登場人物解説⑤
■ギュムベルト
劇団いぬのさんぽ入団から半年が経過、『闇の三姉妹』七組の公演すべてに出演しているため連日舞台に立っている。
パレス・セイレーネスとの契約はスペースの無償使用、チケット代は劇団の活動資金になるので生活費は引き続き娼館の雑用をして稼いでいる。
舞台の主役を演じることでモテ期がきているが、本人は演劇に夢中で女性からの誘いを受けても演劇を観に行って演劇を熱弁して、相手が共演者の場合は稽古をはじめたりして幻滅されている。
舞台にも慣れ、殴られ屋の進行役も板についてきたが、未熟な自分が尊敬する先輩たちの足手まといではないのかと常に活躍の機会をうかがい、全力で取り組んでは空回りしている。
ニィハには相変わらず恋心を抱いているが、崇拝の対象であり関係の進展を期待したりはしていない。常にあこがれの対象が視界にあるためほかの異性に目移りしなくなっていることが問題ではある。
『鉄の国』へ向かう道中くらいから視界のすみに黒い影がよぎる錯覚を見るようになった。
演劇編はギュムベルトの結末までを決めて書き始めているので、第二部では起承転結の『承』の部分が描かれています。
環境を変えたいが起、存在意義を獲得したいが承、そのためにガムシャラに努力している彼がどこにたどり着くかがこのシリーズの結末です。
■ユンナ
パレス・セイレーネスの問題児。本来は目立ちたくない気質の引っ込み思案の少女が『闇の三姉妹』初演で人気に火がついてしまった。
これまでほとんどの時間を一緒に過ごしてきたギュムベルトに依存しているが、彼の気持ちがすっかり演劇活動と劇団のメンバーに向いてしまい生活が一変してしまったことに不満を感じている。
稽古へのモチベーションと人気が不釣り合いであることと、相手役となるギュムベルトに付きまとっていることでとくにリーン役の女優たちにうとまれている。
若さが放つむき出しで率直な感情がまぶしく舞台に華をそえるが、本来のリーンエレ役に求められる演技から逸脱して人気を獲得していることで、ほかの女優たちを腑に落ちない気分にさせている。
ギュムベルトとは兄妹のように育っておりプライベートと舞台は無関係というのは正論だが、ユンナが当てつけるような態度をとるのでめんどくさいことになっている。
物心ついたころから頼りにしていた少年を運命共同体のように感じていたが、彼のいないところで窮地に立たされ、彼のいないところで救われたことで他人であることを実感、決別を決意して思い出だらけのパレス・セイレーネスに別れを告げた。
その後、ジーダに誘われると寝食の世話を条件に新たな劇団を立ち上げる。ユンナに惚れ込んだジーダの書いた脚本は彼女の魅力を最大限に引き出し、劇団は商人ギルドの思惑を超えて大ブレイクした。
■ユージム
騎士家の次男坊で修業をかねて警備隊に入ったが向上心がなく、パレス・セイレーネスに常勤することで仕事をさぼり続けていた。
三年勤務するうちに裏方同士、雑用係のギュムベルト、ユンナと親しくなり本物の弟妹のように気にかけるようになった。
だらけた生活をおくっているが柔軟な思考と高い能力を備えており、すぐ演劇になじむ適応力を発揮した。
物語をけん引する大役であるシェパドはハマり役で、舞台に躍動感を与えた。
外から旅してきたイーリスに港町の現状や常識を伝えるからはじまり、相談役から演出助手の役割をはたすこともあった。
ギュムベルトが『鉄の国』に移住し、ユンナも娼館を出たことで休養期間の終わりを悟るとパレス・セイレーネスの警備を卒業した。
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