第25話 数日の特訓の成果でございます


 私が進化してから9日が過ぎた。

 どうやら二人は明後日に誕生日らしく、明日には両親が城から帰ってくるのだと、嬉しそうに大はしゃぎしていた。

 可愛い。


 それだけじゃない。この8日間で二人は恐ろしく成長をした。



 まずはリンネちゃん。


 彼女は双剣の技術が私に追いついたどころか、私よりも上手くなった。

 私も勿論、リンネちゃんの練習に付き合ってるから双剣術、剣術、武術はこの娘達と出会った時と比べても、かなり上達してるんだけど、双剣に限ってはリンネちゃんは本当に上達した。


 新しい技も今のところ3日に1つのペースで習得していて、さらには 魔流の気 の扱いも完全に把握している。

 他者に気を纏わせることができるくらいになった。

 動体視力と反射神経も初めて会ったころとは比べ物にならない状態。

 だから私は双剣の技術だけでなく、武器がなくなった時のための保険として護身術中心の武術も教えてる。

 それにはロモンちゃんも参加させてる。


 さらにリンネちゃんは幾つか魔法も覚えた。

 主にオフェやスフェなどの双剣士にとっては大切なステータスを上昇させる魔法だ。



 次にロモンちゃん。


 彼女はすでにリペアムを習得することができた。

 さらには魔物使いとしての魔法の鍛錬も行っていて、今後使いはしないと約束した『魔人精合』のリスクが軽減した進化版『魔人対融』や、魔物使いが魔物だけにできる補助魔法、『モンアープ』が進化した『モンスアーガ』を習得している。


 それに、MPが切れても戦えるように、杖を棍の代わりに振り回してみてはどうかと提案したところ、一昨日から午前にはリンネちゃんと一緒に、棒を振り回してるか武術を鍛錬しているし、

リンネちゃんと同じくらいには魔流の気を操れるようになっている。



 そしてさらに、二人と私は氷魔法を覚えることができた。

 まだあまり練習はしてないけどね。


 というのも昨日、実戦経験を積むためとレベル上げのために森の中に3人で突入して、ゴブリンやセントピー、スライムを一日中倒して回ってたんだよね。

 そうしてセントピーを倒して回ってるうちに、氷魔法を使う、セントピーの亜種の進化系と遭遇したんだよ。多分、ここら辺のセントピーのボスだったんだと思う。


 氷魔法を覚えてるムカデはとても不思議だったけど、そんなことよりも魔法を出す瞬間の魔方陣を見て、自分の中で何かが閃いたの。


 そうだ、こいつ生け捕りにして氷魔法を解析したら、氷魔法の仕組みがわかって氷魔法覚えられるんじゃないかと______。


 だから私はこのムカデを倒そうとしているリンネちゃんを制止して、行動できないようにムカデを頑丈に縄で縛り、氷魔法を使うように念話で脅し、ゆっくりゆっくりと氷魔法の魔方陣を出させ、ついでに詠唱も、念話で私の頭の中に送らせた。

 

 そしてすぐさま魔方陣を紙に書き写し、教えてもらった詠唱『ヒョウ』と唱えなえつつ、魔方陣のイメージを頭の中でしてみると、使うことができ、ついでに覚えてしまった。


 役立たずとなったアイスセントピーとかいうそいつは森に返してやり、その日の残りは氷魔法『ヒョウ』を二人に教え込んみ、無事、二人とも『ヒョウ』を昨日のうちに習得することができたの。


 

 勿論二人だけじゃない、私も強くなってる。

 まず、武術の技を習得することができた。

 『正拳剛力』って技なんだけど、いわゆる正拳突きなんだよね。

 だけどこの技を使わずに正拳突きするのと、使って正拳突きするのでは、明らかに威力が違う。

 

