千年猫と少年の国
悠月
第0話 千年猫に就いて
ぼくは、千年生きた。たぶん、これからもずっと。
そして千年猫は、いろんな国へ旅に出た。
砂漠の中に、少年の国があった。
そこは少年たちだけの国だった。そこに生きる人々は、みな少年の姿をしていた。少年たちは、ほかの国でいう所の10歳くらいの姿で生まれてきた。そして20歳の誕生日の朝、みんなどこかへ消えてしまうのだった。
少年の国には動物たちもいた。少年とともに暮らす動物たち。いちばん多いのは猫だった。だいたいはふつうの猫だった。
ただ一匹だけを除いて。
その一匹は、死なない猫だった。もう千年も生きていた。けど、千年生きたからって、尻尾が何本にもなったりはしないし、顔がしわくちゃにもならなかった。見た目は、ふつうの猫だった。青い毛なみに三日月色の目をした猫は、千年生きたから「千年猫」と呼ばれた。
千年猫は、千年のあいだにいろんな人間たちにであった。いろんな猫たちにもであった。けど、千年猫が心を惹かれるのは、不思議と人間たちだった。
千年猫は、千年生きるうちに、人間の言葉を覚えていた。人間の言葉で考えるようになった。人間と同じように思いを持った。だけどそれを伝える声はなかった。ので、猫はつよく思いつづけることにした。
そしたら、不思議と人間のほうから、猫の思いを読みとってくれるようになった。つまり、千年猫はテレパシーをおぼえた。
そしてある夜、千年猫はひとりの孤独な少年と出会った。
これは、そんな千年猫の、かれにとっては一瞬の物語。
そして、孤独な少年の、かれにとっては永遠の物語。
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