第170話 紹介されたダンジョン探索でございます!
「それでは行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
お昼ご飯を食べ終わったので、私達はオーニキスさんから紹介されたダンジョンへと行ってみることにした。リンネちゃんと一緒にね。
ロモンちゃんにはケル君の魔流の気の様子をみるためにお留守番してもらうの。
「どんなダンジョンだろうね」
「わかりませんね、こればっかりは」
街の外に出て私はゴーレムの姿になる。
空を自由に飛べるようになったからこその移動手段。
手を乗り易いように形作り、ロモンちゃんを安全に座らせた。
「アイリスちゃんのゴーレムの時の手って、本当に自由自在だよね」
【ええ、まあ。でもそれがないと私以外は空飛べませんし】
「前に手に入れたあの盾を使えば飛べるよ、ぼく達でも」
【そういえばそうでしたね】
でもここからそのダンジョンに移動するのは多分これっきり。転移魔法陣を貼っちゃうから次から簡単に行き来できる。
「うー、でもちょっとお尻冷たいな…」
【まあ、身体はミスリルと何かの合金ですからね】
そういえばこの状況ってリンネちゃんのお尻に公認でお触りできてるんじゃないだろうか。そう考えるとなんだか得した気分になるわね…。ふひひ。
「……? アイリスちゃん、どしたの?」
【い、いえなんでもありません。行きましょう】
質量のないレーザービームを固めた作ったような緑の羽根を広げ、私は空を飛んだ。
ただの小石からゴーレムへ…そして空中移動型への移行。よく考えたらすごい進化ね。
そもそもこの手を使えば前々から空は飛べてたわけだけど。
20分間の空の旅。
鳥や鳥の魔物にぶつからないようにうまく身体と手をコントロールしなきゃいけない。
「すごーい! 風が気持ちいい!」
【そうですか、良かったです】
風になびくリンネちゃんのショートカット。
ううん、長さ的にショートボブって言った方がいいかしら。いやぁ…なかなか色っぽいわ。
自分に色気や可愛さが無いとかリンネちゃんは考えてるみたいだけど、リンネちゃんにそれらが無かったとしたら他の人たちはどうなるのかしらねー。私なんて見るにも耐えないなんてことになりそうね。
【ここら辺のはずですが…】
地図で書き示してある地点に着いたけど、森の中だから木が邪魔でさっぱり見えない。
「ぼくがここから見て探すよ!」
【お願いします】
視力がいいリンネちゃんは魔流の気でさらにそれを高めながら森の中をのぞいた。あまりに身を乗り出すものだから落ちちゃいそうで怖い。
まあ…リンネちゃん自身、空中を蹴って少しなら移動できるから落ちても自力でなんとかできるんだけど。
「あったよ! ここからもう少しだけ、ぼくから見て左上かな!」
【ありがとうございます…では、そこで降りましょう】
私はゆっくりと地面に降りた。
木の枝に引っかかってリンネちゃんが傷つかないように、がっちりガードしながら丁寧に。
大きなもの音を立てずに着地に成功!
