幻想電子な最恐双姫をスマートフォンで鳴動召喚! ~もしもしメリーさん? 異世界にトリップした俺だけど、米袋20kg届けてくれない? あと、おやつの『オレオ』も頼むわ!~
第1話「わたしメリーさん……お兄ちゃんのヒゲ剃りで脇毛を剃ってるのは内緒なの」
第二章「異世界トリップの疲れからか、メリーさんは黒塗りの高級車に追突してしまう。後輩をかばい全ての責任を負った三浦に対し、車の主谷岡に言い渡された示談の条件は「この章は『なろうテンプレ』を意識しろ」で
第1話「わたしメリーさん……お兄ちゃんのヒゲ剃りで脇毛を剃ってるのは内緒なの」
「ふーん。なるほどね」
お昼休み、高校の屋上で。
平凡な女子高生の都市伝説――
相槌を打ちながら食べるのは、新発売の「異世界パン」だ。
異世界原産の酵母で発酵させたパン生地が、甘酸っぱい風味の秘訣。
甘くてちょっと酸っぱくて、まるで恋の味みたい。
「
「二宮は、誰とでも仲良くなれるタイプだろ?」
「あの子は苦手かも。ほら、自分の殻に閉じこもってるタイプじゃん」
「あいつは素直になれない女だからな」
メリーさんと会話する守屋は、同じクラスの男子生徒。
守屋に呼び出されたメリーさんは、二人っきりの屋上で「
影森未央は、同じクラスの女子生徒だ。
教室で浮き気味のクラスメイトで、どの女子グループにも属していない。
基本的に群れる傾向にある女子の中で、一匹狼の
ただ孤独で、ひとりぼっちなだけだ。
守屋に相談されたのは、そんな捻くれ女の手助けだった。
相談内容を聞いたメリーさんは、アハハと笑いながら言った。
――もしかして、守屋君って影森さんのことが好きとか?
――片想いだけどな
その瞬間、メリーさんの頭は真っ暗になった。
晴れ渡った青空の下で、メリーさんは心の中で思うのだ。
――どうして、自分が好きになった男はバカなんだろう
――どうして、自分が好きになった男は気づいてくれないんだろう。
――どうして、自分に惚れてる女に恋愛相談なんてするんだろう。
バカバカ、守屋君のバカ。
だけど、
「二宮。影森の件だけど、手伝ってくれるか?」
「いいよ」
ウソ。全部ウソだった。
守屋君のお願いなんて、絶対に聞きたくなかった。
でも、言えるわけない。
メリーさんが、今ここで守屋に愛を告白しても……彼を苦しめるだけ。
だから、
「恋愛成就の達人、メリーさんに任せて!」
……嘘をつく。
青空を眺めながら、メリーさんは「異世界パン」をかじる。
味は甘くて酸っぱくて、だけど恋はほろ苦い。
無理やり作った笑顔を浮かべて、制服姿のメリーさんは守屋に言った。
「守屋君。わた――」
――PLLLLLLL
「……ちょっと待ってね。スマフォが鳴って――もしもし、わたしメリーさん……うん。異世界の九條君だよね。分かってた……ごめんね、いま取り込み中というか青春の修羅場というか……えっ!? いきなりそんな……制服なら着てるけど……行けばいいんでしょ! つーか、ありがとう! リアルから逃げる口実ができたわ!」
ツーツー。
無機質な通話終了音が鳴り響く中、メリーさんは言った。
「ごめん。ちょっと異世界、行ってくるわ」
「えっ!?」
まぶたを閉じると、涙がぽろり。
まぶたを閉じれば、異能発動。
ターゲットがどこにいようと、必ず背後に出現できる異能を使って。
メリーさんは、
九條冥介が待っている、異世界に瞬間移動した。
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