第2話処世術

「君、明日から来なくていいから」

などと、まるで冴えないサラリーマンが部長からクビを言い渡されるような言葉を言われた。というか、クビ宣告である。

「あの・・・・理由は何ですか?」

「この会社は錬金術の研究から撤退にすることになった。なので、この錬金技術研究部は解散され、君たちは解雇処分となった」

「そうですか」

「次の職場でも頑張ってくれ」

「はい」

 二一三〇年代。人類は科学の力により魔法を得た。それは未知の元素の発見がきかっけであり、ウランやプルトニウムといった核の元となる元素の発見以来の偉業であった。その元素はすべての元素の祖であり、いかなる物質にも返還できるという特性を持っていた。その時代の科学者たちはこぞって元素の研究を始め、その結果、科学技術をもって魔法を生み出すことに成功した。

その元素の名前は、どんな物質にもなれる完全さとすべての元素の根幹であることから《アブソルーツ》と名付けられた。そしてある特殊な端末を用いることによって、《アブソルーツ》をコントロールすることによって魔法を生み出した。

 その研究の中で、いくつもの学問が研究されていった。錬金術もその一つである。現代に復活した錬金術は、物質を返還させるという大きな特性を生かし、魔法の開発に大きくかかわっていたが、魔法が完成されると、魔法にできて錬金術にできないことはないといわれ、錬金術は魔法に劣るものだとされてしまった。

そのため国や民間の研究所は錬金術の研究から撤退を始めた。そして今現在、平賀 定理二十三歳。無職になりました。

 「次の職場といわれても、一〇年以上錬金術の研究しかしてない」

今日で解散なので、午前中には研究者たちは片付けを終え、次の職場を探すために帰ってしまい、会社も昼前で退勤させられてしまった。

 片付けを終えて退勤するために、会社のエントランスを歩いていると、見覚えのある栗色の髪を伸ばしスーツを着た女性がこちらに向かって歩いてきた。

「あら平賀くん。今日はもう帰るの?いいご身分なことね」

「いやそうじゃないが」

「大丈夫。分かってるは、こんな陽気だもの帰って睡眠という名の世界に旅立ちたいわよね」

「・・・・今日でこの会社を解雇された」

その言葉を聞いて初めて、表情を崩した。

「何があったの」

「時代の流れだ」

彼女は少し考えると、

「私の会社に来ない?」

民間魔法研究所アルカディア。魔法による製品を総合的に研究、製造、販売を行う日本でも有数の会社である。その所長であり、社長も兼任するのが、若干二〇歳でその地位に就いた村雨 京華である。僕が働いていた、魔法研究所日本支部とは技術協力をしていた。

「少し考えさせてくれないか」

「そう。分かったわ」

と答えると、京華は腕時計を確認すると、

「ごめんなさい。この後会議が入っているからまた今度返事をもらうわ」

「ああ。またな」

京華と別れ、会社を出ると京華が先ほどいっていた通りよく晴れたいい天気だった。

――たまには時間もあるし、歩いて帰るか。




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 錬金定理(仮) @yougi

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