これだ周りに魔物がいても気づかれてめんどくさいことになったりしないはず。一応、隠密の特技も使ってるしね。
「ここら辺…あったあった、あれだよね?」
【ええ、あれですね】
地面からせり出ている土の隆起、それに横穴がポカリと空いていた。周りの魔力をある程度吸って光り続けるランプが置いてあり、薄暗い森の中のこの洞窟を少しだけ照らしている。
きっと国の人か発見者が置いてってくれたのね。
それ以外に手が加えられたようなところは見られないけど。
私は人間の姿に戻った。
「では魔法陣を貼りましょう。私が貼りますね」
「はいよー」
ダンジョンの入り口から数メートルだけ離れたところに転移魔法陣を置く。これで準備は完了かな。
本格的に冒険することになったらこれを剥がして中まで持って行き、ダンジョンの中の中断したいところで貼れば、またそこから再スタートできる。
ほんと便利よ、これは。
「入っちゃいます?」
「そうしようか。今回はどういうダンジョンか知るだけでもしようね」
「ええ」
リンネちゃんは双剣がきちんと腰についているか確認する。私は杖剣、あとはロモンちゃんから借りた天道虫の盾も背中に背負っていつでも構えられるようにしておく。
「じゃ、レッツゴー!」
「ゴー! です」
ダンジョンの中は必ず明るい。それ故に敵が来たら素早く対応するだけでいいと、リンネちゃんが先頭を行くの。私が背中をしっかり守る。
さて、このダンジョンの名前は何がいいかしら、まだ名前が決められてないみたいだったし、私達が決めちゃっていいのかしらね。
ふふふ、歩く魔物辞典と何回か言われたことがあるこの私が見定めてやろうじゃないの。
あー、あと適正ランクとかも必要なら報告するのかしらね。
天の道のダンジョンはEからDランクの魔物ばっかりが出るかと思いきやBランクやCランク亜種とかもでたから……仮に決めるとしたら途中までDランク適正で、そのあとはBランク適正ってところだったかな。
まあボスはAランクの亜種以上(さらにダンジョン補正で強化されてる)って相場が決まってるからどんなダンジョンでもどっちみちAランクの冒険者パーティかSランクの冒険者しか挑戦できないんだけど。
……あれは野良ダンジョンだったし私達は実力が足りてたからクリアできたのよ! ここはどうなのかしらね。
道中が弱くても、もしボスがSランクの超越種だなんてことになればまず勝てないもの。
「最初に出た魔物が肝心ですよね」
「うん、だね。それでこのダンジョンの特徴が決まると言っても_________! っと!」
何かに気がついたリンネちゃんはバックステップ、その後に魔流斬を連続して飛ばした。
この一連の動作がすばやすぎて目だ追えない。もう最初に会った時とは見違えるほど強くなっちゃって…とっても嬉しい。
……でも探知を消したままダンジョン入っちゃうなんて私ったら不注意だね…よくないわ。しっかりつけておこう。
「何が出ました?」
「んーと、ヒュージリザード…かな」
「どうやらそのようですね。リザードですか」
ということはここはリザード系の魔物の出るダンジョンなのかしら。
「おっと」
「石が飛んで来ましたね」
「だ…ねっ!」
石が飛んで来た方向にリンネちゃんはまた斬撃を飛ばす。すぐさま私達はそっちの方向に確認しに行った。
そこには小さな手足が生えた何かのマスコットキャラみたいな2頭身の人型のリザードマンが。
「今度はトゥーンリザードマンですか。どうやらリザード系二系統が出るようですね」
「うわぁ…リザードマンもか…めんどくさそうだね…」
リザードには主な系統が二つある。
ヒュージ系統とリザードマン系統。違いは明確でヒュージ系がでかいトカゲの魔物。リザードマンはトカゲ人間。
ぶっちゃけ猿と人間くらい違うけど一応どちらもリザード系ってことにはなってる。
野生での生まれ方もだいぶ違うし、もはや別の魔物なのにね。
リザードマンがめんどくさい理由としては知性があったり、武器を使ったりするからね。仕事の時に一回遭遇したきりだけど、あの時はあまり強くないランクのやつらだったし楽勝だった。
でもBランクのリザードマン系になってくると本当にめんどくさい。
「ここのダンジョンはなんて命名したら良いと思いますか?」
「そうだね…トカゲの魔物はドラゴンの祖先とか言われてるから、劣化竜のダンジョン…でもそれはワイバーンが居るし…双種蜥蜴のダンジョンってのは単純かな」
「いや、私もそれしか思い浮かびません。とりあえずそれでいきましょう」
何かいい名前ないかなー。考えるのって案外めんどくさいのね。天の道のダンジョンだなんて考えた人のセンスはすごいわ。
「とりあえずもう少し探索する?」
「そうですね、そうしましょう」
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