第7話 白龍族の都
ため息をついて項垂れる。
「相楽君、離してくれないかなあもう大丈夫だから。」
相楽は離そうとしない。
「ごめん、俺、めっちゃ嬉しいんだ。」
抱き締められる力が強くなる。
相楽の息が首筋に当たる。
相楽、やっぱり貴方にドキドキする私は居ないみたい。
「お前と、俺が、特別な運命で、こうしてここに一緒にいられることが。」
私は黙っていた。
相楽は暫くしてから私を放した。
「私が相楽をどう思ってるか、気にしないんだね」
「え、」
相楽は昔のような、少し悲しいような笑顔を作る。
ここで異性として見れないと言うことは関係性を悪くするかもしれないと思い、黙っていた。いま、知り合いは相楽しかいないのだ。協力していかないと。
「白石、わかってると思うけど、俺はお前のこと」
「外に出よう。」
テントから出ると、コヅキの化身達が様々な物を持って整列していた。
これから白龍族の住処を訪ね、白龍族のリーダーたる人物と面会をするらしい。
とくに面会の予約とかそういうものはしていないと言うので、この世界では連絡調整をどの様に行っているのか尋ねる。
「なんとなく、わかるんだよね。
あ、もうそろそろあの方が来るな、きっとこう考えてるだろうな、って。」
人智を超えているが、気の遠くなるような長い期間、存在していれば、以心伝心もできるようになる気がする。
そう思った。
白龍族の住処はこの近くで、すぐに行ける所らしい。
的確な場所を知っているのかと訪ねると、行こうと思えば行ける場所だから大丈夫というよく分からない解答がかえってきた。
「今回はこういう都合もあるし、白龍がふたりもいるから、きっと直ぐだよ。」
コヅキはニコニコしながら道を歩むが、私と相楽は不安しかなかった。
「とんだ再会になっちゃったな。」
相楽はいつもの様にはにかみながら、笑った。
「そうだね・・・。
私達、課外活動かなんかで気がついたら意気投合してたんだよね。」
「お前といるときはホンットいろいろ起きるよ。」
相楽の顔をみた。
「い、ろ、い、ろ、な。」
相楽はこちらを睨んでくる。
いつも重要なことはこちらに察させる。
なに、いろいろとは。
私だって相楽には迷惑したわよ。
でも、いま隣にいる相楽は、昔の小さい相楽ではない。
声も少し低くなった。
身長も、私より少し高い。
顔や体付きが女性っぽく華奢だから、オトコという感じがそこまでしない。
ぱっと見、今の相楽は女性に見える。
仕草が男っぽいが、美人さんだ。
私のほうが、男っぽいかも、と、昔からコンプレックスだった筋肉質な手足をみると、相楽より更に華奢で、白い四肢が目にうつった。
自分は、変わった。
この斑模様の皮膚状態は今の自分の心境のよう。
昔の自分と今の自分のの整理がつかない。
相楽の耳の形が気になったので、そっと髪を括り上げて耳にかけた。
相楽は驚いた様子を見せたが、落ち着いていた。
女にこんな事されても動じなくなっちゃったか、と、ちょっと残念に思う。
「なんだよ。」
相楽が横目で訴えてくる。
「耳、とんがってる。」
そう言われると、相楽は自分の耳を触ったあと、私の方に手を伸ばそうとした。
私は反射的に、自分で髪を耳にかけた。
あ、相楽、嫌な思いしたかも。
相楽は手を引っ込めた。
「私の耳は、変わってないみたい。」
自分では見れないが、触ればわかる。
「そうだな。
でも、そのうち俺みたいになるよ。」
「二人とも、ここに入るよ。」
コヅキが振り返る。
その先は、滝と滝壺だった。
大きくはあるが、周りにあるものとさほど変わらない。
ここが住処へ繋がる目印でもあるのだろうか。
「さあ、三人で手を繋いで。」
コヅキが手を広げる。
私と相楽、コヅキの方へ近づきながら、滝壺の水の中に入っていった。
「おい、結構深いぞ、どこまで行くんだよ。」
「まあまあ、ずっと、進むよ。」
「さむい、異世界の水なのに温度は下界の冬レベルだよ。」
私は寒いやら怖いやらで文句しか言えない。
コヅキは私達の手を握ったまま、どんどん沈んでいく。
水が首のあたりまで来た頃、もうどうにでもなれと目をつむって、息を止めていた。
足は底につかなくなり、水を足でもがいているように感じる。
コヅキ、本当にこれで行けるの!?
