3 入院患者


北富雄


M市は大阪の北に位置する郊外都市である。大きな病院としては、市民病院と福祉財団・大河内病院の二つがある。老朽化した市民病院よりは設備も近代的な大河内病院の方が人気がある。何より美人看護師が揃っていて、男性患者はこちらを選ぶ。窓からは北摂の山並みが見晴らせる。


 北富雄はベッドに横たわって、夏の雲を見ている。〈むくむく〉としたその元気さが羨ましい。雲に嫉妬してどうすると苦笑した。選挙カーから声が聞こえてくる。必死の声だ。夏の選挙は運動員も大変だと同情もしたくなる。

「今川義兵(よしべい)です。この度、衆議院議員に立候補致しました今川、今川義兵です!最後のお願いに上がりました!」。この選挙区の議員の死亡に伴う補欠選挙が行われている。M市市長の3期の実績で今川氏の当選は確実視されていた。3期と云っても、2年と少しの任期途中で市長を辞しての立候補である


 北富雄は3年前のM市市長選挙を思い出していた。北富雄はM市に30年来住む市民である。勤めは大阪市内、本町にある大手アパレルに勤めている。来年65才の定年だ。希望すればもう3年程はいられるのだが、仕事はもういいと考えている。もういいというより、世の中についていけてないと7、8年前から思うようになっていた。

 出来るのなら60才で仕事を引きたかった。世話になった会長の手前そうはいかない。妻は2年前に胃がんで亡くしている。一人になった家はやたら広く、寂しさを感じるようになっていた。


 3年前の市長選挙だが、2期の実績で今川氏の3選が有望視されていた。大学教授で、テレビのニュース番組のコメンテーターをして知名度がある多村智司(さとし)氏が市政の刷新を求める市民団体に担がれる形で立候補した。

 俄然、勝敗の行方は予断を許さないものとなった。その時の選挙の争点は、大阪府やM市が進める新都(国際文化交流都市)のニュータウン開発をめぐってであった。積極開発を進めてきた今川氏は、とかく開発業者との癒着が噂されてきた。多村氏は初期の計画と色々と違ってきた現状を指摘し、市の財政難の現状から、開発の凍結を訴え、真正面からの戦いとなった。


 新都開発計画とは、単に人が住まうだけのニュータウンでなく、バイオ研究開発の拠点や、国際的な文化交流の拠点として新しい都市、〈新都〉とされた。計画は都市開発機構と、府やM市やK市の自治体と、民間業者の三者で担うもので、民間業者の中心はH電鉄である。何しろ計画立地の四分の一を所有しているのだ。万博の時の代替地として取得した土地だ。M市の市有地と合わせれば市地域の半分になる。

 最初はM市とK市を結ぶ新線計画まで浮上したが、余りの投資額の大きさで新線計画は見なおしになるとの報道も出るようになった。計画は昭和61年バブルの真っ盛りの時に立てられた。M市の西部地区、中央地区、K市の東部地区、5万人の住む計画であった。その後のバブルの崩壊、郊外より都心回帰の需要動向等の経済情勢や社会情勢等の変化があって、計画通りに行くのか危ぶまれるようになっていた。


 その対抗馬多村智司氏が選挙後半、過労で入院し、急死して今川氏が3選を果たした。北富雄は思った。今川義兵は何と強運の持ち主だと・・。人間、実力も大事だが、この運も又、欠かせないものだ。しかし、北にはこの選挙に深い関心を払ってきただけに、何故か解せないものが残った。


畠山三郎


 畠山三郎はH電鉄経営企画室室長の職にある。50歳である。順調な出世街道を歩んで来たと言える。次の階段は重役である。歴代の社長も企画室出身者が多い。電鉄に入社したのであるが、入ってすぐにH百貨店に出向させられた。地下の食品売り場から始まって、ファッション部門を担当し、バイヤーとして海外出張も度々であった。電鉄も郊外の駅立地を活用して郊外百貨店やショピングセンター等の商業施設に力を入れるようになって、三郎は電鉄の企画室に戻されたのである。

