私は(元)小石でございます！ 〜癒し系ゴーレムと魔物使い〜

第148話 vs.グラブアでございます！ 2

「……ッ！？」

　私が作り出した光の魔弾。

　それが放たれた瞬間に、グラブアから余裕の表情が消える。この路地裏では魔法は回避しにくい。

　そのことはここまで誘い込んできた本人が一番よく分かってるのか、彼はただ盾剣を構えたの。うっすらと冷や汗が見えるような気がする。

　やがてリシャイムはグラブアの盾の元まで辿り着いた。

「ツゥッ__________ガァッ！」

　両手で盾剣を持ち、私の魔法を耐える。

　初めてみせる苦悶と焦りの表情。…そうか、私の光魔法はそんな高威力なんだ。

　何気に私より明らかな格上にこの魔法を撃ったことは初めてだったんだけど。

　グラブアはしばらく光魔法に押されていたけれど、盾剣を少しずつ斜めにずらして行き、逸らすように弾いた。

　逸らされた光弾は上空へと跳ね上がり、泡の壁2枚を破壊するの。

「ハァハァ…なんだ今のはッ」

　手が震えている。

　つまり、私の光魔法は効くのね。

「光魔法…だよな？　アイリスちゃんのも…。なんて火力してるんだ。だが、今の魔力の込め方はアイリスちゃんレベルならもう尽きてる頃…！」

「いえ、残念ながら撃とうと思えば一日に100発以上撃てますよ」

　私は再び杖剣を構え、リシャイムを唱える。

　すぐさまに光の弾は強姦魔に向かって飛んで行くの。

「…！　やっぱりアイリスちゃんすごいよ！　ははは！　ここまでできるんだったら、本当に俺に対しては油断しただけだったんだね」

　確かにそう。いきなり裏路地に連れられて、服をはだけさせられて、痛覚の訴えにより魔法を放つ、あるいは魔物のに守るだけの集中力が拡散されなかったら簡単に抜け出せてたに違いない。

