖怪よ」
「テケテケよ。貴様の夢をかなえる下半身だ。思う存分、合体するがよい」
「うんっ! いくよー! あたしの下半身ちゃん!」
上半身だけの美少女妖怪が、謎のポーズをビシっと極める。
下半身だけの美少女妖怪は、その場でぴょんっと跳躍する。
二匹の妖怪変化が、光のシャワーと謎のBGMに包まれる。
ヨーカイ・アーバン☆レジェンドパワー・メイクアップ!
上半身と下半身の妖怪は、
地球と異世界で離れ離れになった、
切断面が合わさって、
「てけてけ+べとべと=コンタクト!」
無事合体に成功して、ごく普通の美少女妖怪にメガ進化する。
冥介は、それを眺めながら言った。
「テケテケ。似合ってるぞ」
「ありがとう。これでわたしは普通の女の子。つまり……」
「シニョリーナ。今夜は卒業式だ」
「ええ、男の人に抱かれて、わたしは処女を卒業しますっ!」
「というわけだ、来い」
冥介が親指を「パチンッ」とすると、傍らにブラウン管のテレビデオ(※ビデオデッキとテレビが合体した機械)が出現する。
テレビ画面には、森の中にある古びた井戸の映像が映されている。
テケテケは、首を傾げながら言った。
「なにコレ?」
「夜は長い。せいぜい楽しむがよい」
「え? ええっ?」
冥介とメリーさんは、寝室を後にした。
王城の廊下を歩きながら、メリーさんと冥介はブツブツと会話するのだ。
「かわいい女の子にしか見えないイドちゃんに、あんな設定があったなんて……」
「呪いのビデオで検索してみろ。ウィキペディアにも書かれている」
「信じらんない……イドちゃんが、両性具有の美少女都市伝説だったなんて……」
「両性具有――つまり女性なのに男性器がある。しかも井戸娘は」
「百合好き乙女……」
「まさにうってつけだな」
「九條君って、本当に鬼畜よね……」
「ふん。見ず知らずの他人を殺そうとした、貴様には言われたくない」
「メリーさんの本能だから、仕方ないでしょ!」
寝室の向こうからは、少女の悲鳴が聞こえてくる。
「きゃぁぁ! 画面の向こうからぁぁ!」
「きゃぁぁ! 来ないで、来ないでぇぇ!」
「いやぁぁ! 大きいっ! 生々しいっ! ちくわ大明神ッ!」
恐怖の絶叫は、やがて喘ぐような声に変わっていく。
「んんっ……く、くるー」
「あぁっ……きっとくるー」
「ひぅっ……井戸お姉さんの瞳が……」
<●> クワッ
少女の喘ぐ声。ベットの軋む音。
テレビの放送終了を告げる、ザァーザァーと鳴り響く砂嵐の音。
美少女妖怪の夜は――
まだ、始まったばかりだった。
「さて、蘇生は終わっているな」
「九條様! いきなりヘッドショットなんて、あんまりですの!」
医務室に行くと、姫君のキャロルが怒ってた。
必死で「オギノ式」とか「ラマーズ法」を勉強した、乙女の努力とワクワクを返せ!と、怒鳴っている。
そんな高貴な身分の姫君に、冥介は命じるのだ。
「キャロル。貴様のうんこをよこせ」
「……はっ?」
「この場でうんこをしろ。ジップロックはメリーに用意させている」
「……えーと」
「もう一度だけ命じてやろう。俺こと九條冥介は、貴様のうんこを所望している」
「これは世紀の大発見だ!!!」
白衣のおっさんが、興奮して叫ぶ。
ブレザーの制服を着たメリーさんは「はぁ……」コメントする。
あれから、数日後。
地球に戻ったメリーさんは、九條グループの研究所にいた。
九條冥介の父親が総帥を務める、世界規模の巨大複合グループの施設だった。
面倒くさそうな表情で、メリーさんは言った。
「へぇー。すごいですね」
「凄いなんてもんじゃないよ! 異世界で採取された排泄物に含まれる細菌類を調べてみたんだ! 地球上には存在しない新種だったよ! 他にも王都の市場で買い集めたという農作物だが、これも地球には存在しない未知の植物で農業の歴史を大きく変えるのは確実だ! 特に異世界の発酵食品に含まれる細菌は大手食品メーカーの研究者が言うには「納豆の歴史はコレで1000年進むだろう……」とのことだ!」
「よく分からないですけど、凄いんですね」
「製薬会社や食品会社が東南アジアや南米のジャングルに探検に行く理由を知っているかね? それは有効な薬効成分を含む植物や、未知の抗生物質を合成する細菌を探し求めてだ! それが異世界まるごとひとつの動植物が手に入る……これが興奮せずして、何を興奮せずだ!」
「ま、まあ、性癖はひとそれぞれだと思いますし……」
引きつった笑みで相槌を打つのは、普段は平凡な女子高生のメリーさん。
たまに都市伝説するだけの平凡な日々は、突如終了する。
白衣のおっさんと会った、翌日。
メリーさんの口座に、何の断りもなく振り込まれたのだ。
異世界資産の権利使用料という名目で、ポンと「150,000,000,000円」ほど。
100万円の札束の厚みが、だいたい1cmぐらいと言われる。
だから、1500億円の厚みは150000cmぐらい。
札束を積み上げるだけで、高さ1.5kmのタワーが完成する。
そんな巨万の富を手に入れた、平凡な女子高生のメリーさんは。
――PLLLL
「もしもし?
わたしメリーさん……また九條君っ!?
今度はなんなのっ!? なにを異世界に持っていけばいいのっ!?
あたしは都市伝説だけど、普段は真面目に女子高生やってる女の子なんだけどっ!?
いや……うん、分かった。
100円ショップで買えるのでいいかしら……うん、安く済みそうだし。
あと、軽くてよかった……
この前みたいに、米袋20kgとお味噌500gとか言われなくて。
ほら、お米やお味噌は重いし。
あとね、あたし来週から期末試験だから……成績は中の上だけど……念のためね。
うん、今から調達して持ってく」
今日も、冥介に命じられて異世界に旅立つ。
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