 企画室は商業施設だけでなく、住宅開発も行っている。しかし住宅開発にも大型の商業施設は欠かせないものとなった。三郎の小売り経験はそれなりに役立っていると思っている。


 新都計画が持ち上がったのが1982年であった。府が国際文化交流都市と位置づけ、M市、K市がこれに続いた。民間企業を入れる形で計画は進められた。この計画地域に莫大な土地を所有するH電鉄を抜きには出来ない計画であった。電鉄もM市からK市までの新線を計画するなど積極的であったが、バブルの崩壊とともに、積極推進派、消極見直し派に分かれた。自治体が計画した今を逃すべきでないと言うのが推進派、そもそも計画が大き過ぎたのにこの経済状況を考慮すべきだとするのが見直し派であった。バブル期に立てられた開発計画にはずさんなものが多かった。それでも行政は一旦計画を立てたものは、撤回、見直しすることはなかった。三郎は行政の開発計画にもともと批判的であった。

 自治体は潰れないが、民間企業はいくら大きくても倒れるときは倒れる。役人と民間では違うというのが三郎の意見であった。また、M市市長の疑惑が取沙汰されており、巻き添えを食うのはまっぴらだとも思っていた。

 室長に就任したのを機に鉄道建設の費用対効果の見直しを指示した。行政の人口計画に乗っ取った計画であったからだ。計画通りに進まなかったときに、行政は責任を取ってくれるのか?慌てることはない、府との第3セクで作った北大阪急行を延伸する方法がある。所有地の半分しか開発出来なくてもいい、無理して本も子も無くすより数段いい。


 畠山三郎に対する反発は社内推進派の抵抗は勿論、自治体、政治がらみの抵抗も凄まじかった。鉄道建設の中止は新都計画の大幅な縮小見直しに直結するからだ。社長が企画室出身者であることが唯一の助けであった。激務が続いたのと心労からか疲労感が抜けず、息切れがするようになった。大河内病院を受診し、心臓を詳しく見てみましょうと検査入院を勧められたのだ。以前妻が胃潰瘍で入院した時の対応がよく、この病院を信頼していた。一服する時だと思って、室スタッフの勧めもあって1週間の休みを取ったのだった。


 妻の入院時、最初についてくれたのが久保看護師で、途中からついてくれたのが小川看護師であった。ここの看護師のテキパキとした仕事ぶりを三郎は評価していた。妻は久保看護師の方を気に入っていた。妻は比較的公平な人だったが、美人には手厳しいのだと内心思った。

 小川看護師は、愛想は少ないが、無駄口を叩かない、その仕事ぶりは三郎好みであった。また実習生としてついてくれた玉山玉子も知的で落ち着いた女性で、二人の美人につかれて、ご満悦であった。妻が見舞いに来た折、久保看護師と抱き合わんばかりの再会を喜んだ後、「いいわね。美人に囲まれて、1週間は短いわね」と冷やかした。彼女らから元気を貰えて、また戦う闘志が湧いてくるなら2週間でもいいかと三郎は思った。


亀山トミ


 亀山トミは糖尿病の持病を持っていた。甘いものを禁止されていたが、夫を亡くして以来、寂しさはついつい甘いものに手を出させてしまうのだった。友人が甘いもの好きなトミを見かねて、饅頭の差し入れ見舞いには困惑したが、嬉しかった。


 実習で来ている看護学生をトミは気に入っていた。特に浜野ナミは気さくに何でも喋れた。それが通じたのか、浜野ナミは帰り支度をした後、必ず立ち寄ってくれた。そんな時、貰い物だと饅頭を勧めてしまった。

