現在のアシュハ国について


■アシュハ皇国の歴史


アシュハ皇国は大陸に最大の領土と軍事力を持つ専制国家と諸国より長く認識されてきた。


最大宗派の総本山を有し治癒魔術の普及が盛んなことが国力、軍事力に直結している。


はるか昔、悪魔崇拝団体との戦争で異界より召喚されたデーモンを聖教騎士団が討伐。

デーモンの消滅に長期の封印が必要だった為、その地に教会の本拠地が建てられた。


デーモン討伐を行った十二人の聖騎士たちは帝国史上最も偉大な英雄として語り継がれており、国内には彼らを象徴する十一の聖堂が建てられている。


以降、教団は大きな力を持ち。首都がデーモン討伐の地へと移転され、帝国は騎士団と聖堂騎士団の二大軍事派閥による最強の国家体制を誇っていた。


それから三百年、皇国は皇帝家により統治されてきたが男子を残すことなく皇帝が早逝。

皇帝謀殺の罪で皇后を極刑、結託した七歳の姫ティアンは国外追放に処された。


皇帝謀殺後、国家に変わらぬ精強さを望む民衆により軍事の長であるフォメルスが指導者へと押し上げられた。


血統は途絶えたが帝国という認識に変更は無く、その上で若いフォメルスは有力派閥の感情に配慮し自らを皇帝ではなく王と名乗るにとどまる。


ティアン姫の生誕を由来に建設を開始した巨大闘技場の完成が即位時期と一致した為、それがフォメルス王の代名詞となり以後、彼を人々は娯楽王と呼ぶようになる。


気を良くしたフォメルス王はコロシアム運営に力を入れ、それが功を奏し民衆の支持を獲得、磐石な治世が八年ほど続いた。


偉大な剣闘士を排出するコロシアムにて王者の座を争う四度目の季節に、女性剣闘士イリーナが登場。

女性剣闘士の奮闘は観客の心を掴み、その活躍が闘技場の話題を独占した。


イリーナは皇帝殺害の真犯人たるフォメルスの討伐を目指し、追放を建前に投獄されていたティアン姫を旗印にコロシアムの剣闘士と観客を先導。

場内にてフォメルスを打ち倒し見事革命を成功させた。


権限を剥奪されていた血統派が復権してからは帝国の支配権は正当なる血筋を持つティアン姫へと移譲された。


以後、帝国は度重なる試練に見舞われることとなる。


フォメルスの発言力による抑止力が失われ騎士団の独裁状態が終了。

宮内では騎士団、元老院、教会によるティアン姫の独占を狙う政争が活発化する。


皇帝謀殺の首謀者であるフォメルス指揮下だった騎士団は肩身が狭く、元老院による姫の独占は国力の低下を招いていた。


姫の即位を待たずして、死霊術禁止法で弾圧していた死霊術士による聖堂騎士団への報復が開始され教会本部が壊滅。

リビングデッド事件とされる破壊工作によりたった一人の死霊術士の手で帝国首都は百万もの民衆を失うこととなった。


指導者の不在と首都の疲弊。その機を見計らい、帝国西方に位置するマウ王国が国境を押し上げるべく進軍を開始。


事態を重く見た帝国は十六歳になったティアン姫を急ぎ女王へと即位させた。


マウ王国が隣接する中立都市・聖都スマフラウを陥落、支配下に置くとスマフラウの誇る竜騎兵を獲得するなどの快進撃を続ける中。


民衆の結束を高めるべくティアン女王は慰霊などに駆け回ってはいたが、民衆の期待は無力な少女ではなく当時の騎士団長ハーデンに集中していた。


戦線の維持を目的に地方の領主たちと連携を取るべく、新女王ティアンは彼らを招集。

支援要請が目的とはいえ、宮廷にて連日行われるもてなしは復興を目指す民衆からは不信を買うこととなる。


マウ王国との戦争が激化すると、帝国の要たる騎士団長ハーデンが東方の国デルカトラのスパイであることが発覚。


マウ王国との戦争に敗北した場合は帝国をデルカトラに売り渡し、その代わりに地位の約束を取り付けていた。


ハーデンの謀反はデルカトラ沿いの国境警備を指揮していた騎士長ヴィレオンによって看破され、彼の手によって粉砕される。

騎士団長ハーデンは反逆罪により極刑に処された。


女王ティアンは度重なる不祥事により疲弊。革命以来徴用していた剣闘士イリーナを伴い国外逃亡を図った。


騎士長ヴィレオンは、戦中の責任放棄を咎めティアン女王と剣闘士イリーナを捕縛。闘技場での公開処刑により二人の命を絶った。


ティアン女王について歴史書では暗愚、無能などの言葉で残されている。


以後、現在もヴィレオンは民衆からの絶大な支持を得て国王を務めている。


歴戦の英雄をトップに据えた帝国は勢いを取り戻し、一致団結して戦線の巻き返しに至る。


戦争に注力するヴィレオンは広大な領土の抱える問題の解決が手に余ると、騎士王と名高い領主家の長男に東側の統治を委ねた。


これはハーデンがデルカトラ軍を帝国に引き入れる際、東側を独立国としハーデンの指示を無効化するという奇策が下敷きとなっている。


帝国はヴィレオン王の治める西アシュハ聖王国と、ドゥイングリス王の治める東アシュハ聖王国に分裂。

兄弟国として東西の驚異に対して背中合わせの共闘関係を築いている。


マウ王国は大きく国境を前進させたが、開戦三年目にして戦線は現在膠着状態にある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る