 それに、手の操作ももう慣れたし、魔流の気なんて、もはや纏うだげじゃなくて具現化もできそうになってる。

 今私がやろうとしていることが成功したら、自分の本当の手を空中に浮かせて操作しながら、魔流の気でもう一組の手を一時的に作り出すなんてことができるはずなの。



 それと勉強ね。

 二人はどんどんと情報を吸収していってる。


 魔物学とかももはや専門家を目指すためにするような勉強に入っていってるし、数術は日本でいう中2レベルに追いついた。


 これからもどんどん頭をよくしてあげようね。



 まぁ、今はこんな感じかな。

 私達3人共、まるで一週間前とは見違えるような力と知識を持っているよ。


 この8日間、頑張ったから誕生日の前後日はたっぷり休んでもらわないとね。



◆◆◆



「アイリスちゃん何してるの?」



 ここ8日間の出来事を頭の中で整理してた時、白いワンピースを着たロモンちゃんが、リビングで直立不動していた私に話しかけてくる。

 


【あぁ、ロモンちゃんですか。いえ、少しここ数日の出来事を頭の中でまとめてました】



 私はロモンちゃん、リンネちゃんの懇願により、二人を呼ぶ時に"様"を付けるのをやめた。

 他人行儀で嫌だからなんだって。誕生日のプレゼントのかわりにねだられたんだ。


 勿論、その程度のことで誕生日プレゼントを用意しないわけがない。

 私は、おそらくこの世界にはないであろうお菓子を作る準備を着々と進めている。

 そんな大層なものじゃないよ? ドーナツって、ドーナツ。

 ほら、ロモンちゃんが前にお菓子が好きだって言ってたし。


 ロモンちゃんは私をソファに座らせ、隣に座った。


 

「へぇ……確かに、ここ数日間すごく頑張ったもんねぇ……。ね? 少し相談あるんだけどいい?」



 私は勿論だと言わずもがな伝わると思い、ただ首を縦に振った。



「あのね……私達が14歳になってから、半年してから城下町で冒険者になるって話をしたよね?」



 また首を縦に振る。



「その半年って言うのはね、強くなるための訓練のための期間だったの。本当はできるだけ早く城下町に行きたい。だから私達が14歳になってから3ヶ月後にしようと思うんだけど……」



 推測だけど、確かに二人の実力だったら今、城下町の方に行っても通用する可能性はおおにい高い。

 前にボコした冒険者なんて片手であしらえるほど、彼女達は強くなっている。

 たったの数日間で。


 だったら別に3ヶ月の間としたところで私は別構わないとは思う。

 むしろ、3ヶ月の間に私達はどれだけの特技を修得できるんだろうか。

 私はその提案に対しての肯定の意を述べる。



【良いかと思います。それに私はお二人がそうしたいと思うならば、それに従うまでです。リンネちゃんは良いと言っているのですか?】

「うん、お姉ちゃんもなるべく早く行きたいんだって!」

【承知しました】


 

 もう二人の間では話はついてたんだね。

 それにしても、なんでそんなに早く行きたいんだろ?

 一応理由を聞いてみよう。



【それにしても、何故、お二方は早く城下町の方に行きたいのですか?】

「うん、それはね_______」



 話をまとめるとこうだ。


 約4ヶ月後に冒険者の間で大きな大会があるらしく、それに参加したいんだって。

 なんで1ヶ月早く行くかというのも、その1ヶ月で参加費用を稼ぐからなんだとか。


 優勝はできるとは思ってないけど、二人のご両親も参加し、優勝しているこの大会を是非出たかったらしくて、最初は諦めてたけど、私の仲魔入りと、急激成長で自信がついたんだって。

 因みに、お父さんは過去に剣士部門で、お母さんは魔物使い部門で二度ずつ優勝してるらしい。

 

 てか、1ヶ月稼がなきゃ参加できない費用っていくらなんだろ?



【ロモンちゃん、大会に参加するのは良いですが、一体いくら必要なんですか?】

「んーと、確か一人1万ストンだよ」



 この世界のお金の価値は日本の10倍で、単位はストン。

 だから1ストンで10円なんだ。

 1万ストンって10万円だよね? なんでそんなに値段が高いんだか………。

 


【1ヶ月で3万ストンも集まりますかね?】

「魔物はいらないよ、魔物使いの仲魔として参加するからね。2万ストンが必要なんだ」



 2万ストンでも十分高いよね……。



 そんなことを話している最中、外にあるハンモックで、ケル君と一緒にお昼寝をしていたはずのリンネちゃんが、慌てて家の中に入ってきた。


 その顔は喜びに満ち溢れている。



「お父さんと……お母さん…来たよっ!」

 

 

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