　グラブアは次弾を剣技で相殺しようとした。でもそれは叶わないと察したのか、剣技を光弾に当てて若干威力を軽減させてから、とっさに横に飛んで回避する。

　でも、足に被弾。

　威力が軽減させられ、急所にも当たらなかったとはいえ、ダメージは与えられたのか顔を歪めるの。

「くっ…」

「やった！　じゃあこのまま魔法で！」

「そっか、魔法か！」

　ロモンちゃんは杖を構え、再びリシャイムを唱え始めた。私ももちろん、そのままリシャイムを唱え続ける。

　剣技より魔法の方が有効だと察したリンネちゃんも、リシャイムを唱えて放ち始めた。

「……俺の出る幕はなさそうだな」

【ゾ？　オシテルンダゾ？】

　魔法はあまり覚えてないのか、ガーベラさんは槍を構えたままこの光景を眺めている。もし隙があったら槍の技でも叩き込むつもりなんでしょう。

　ケル君は今の状況が有利なことがわかったのか、唸るのをやめ、ただ私たちの魔法の連弾を眺めているの。

「うあっ、はぁっ！」

　ロモンちゃんとリンネちゃんの光弾は自分に大きなダメージは与えられないのがわかっているようで、グラブアは必死に私の魔法を避ける。

　でも私の魔法だけを避けたとしても、2人のは身体のどこかに被弾していた。

　たしかに私みたいに特性として、光魔法の威力増加効果を持たない2人の光魔法は致命傷には至らないかもしれない。でも、たくさん当たれば十分なダメージになってくる。

　すでにグラブアはダウンが近い状態になりつつあったの。

　逆に言ってしまえばここまで魔法を連発して、ある程度被弾しているのに少しずつしかダメージを受けないのはやっぱり化け物だね。とてもじゃないけど人間とは思えない。

「調子に乗りやがって……闇氷斬！」

　まず魔法が唱えられる方向の一つをつぶそうとしたのか、リンネちゃんに斬撃を繰り出してきた。

　私たち3人の中でリンネちゃんの魔法の一発は一番威力が低い。でも一番早く詠唱して凄まじい速度で放ってくるのは驚異かもしれない。

「魔流…大氷斬！」

　でもやっぱりリンネちゃんの反射神経はお父さんゆずりで一般人のそれとは異なる。剣技の発動が明らかにグラブアより後だったのに、先に発動したの。

　イダテンの腕輪を使いこなしてるリンネちゃんはやっぱり強い。

「きゃっ」

　でも力負けしちゃって、技そのもの威力は相殺できたけれど、グラブアの剣を振るう強さで身体が弾かれる。

　でもそこはすぐに隣にいたガーベラさんがフォロー。

　リンネちゃんとグラブアの間に割って入り、槍を連突した。

「ちっ」

　でもやっぱりグラブアの防御力の前ではそれは邪魔にしかならなかったみたい。……Bランクの魔物にだったら余裕で致命傷を与えるのに。Aランクの魔物にも全然通用するでしょう。

　グラブアはそれ以上のリンネちゃんたち側への深追いをやめた。…さっきからロモンちゃんのリシャイムが全弾被弾してるから、だいぶダメージが蓄積されてきたのでしょう。私の一撃だけは絶対に回避してるけど。

「……」

　グラブアからは余裕の表情はすでに消えている。

　それでも未だに倒れないのが本当に人間離れしてるとしか思えない。Aランク亜種の魔物でももう耐えきれないくらいにはロモンちゃんの魔法が当たってるのに。

【ゾ…オイラ モ ソロソロ テツダウンダゾ！】

　ケル君は今がチャンスと言わんばかりに攻撃しようとしてる。口を開いて、魔法陣を出したの。犬系の魔物が魔法を繰り出す時は必ず口を開ける。

【ゴロゴ！】

　まあ、有って無いようなものだけど心がけは嬉しいよね。ケル君の放ったまだ発展途中の雷魔法は、私達の魔法に比べると弱々しく進んでゆき、グラブアに当たりそうになるの。

　同時に私の何発目かわからないリシャイムもグラブアの近くまで来ていた。

　うむむ…これはケル君のゴロゴの方に回避されてしまうだろうね。グラブアレベルの人がゴロゴなんて当たったところで痛くもかゆくも___________

「なっ、雷！？　うわっ！　……ぅああああああ！」

　え？　え、なに？

　グラブアがケル君のゴロゴをまるで…そうね、気待ち悪い虫でも飛んで来たかのように仰け反って回避して、私の光弾の方にヒットした！？

　どういうことなのかしら…。

「ぐっ…くぅ…これはきついね」

　結局私のリシャイムにもろに被弾しても耐え切ってしまったグラブアだけど……今はそれよりもゴロゴをあんなに慌てて回避したことが気になるわ。

【……3人とも、聞いてください…。あ、ケル君も】

【ナンダゾ？】

【アイリスちゃんも気がついた？】

【ええ……】

【雷魔法が苦手…なのかな？】

　ガーベラさんも頷いている。やはりみんな気がついたのね。とりあえず弱点がわかった。

　どうして雷系の魔法が苦手なのかわからない。

　考えつく限りでは、彼は人造人間かなんかで、体に機械を埋め込みまくってるから…なんていうのもあの異常な強さと相まって一理あるけど。

　とにかくこれは大きい。

【ではこれから魔法を雷魔法に転換して…】

【ごめん、アイリスちゃん。ぼくもうそろそろMPがキツイよ。次にリシャイム以上のもの撃ったら倒れちゃうかもしれない】

【私も…あとリスゴロゴラム一発が限界かも】

　ああ、私は自動回復するからすっかり忘れてた。2人ともMPに限度があるんだもんね。よく見てみれば、リンネちゃんの足元にはMP回復ポーションが入ったと見られるフラスコがたくさん転がっている。ロモンちゃんにも数本あるわね。

【わかりました。では私が追い込みます！　…そうですね、ならばロモンちゃんとリンネちゃんはこの国の兵士、あるいは簡単に話の通じる偉い人を呼んできてくれませんか？　…ガーベラさんはこのまま手伝ってください】

【囮か何かかな？　了解した】

【わかった…お姉ちゃん、いこ！】

【うん！】

　さて、反撃の後半開始ね。

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