真章1 不伝~怪力乱神御伽噺~プロローグ
『おばかなまほうつかいダンクのはなし』
昔有るところに、ダンスと言う名の若者が居ました。ダンスは世界中の魔法を手にしようと考え、悪魔達を呼び出し『自分の体と引き換えに魔法の知識を手に入れる』契約を交わしました。
魂だけに成り果てながらもダンスは包帯にとりつき、人型になる事ができました。
そして名前をダンクに変え、今度は世界の魅力にとりつかれ、今は世界中を歩き続けていると言うお話です。
この話を読んだ皆さんはダンクのように周りを見ないおばかさんにならず、隣の人を大切にし、何かに夢中にならないで下さいね。
『おばかなまほうつかいダンクのおはなし』
めでたしめでたし。
・・・この物語は誰が書いたのだろう?作者はダンクだ。
・・ダンクは何故この物語を書いたのだろう?
これは、物語の裏側の物語。
誰も知らない、知ることが出来る筈が無い物語が、始まる。
歩き続ける者達 〜不伝〜
怪力乱神御伽噺 後編、プロローグ
ダンクとピリオは風に乗って夜空を飛んでいた。
ピリオはダンクが作り出した包帯の繭に包まれ眠りに落ちている。
ダンクは風が続く間、じっと森を見つめ続けていた。
(……間違いない、あれは本物の拳銃だった)
ダンクの記憶の中で蘇る、拳銃を持った魔王の鮮明に映り一瞬で消えていく。
(あれは間違いなく、俺の時代にあった拳銃だ。
あの時何処にいったか分からなかったけど……そうか、魔王が持っていたのか)
ダンクはチラッと繭の中で眠るピリオを見る。何か寝言を呟いていた。
「あ、ダメ……魔法少女は、魔法少女はあああ!」
「こいつの悪夢、何故か魔法少女がらみなんだよな……まあ気にしても仕方ないか」
ダンクはピリオから目を離し、夜空を見る。
星は瞬き、月は輝いている。
月明かりに照らされたダンクは、魔王の事を思い出していた。
(魔王、あいつはきっと、俺が全てを忘れてると思って、あんな事をしてくれたんだろう。本当に良いやつだ。最高の師匠にして、最高の親友だよ。
だけどね、俺は何も忘れてないんだ。でもそれを伝える事が出来ないんだ。
あの時のあの笑顔を、あの苦しみを、一体誰が忘れられるって言うんだ?
……だからこそ俺はあの時の記憶を何一つ許す事は出来ない)
ダンクは口を噛み締める。
もし彼に歯があれば、ギリギリと歯を食い縛っていただろう。
(真実だ。
全ては真実が悪いんだ。
あの忌々しい醜くおろかなろくでなしの真実め!)
ダンクの過去が少しずつ鮮明に蘇る。
童話『おばかなまほうつかいダンク』に決して書かれる事の無い、誰も伝える事を許されない不伝の物語のページが、ゆっくりと開かれる。
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