と、不安と怒りがこみ上げてきた頃、息が続かなくなった。
死ぬ、神々の世界で死ぬ。
そうしたら、下界に戻れるかな。
とたんに、もがいていた足が底につき、頭が空気に触れるのを感じた。
そのままコヅキに引き上げられるような形で、私達は引き揚げられた。
二人とも水を飲むこともなく、バランスを崩すこともなく、なんとか岸までたどり着いた。
ゆっくりと顔を上げると、大丈夫?と清々しい顔をしてこちらを見て微笑んでいるコヅキと、うすい紫と夜空が混ざって、夕暮れ間近のような空の下で、キラキラとした建物に囲まれた場所にいた。
見渡すと、先ほどいたような木々が生い茂った世界に、ガラスと金で出来た建物が幾つも建っていた。
先ほどいた場所は、人気が無く、建物もふわふわとしていたせいか、少し薄気味悪かったが、ここは人の気配がする。
そして、文明らしきものもあるようだ。
「お待ちしておりました。」
服の水を絞っていると、声をかけられた。
振り向くと、数名の女性たちが、軽く会釈した。
「私共はコヅキ様ご一行をお連れするように仰せつかっております。
どうぞこちらへ。」
女性たちは皆、水浴びをしていた者達と同じ様相だった。
髪の色は銀や薄い桃色、薄い茶色、と、まちまちだが、耳がとんがり、首の後ろには髪の色に合った鱗が見えた。
「さ、行くよ。
服はそのうち乾くさ。さっきの場所よりいくらか乾燥してるんだ、ここは。」
コヅキはそう言って、私を立ち上がらせてくれた。
相楽は濡れた髪が気になるらしく、前髪を気にしている。
女らしい様相の男性からいよいよ女性になってしまったか。
女性たちに連れられ、建物の間を縫って歩いていると、大きな通りのような場所に出た。
そこには多くの白龍が待ち受けており、私達三人を品定めするかのようにジロジロと見ていた。
「相楽と同じ感じの人たちだね。
この人たちみんな白龍なのかな?」
「きっとそうだろ、それにしても、こんなにいるとはな、皆神様なんだろ?」
「左様です。」
とりとめもない話をしていると、銀色の髪をした背の高い女性が話しかけてきた。
「道中で失礼いたします。
わたくしはお二人の教育係を仰せつかりました、一葉(いちよう)と申します。
本来ならば、ゆっくりとお話したい所ではありますが、予定が立て込んでおりまして・・。」
一葉は、そう言うと指でこめかみをグリグリとやった。
何を話すのか思い出しているようだ。
ちょっとヌケた感じがして、すこしわらってしまった。
あ、そうだ、と思い出したようで、一葉が話を続ける。
「まず、今日の予定ですが、これから沐浴を行い、身を清めたあと、水を献上しに、白龍族の長に面会します。
えーと、そのあとは、えっと。
お体を完全にしていただくために、お食事をしていただき、その後白龍族と他の神々にご挨拶に伺います。
そのあとは、ええと、夕食をとってもらい、あ、外界では三食食べると伺っているものですから。」
「はいはいはい。」
相楽がたまらず割り込んだ。
「わかりましたです、一葉さん。
いろんな人に挨拶に行くんですね。
質問なんですが、さっきは人気が全くなかったのに、ここに来てからは人が大勢いる、どういうことなんですか。」
一葉は顔をパッと明るくして答えた。
「ここは清澄階でも白龍族の都なのです。
長が毎日水をお清めしてくださるので、白き水が豊富なことから、多くの神々達の会議の場ともなっているのです。
先ほどいらした場所は、えーと、琵琶の湖の付近ですから、あのへんはまだ水が豊富にありますが、神々はほとんど人の形をとることなく存在しているのです。
ですから、実際には神々は多くいらっしゃいましたが、目には見えておらず、こちらでは目に見えておりますので、人が多く感じるのです。」
スイッチが入ったのか、得意分野らしく、一葉の話は止まらない。
その様子をみて、まわりの他のか白龍達が苦笑している。
どうやら一葉は、変わったキャラクターらしい。
「ということは、やっぱりここにいる人たちは皆神様で、白龍以外もいるってことなのね?」
私はゆっくりと一葉に問いかけた。
「左様です!
