第11話 奴隷は嘘を付いて信頼を得る。

本文

〜ノダリア・人気の無い道路〜


「俺ダンク!

今ピリオの奴隷やってるの!」

「エエエエエエエエエエ!?」


石畳で舗装された道路にピリオの声が響いていく。

メリーはしばらく目を丸くしてピリオを見つめる。


「…あんたご主人?」

「ちが…!?」(口が動かない!?)


否定しようとするピリオの口がいきなり閉じる。

ダンクが魔法で口を閉じたのだ。

そしてダンクは小声でピリオに囁く。


「死にたくなければ俺に従いな」

(え…?)

「『そうだ、ダンクは俺の奴隷なのだ。』」


ピリオの口からピリオの知らない言葉が出てくる。

ダンクが何か魔術を使用したのだ。

メリーは鎌をダンクの首に向けて掲げたまま話す。


「嘘ね。

ダンクは私の運命の人よ」

「おっと、俺は嘘つかないぞ」とダンクが言いながら、

「『僕も嘘付かないよ!

こいつは正真正銘僕の奴隷なんだ!僕・の・奴・隷・だ!

いやーこいつは可愛い奴隷なんだぞう!』」


とピリオの口できっぱり嘘を言う。ピリオは青ざめた笑顔のまま小声でダンクに訊ねる。


(ダンク、あんた僕をゲスにする気なの?殴っていい?)

(まあ黙って見てな)「俺がこいつの奴隷である以上盗みはできないな。

俺の魂はこいつの物。あんた『達』の物じゃない。

悪魔が『契約違反』をしたらどうなるか、分かるよな?」

「……。

マスター、状況変化確認。報告。

ターゲット所有物、真偽不明。

契約違反抵触可能性・大」


いきなりメリーの顔から感情が消え、人形のように無表情になる。


(な、何?

あの子一体何を言ってるの?)

(アイツは悪魔に創られた人形さ。

大方俺と契約した悪魔達の一体が、契約料として俺の体だけじゃなく魂までせびるようになったんだろうよ。

メリーって子はその為に創られた魂回収の為の存在)


ダンクはニヤニヤと笑いながら鎌を掲げる少女を見る。

少女はぶつぶつと空に向けて一人で喋り続けていた。


(だが俺がお前の所有物と言った為に奴は手を出せなくなった。

悪魔にとって一番嫌なのは契約違反を犯す事。

屁理屈は好きなくせに、違反するのは大嫌いな奴等なのさ。

だからメリーは動けない。

しばらくああやっている筈だ)

(…ダンク、そこまで考えてこんな変な事を…)

「『話はいいかい?

僕はこれからレストランで美味しい食事を食べに行くんだ。

話し合いなら向こうでやってくれないか』」


そう言って、ピリオはくるりと振り返りダンクと一緒にレストランへ向けて歩き出していく。

そしてこれもピリオの意志ではない。


(ちょ、ちょっと、何をしてるのさ!僕は宿屋に行くんだ!)

(レストランへゴーゴー!)

(くそ、はめられた!

メリーちゃん!早くこいつ連れてって!)

(フフフフフ、冷たい事言うなよご・しゅ・じ・ん・さ・ま)

(このミイラアアア!!)


「待ちなさい!」


ギクッとしながら二人は止まり振り返ると鎌を何処かにしまったメリーが直ぐ後ろに立っていた。


「今度あなたの所にマスターが来るわ。

その時直接貴方を解放してあげる、楽しみにしなさい」


そう言って、すぅっとメリーの姿が消えていく。

後に残ったのは、ピリオとダンクだけだ。

ピリオは口を開く。


「『上等だ!

かかって来い!このピリオ・ド・シュリアがぶっ倒してギッタンギッタンのケチョンケチョンのズタボロ雑巾にして牛乳で湿らせてやる!』」

(ダンク………あんたいい加減にしろおおお!

僕の口でこれ以上変な事言わせんなああああ!!)

「おー怖い怖いご主人様だ。

ささ、早くレストランで魔力回復してこよう♪」



こうして、ダンクとピリオは『仲良く』レストランまで歩く事になったとさ。

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