「トミさんの病名は?」

「糖尿…」

「ですよね。見つかったら没収ですよね、私全部貰って帰ります。明日実習生皆で頂きます」

「あなたら、それを食べながら私を話のネタにするんだね。なったもんしか分らんわね…」と、トミは笑いながら言った。

 あくる日実習が終わってかえりしな、ナミが「ごちそうさんでした」と立ち寄ってポケットから小さな紙包みを出した。中には白い饅頭が1個入っていた。浜野ナミ、顔はイマイチだけどいい子だね。あんな子が欲しかったよとトミは思った。


 トミには息子が二人と娘が一人いた。主人に似たのかいずれも頭がよく、大学は一流で長男は海外勤務、次男は医師資格でアメリカの研究所勤務であった。長女は大阪地元にいるのだが、弁護士事務所を開き多忙で滅多に見舞いには来ない。なまじ頭なんか良く生んだばっかりに、自分は寂しい思いをする。友達にそれを言うと、そんな贅沢を言うと罰が当たると言われた。その罰が糖尿なのかしらとトミは思った。


 夫は、学歴はなかったが頭のいい人だった。一緒になってM市の駅前で日用雑貨の小さな店を持った。二人一生懸命働いた。トミは身体を動かすのは好きだった。もっと好きだったのはお喋りだった。客の主婦らとの会話は楽しいものだった。そんなことでお客がつき店は繁盛した。夫は無口ではあったが笑顔の絶やさない穏やかな人だった。何より独学でよく勉強した。トミにはよくわからなかったが、〈なんやら商業ゼミ〉に参加して、スーパーマーケットなる新業態の店を別に始めた。これが当たってM市内に5店舗を構えるようになった。また経済の勉強がてらだと堅実な株式投資も始めた。それらの儲けをお金で持っていたら使うと、土地に投資した。

 買った土地を見せて貰ったがM市内とはいっても辺鄙なとこで、こんなとこを買ってと思ったが、こうして新都計画が具体化した今、「やっぱり、私の亭主は賢かった」と思うしかなかった。欠点は早くに亡くなったことだった。


 なんでも新線の駅前になるらしいのだ。市は市民病院の建て替え用地に、電鉄は商業施設を、府は本来の目的の文化交流施設を、図書館や留学生の宿泊施設を作るという。ここの大河内副理事長は介護施設を併用した医療センターを作りたいと言っている。なんでもいい、この土地が社会の役に立って、心配なく往生するのがトミの望みだった。もう欲なんてない、あの土地がお役に立ちましたよとの報告を持ってあの世に行きたいと思っている。それが決まるまでは死ねない!「ああ~、これも欲だわ」と苦笑してしまう。


 ハンコは握っているが、子供たちの意向も無視できない。こうなると日本にいない男二人より、弁護士の長女の意見が重きをなすことになるのは必然だった。トミと長女とはもう一つそりが合わなかった。長女は学歴もなく無教養な母を恥じらい、嫌悪するところが小学校高学年頃から見られた。「いったい、誰のお腹から生まれたんだろうね」と言ってやりたかった。


山内英二


 山内英二は退屈しきっていた。何もすることがない。食道の違和感は薬のおかげで治った。後は食事療法が大事だ。「普通の人なら1週間だけど、英二さんは退院したらすぐお酒を飲むから2週間ね」と小川看護師は言った。

 新聞は普通紙とスポーツ紙、普段見ないとこまで読んだ。テレビのニュースも見た。週刊誌は読み終えたものが枕元に3冊転がっている。救いの神は、昨日からついてくれている看護学生だ。話し相手に退院までの2週間持つと思った。美人ではないが、透明感のあるスッキリした顔立ちだ。今3回生で20才。実習で来ていると言う。


山内は6年前を思い出していた。胃が痛んで2時間ほど眠れなかった。こんなことは今まで一度もなかった。胃薬とは無縁だと思っていた。

 老朽化した市民病院より、建物も設備も綺麗な民間の大河内病院の方が最近優勢だ。デイサービス、ヘルパーステーション、グループホーム、訪問看護と介護事業に積極的に進出して、市民の認知を受けたのが大きい。電話で予約を入れた。朝食をまだ取っていないと言うと、取らずに来ると、検査も可能だと言われた。検査待ちを覚悟していたが、電話して即日、英二はタクシーを飛ばした。


