第1幕2部 三人目、痛告者

 ある人は痛みを知らないまま他人を痛めつけていた。

ある人は痛みを知っても隠し通し、優しく微笑んだ。

ある人は痛みを知って、他人を痛めつけ楽しんでいた。


どういう人間がいるのか。

どういう性格の分類がされているのか。

どういう生活でこの人は成り立っているのか。


「わからないことだらけだ」


理想の生活を思い描いて物語を綴っていたが、その手が止まってしまった。

急に、心の底が痛くなってきた感じがした。


「あいつらさえ居なければ、私は。」

まともな性格の人間で、まともな生活をしていたのかもしれない。


痛みを知らないで、のうのうと生きているあの子達。

散々私に痛みを与えておいて、自分達は楽しそうに、幸せそうにしている。


「憎たらしい、あいつら、掌返しやがって……」


友人にも一時期だけ裏切られて、苦しい思いをした。

きっともう、そんなことは忘れているんだろう。

それすら許せなかった。心の底で、恨んでいた。

まだ私はその気持ちを拭いきれていない。


あの時は弱かった。だが、今の自分なら容赦なくあいつらに仕返しが出来ると思うが、もうあいつらの顔なんて見たくない。


ふと、思いつく。

あの時出来なかったことを、この物語の主人公にやらせてしまえばいい。

復讐劇ではないが、自己満足には丁度いいかも知れない。

あの時したかったこと、やり直せるなら。

この物語の中でなら、人をどうしようと関係はない。


痛みは治らない。

あの時、あの人以外助けてくれる人は居なかった。

助けてくれたあの人だって、結局取られてしまった。


まだ痛いのに、まだ苦しんでいるのに、どうして誰もわかってくれなかったの。

痛くて痛くてたまらないのに。


「どうして私だったの?どうして私の事ばかり苦しめたの?なんであいつらは苦しんでいないの?不公平過ぎると思わない?ねえ……すぐる君。」


彼の名前を主人公に与えよう。

ただ、読み方は変えなければ。


「たりあえずは、『しゅう』かな、やっぱり。」


物語で痛みを抱えている私を、どうか、どうか助けてください。

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