白龍は主に水と風の神で、他にも水と風の神はとても数が多くいらっしゃいます。
白龍、我々は長が守護する大河の分流を守護しておる者共なのです。
他にも名のある川の主や、その分流を守るもの、時代の新しい川でも重要な役割をもつ川を守護する者共がおります。」
「君は結構知ってる者のようだね。
じゃあ、黒龍と白龍の話についても話してやってよ。」
コヅキは微笑みながら、一葉に言う。
「僕は用事を思い出したから、先に行っててよ。
場所は、源流の上、でよかったよね?」
「左様です。」
そう言うと、コヅキはふらっと居なくなってしまった。
「あの、一葉さん。」
「一葉で結構でございますよ。」
私は言い直して、一葉に質問した。
「一葉。
どうして私と相楽が外界から連れてこられたの?」
相楽は、俺も気になる、と、前髪を気にするのをやめて身を乗り出してきた。
「おや、コヅキ殿から聞いておられない、と。」
「アイツから聞けたことなんてちょびっとしかねえよ、俺なんかまだ夢心地だよ。」
「それは困りましたねえ、もう着いてしまった。」
気が付くと、ガラスのような透明な物質で出来た、周りの建物よりゴツゴツした、社のような場所についた。
「相楽殿はあちらへ。
白石殿は私と一緒に。」
今度は一葉よりかなり背が小さい、髪が桃色で声の高い、子供のような白龍が現れた。
相楽も、背の小さい桃色の髪の、男性とおぼしき白龍に手を引かれて行った。
「失礼いたします。
わたくしは胡蝶(こちょう)と言います。
一葉は粗相を申しませんでしたでしょうか。」
小さい子供のように見えるのに、しっかりしていて感心してしまう。
この世界の者は見た目で年齢はわからないのに。
「なにせ、一葉は久しく都を訪れておりませんで、人の言葉も怪しいものです。」
「そんなことはありませんよ!
ねえ!白石殿!」
ふたりの仲の良い掛け合いに、笑ってしまった。神様なのに、こんなに人くさい。
私は安心したせいか、少し眠くなっていた。
一葉の問いかけに、眠たげな顔で頷いた。
「相当お疲れのようですね。
人の形を取るのはつかれるものです。
さあ、沐浴をしましょう、白石様はそのまま、微睡んで頂いていて結構です、あとは私どもがやりますので。
お体をちょっと触りますが、ご心配なく。」
胡蝶の声は最後まで聞き取れなかった。
とても眠かった。
私は身を一葉に預け、微睡み、時々寝ながら、お湯に浸かった。
気づいた頃には、相楽に頭をぺん、と叩かれていた。
「起きろ。」
「う、わ、寝てたわ」
椅子で眠っていたようで、相楽に起こされた。
目を開けた先にいた相楽は、白と薄い青に銀色の紐を付けた服を着ていた。
さっきまで見ていた顔と、また少し変わっていて、目の色素が薄く、茶色から更に薄い茶色になっていた。
そのせいか、ハーフっぽい日本人だったのに、完全にヨーロッパ系の顔立ちにみえる。
私は相楽といろちがいで、白と桃色、銀色の紐で、髪は後ろの方でひとつに結ばれていた。
斑模様は抜けていて、手足はさきほどよりも更に白く、細くなっていた。
耳と鱗はまだ変化がない。
「白石じゃないみたいだぜ。」
相楽はそういうと、自分の腕の筋肉をさわった。
「俺に関しては、細い筋肉が多くついてる、ってかんじだな。
白石はマッチョだったのになあ。」
そんな冗談を言う相楽を叩いてやろうと身を乗り出すも、力が入らずヨロヨロしてしまった。
「お目覚めですね。
では、長に面会しますのでこちらへ。」
先程相楽についていった白龍、静蘭が、手招きする。
部屋を出て、真っ白な壁と、ガラス張りの天井でつくられた廊下を歩く。
こちらです、と戸を開けられ、部屋に入ると、畳のようなものが敷かれた部屋だった。
周りにはさまざまな色の紐がかけられ、
殺風景な部屋に彩りを与えていた。
部屋を進み、中程まで来たところで座るように言われた。