 昨夜の症状を訴えると、大河内医師はバリウムを飲んでレントゲン撮影をした。「大丈夫!」の声に安心して帰りかけたのだが、虫の知らせと言うのだろうか、「何故、痛んだのかなぁー?」と診察室の出がけにつぶやいた。それを看護師が聴き留めて、大河内医師に何か一言いった。

「きみぃー、念の為にカメラを飲むかね」と云って、あくる日の都合を訊いた。


「あれー!これは映らんわ」山内の胃は変形していて、バリウムでは映らないとこがあるらしい。組織を取っての結果は「悪性腫瘍」であった。胃の切除を言われた。開腹の結果次第だが三分の二、場合によっては全部ということであった。

「先生、酒は飲めますか?」「お酒も食事も大丈夫ですよ」と医師に代わって、ミス大河内病院と云われている小川恵子看護師が笑いながら答えた。聴き留めて医師に耳打ちしてくれた看護師である。年の頃は30才ぐらい、落ち着きも出て、女が一番綺麗な歳だと山内は思っている。セクシーだ。白い制服の上からだけど、胸からヒップにかけての線が語っている。

 普通、名医なり大先生となると「僕の診断に間違いはない」とか言うところを、この看護師の言うことをあっさり聞いている。言葉のやりとりに、二人の中に何か微妙なものを山内は感じ取った。多分ハズレはない。山内は自信があった。


***

 大河内病院で胃の全摘手術を受けた。普通1ヶ月程で退院なのだが、食べて良いという許可がでてから、お粥も、食べ物を受けつけなかった。それが3ヶ月の長い入院になった理由だ。大河内医師は何回もレントゲンを撮ったり、カメラで検査をした。

「おかしいなぁ?どっこも異常ないのになぁ。手術は上手くいってるのになぁー」と解せないようであった。入れてもすぐ吐き出すというより受け付けないのである。おも湯にしても同じであった。

点滴だけでは、体重の激減は激しかった。15キロも減った。元々、肥満体質でない山内は、げっそりした姿を鏡に映すのが嫌で、朝は蒸しタオルをベッドに持ってきて貰って顔を拭いた。


 心配した小川看護師が、「小さい頃、病気したら母がよくリンゴのすり汁をしてくれたわ」と言って出してくれた。これがスート入った。メロン汁、メロンの塊と食べられるようになっていった。どうも、おも湯や、お粥の匂いが受け付けない原因だったかも?暫く食べられなかった内に食道は忘れたようであった。

「匂いも大事なんや」と小川看護師は改めて新しい発見をしたように云った。てきぱきと仕事をこなし、素人目に見ても他の看護師より優秀なように見えた。ただ、無駄口は喋らず、短いセンテンスでの語り口は美貌と相まって冷たく感じさせた。損をするタイプだと英二は思った。他の看護師に聞いても将来の婦長候補の一人だと言った。でも、なって欲しくないと顔は語っていた。

でも、山内英二には、小川看護師はカメラを進言してくれ、激やせした体重を戻してくれた謂わば、命の恩人なのである。


 山内はこの間、凄く退屈した。痛みはない。物は食べられる。歩いて良し。毎日体重計に乗るだけの生活だった。病院の隅から隅まで歩いた。ほんとに色んな職種の人がいるもんだと思った。病院とは人件費の塊みたいな物やなぁーと、要らぬ心配もした。入院するまでは、「医者と看護師がいるのが病院だ」ぐらいに思っていた。

 病院の裏口で医師や看護師が整列して恭しく、黒い車を送る所も見た。生きて病院を出られるとは限らないのだと思った。その日の病院の夜は淋しかった。


 その期間、退屈しのぎにめったに読まない「推理小説」「サスペンス物」なるものを読んだ。これらは山内の基準の中では、小説ではないと思っていた。読んでみると中々面白い。少しはまった。松本清張は文学性もあって読み応えがあった。