私と相楽は正座をして待った。
「龍の神様の長だって、おじいちゃんかな。」
「な、ばあさんかもな。」
白龍の長を想像して言い合っていると、静かに、と諭された。
すると、どこからか畳に足を引きずるような音が聞こえてきた。
じっと待っていると、相楽の横後方から、前へ進んでくる影があった。
私は目を疑った。
白龍の長と言われる者、神様は、私達とほとんど変わらないような年代の、女性だった。
髪は白く、ところどころ銀色に輝いている。
私と同様、耳と鱗は無く、外見は人間そのままだ。
長い着物は丈が当ていないのか、平安時代の姫のように長く、澄ました顔で重そうなソレを引きずって歩く姿はなんともおかしかった。
相楽はポカンとしているが、私は異様な光景に笑いをこらえようと必死だった。
そんなことも気にせず、長と言われる者は、静かに座椅子に腰掛けた。
横にあった水盆でちゃちゃっと身なりを確認して、また澄ました顔でこちらを一瞥した。
「さて、ふむ、まず、長旅をご苦労様。
そして、それに付き合った者たちも、ご苦労様。」
声は、若い女性のものだったが、なんとなく居心地の悪そうな、不思議な抑揚があった。
まるで棒読みをしているようだと思う時もあれは、急に流暢にもなった。
「私は、白龍の長で、3億と2代目の月代(つきしろ)、后(きさき)。
以後、お見知りおきを。」
頭を深々と下げられたので、私と相楽は慌てて頭を下げた。
「さて、ふむ。
本題にはいりましょうか。
では、胡蝶、静蘭、白き水を。」
そう言うと、二人が後方から盆をもって現れた。
胡蝶と静蘭は、ほとんどおなじ様相なので、双子かもしれない、神様に双子があれば。
二人は盆を后に差し出した。
「無色透明、透き通った鏡のような水。」
后は、盆を持つと、ひとつずつ、飲み干した。
「よく浄化されている。
間違いないわ、この二人ね。」
口元を布で丁寧に吹きながら、横目でこちらを一瞥する。
「では、紙と筆を。」
そういうと、今度は一葉が現れ、紙と筆を渡した。
后は不器用そうに、筆を持ち、水盆に余った水を含ませると、紙に何かを書いた。
書き終わると、人差し指と親指で紙をつかみ、こちらにみせる。
書いてある文字らしきものを判別しようと、目をほそめていると、字が浮き上がってきた。
「主らに、性と名を与える。
右から、3億と3代目無間(むげん)、相楽。
左から、3億と3代目月代、白石。
双方、姓名に異論なければ、白き水を飲み干して応えよ。」
言い終わると、紙はを2つの盆にそれぞれ落とした。
その盆を、胡蝶と静蘭が運んできた。
盆を差し出され、迷っていると、
一葉が飲むジェスチャーをしている。
これは、盆の水を飲むのだ、と分かり、盆を覗き込むと、紙は無くなっていた。
盆を口に含むと、飲み干した。
飲み干すと、喉のあたりが熱い。
熱いものが、喉をくだり、腹に入った。
まだ、あつい。
「命名おわり。
二人とも、それぞれの守護をかたく守り、清澄階と白龍族の平和に努めること。」
后はそういうと、一葉と胡蝶、静蘭を従えてまた重そうに服を引きずりながら去っていった。
私達は広い部屋にとりのこされ、一連の出来事に呆然としていた。
すると、扉の方から一葉が呼び掛けた。
「お二人共、お次はお食事です、こちらへ」
私と相楽は顔を見合わせ、立ち上がって小走りで一葉の呼ぶ方へ行った。
また沐浴をする、と言われ、いやいや衣服を脱いで、水浴びをした。
なんども沐浴させられるので飽き飽きしていたが、この水が重要なものだと言われていたので、なんとか協力した。
同じ服を身にまとい、一葉につれられて、大きな部屋へ向かう。
西洋の食卓のようで、長細い机に和食のようなものが並べられ、数名がすでに着席していた。
私と相楽はお誕生日席(机の短辺)にすわらされた。
ざわつくなかで、横目で着席している面々を拝見した。
短髪でほとんど坊主頭の女性、小さな男の子、強面の美男子、色黒金髪坊主頭のマッチョに、白髪をポニーテールのようにまとめているにこやかな男性、紫がかった長い髪の美しい女性、一葉とその他の白龍も控えていた。
しばらくすると、先ほどとは打って変わって、私達の着ている服を、短めにアレンジしてミニスカート風にし露出度を高め、ニーハイとハイヒールを着用した后がカツカツと音を鳴らしながら堂々と登場した。
白い髪を赤い紐でポニーテールにし、15cmはありそうなヒールを颯爽と履きこなしている。
后が着席すると皆静まり返り、残りの空いている一席を除いて全員が着席した。
后は席に着くなり顎をつき、テーブルの上にある桃を小指を立てながら人差し指でツンツンとつついている。
静まり返っている中、扉を開けて、少しもうしわけなさそうにコヅキが入ってきた。
コヅキが着席すると、后が口を開いて睨む。
「あら、随分余裕があるのね。
私より後に来るなんて。
恵比寿殿。」
棒読みのようなしゃべり方だから、今回は嫌味のようにはっきり聞こえた。
コヅキは、いやあ、と頭を掻いている。
「遅れてもうしわけない。
理由はあとで説明しますよ、さて。
では、白龍一族と七福神、そして月代、無間、新両3億3代目による、白き水問題を解決するための第一回会議、略しまして白水会議を始めます。」
コヅキの発言に、会場がざわついている。
「由緒正しき会だ、名を改めよ!」
「もっと色っぽい名前にしましょう。」
「めんどくさいからそれでいい。」
「とりあえずたべよう。」
会場はやんややんやだ。
后は腕を組んで目を閉じている。
私は思い切って声を発した。
「あの!すいません!」
皆がこちらを見る。
后がにらむ。
「あ、あの、白龍族は分かるんですが、七福神って?それに、3億3代目ってどういうことですか。」
皆がキョトンとしている。
「あら、ふむ。
コヅキ、あなた、ちゃんと説明してないのね。」
后が首を傾げながらコヅキを一瞥する。
「あれえ。」
コヅキがおどけて頭を掻いている。
「僕と、周りにいる6人が七福神。
君と相楽君は白龍族の次期、長候補の月代と、その守護の無間。
黒龍の次期長である彦と婚姻を交わす月代が白石さんで、相楽君はその守護なんだよ。」
「なんだよ、というより、さっきなった。」
短髪坊主頭の女性がさらっと言い放った。
「そうよお、あらあ、辞退できたのにい、しなかったのお?」
紫髪の女性がやんわりと発言する。
それを聞くと、后が驚いたような顔でコヅキに問いただした。
「あら、コヅキ。
あなた、本当に何も説明してないのね」
コヅキはいやあまいったなあと言いながら頭をかく。
私と相楽は愕然とした。
話は聞いていたが、それが自分たちのことだったとは。
キーパーソンと言われてはいたが、まさかのメインパーソンではないか。
「と、いうことは本当に、俺たち。」
「そう、君達が解決するの、この水問題。」
「私達は元いた場所へ帰りたいんですが!」
私は挙手をした。
「白龍の命名は終わった。
盆の水を飲んだ時点で辞退はできない、これを解決するまでは、だ。」
強面の美男子が素っ気無く答える。
「コヅキ、俺たち、帰れるんじゃ・・・。」
相楽が恐る恐る確かめる。
「ゴメン、もう無理。」
コヅキはてへぺろ、と言いながらウインクした。
七福神一行は、てへぺろってそれどういう意味、かわいい、下界の流行りなのか、などと盛り上がっている。
「「ふ ざ け ん なー!」」
私と相楽はオシボリをコヅキの顔面めがけて思いっきり投げた。
久しぶりに、息があった。
おしぼりは、一つは強面の美男子に当たり、一つはコヅキに命中した。
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