「俺が、推理サスペンスを書くなら、病院を舞台にする」と山内は思った。病院にいてつくづく観察すると、「人の命を助ける所は、これ程安全に人の命を奪える所はない」と思うようになっていた。

 人が最も楽に死ねる方法は?小川看護師が退屈しのぎにと教えてくれた。それはアメリカのある州の死刑の方法である。一番安楽で確実な方法が取られているはずだというのだ。まず麻酔剤を使い眠らせ、意識を失わせる。次に、筋弛緩剤を使って麻痺、肺機能を停止させる。そして、カリウムの静脈注射で心停止させるというのだ。

 

看護師が注射を打つ。医師が「ご臨終」と告げる。病名は何でもいい。疑うものはいない。警察の入る余地もない。


***

 そう言えば何年か前、同じ看護学校仲間で、同じマンションに住む看護師4人が、保険金詐欺を狙ってその中の看護師の夫を連続殺害で逮捕された事件があったことを英二は思い出した。その夫に同情すると同時に、「看護婦を結婚相手にするのは考えものだなぁー」と思った。小川看護師なら殺されたって・・英二は苦笑してしまった。

今回の入院の病名は〈逆流性食道炎〉で、胸焼けが激しく、食べ物の飲み込みが悪くなった。胃を全摘している人によくある症状である。寝ている時など胆汁が喉元まで上がって来たときは、生きているのが嫌になるぐらいだ。それでも収まると酒は欠かせない。不摂生の極みの入院である。

 

 看護学生は「水木美香と云います。山内様のお世話をさせてもらいます。どうぞよろしくお願いします」と丁寧に挨拶した。付かれてみると、健気で、優しく、言葉遣いも〈いまどき〉調でなくきっちりしている。背は低い方だが涼しげな顔立ちが印象的だった。聞くと山口県は長洲武家の家柄で礼儀作法、言葉遣いは厳しかったという。山内は礼儀正しい娘は好きだった。「なんで、大阪に?」山口でも看護学校は一杯あるだろうにと、思って訊いた。


 2つ上のいとこの男性が好きだったが、癌で亡くなった。その姉は国語の教師を山口でしていたが、大阪の人と結婚して大阪に来たが、可愛がっていた弟の死をきっかけに〈いのち〉に関わる仕事をしたいと看護学校に入った。「お姉ちゃん」と呼んでいたし、「私も」となって大阪に来たと答えた。

「お姉ちゃん」は同じ学校で、この病院に実習で来ているという。3年になると、学校の授業は週に一回だけで、あとは病院実習の毎日だという。「お姉ちゃん」の名前は〈玉山玉子〉という。

「変わった名前やね」と山内が云うと、美香は、「結婚前は〈南野〉性でした。生まれた時が玉のように可愛い子だったから、両親は玉子と名前をつけたのですが、まさか玉山性に嫁ぐとは思わなかったらしいです」と笑った。そう言えば、賢三の娘も看護学校に行っていると言っていた。同じぐらいだ。同じ學校かなと思ったが、病院の中では見ないようであった。


 廊下で〈玉山玉子〉の名札をつけた看護学生にあった。名札を見て思わず笑いそうになったのを英二はこらえた。看護学生は病院の看護師とは違った制服を着ているのですぐわかる。元国語教師、知的な美人だ。落ち着いた雰囲気は看護学生と思われない。年齢は28才。白い制服がよく似合う。

 退屈していると言ったら、美香が推理小説の本を貸してくれた。推理サスペンスが大好きで、十津川警部のファンだという。

「警部、それとも演じている〈渡瀬恒彦〉のファン?」と英二が訊くと、顔を紅らめて、「山内さんて、渡瀬恒彦に似てませんか・・言われません?」と言った。英二は自分ではそうは思わないが、時々言われることはあった。

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