『泥欲氾濫』

『泥欲氾濫』【上】


『泥欲氾濫』


(本編開始より五年前――まだワンがカインと出会う以前、特警隊員のとある狙撃手の物語。)





 じとじととした雨が皮膚に纏わりつくような不快感を煽る、そんな日だった。

 ここは警察庁特殊警察・対異能犯罪課に属する支部の一つ。特殊能力を犯罪に用いる者達に対抗するための法執行機関で、その中でも首都である東都を護るために置かれた、生え抜きの戦闘部隊を擁する署だ。その署の一室、出動隊待機室には三人の刑事が待機していた。

 黒ずくめの男が二人、そして私服の女が一人――――。

「囮捜査もこれで三日目か……。犯人ホシは今のとこ姿を見せねえが、油断するんじゃねえぞ」

 背が高く、茶色い髪を後ろに結った男、王 少天ワン・シャオティエンが仲間に注意を促した。刑事であるにもかかわらず、彼の腰のホルダーには拳銃でなく、鞘に納まった日本刀が提げられていた。

「分かってるわよ、これ以上被害者を増やすわけにはいかないんだから」

 王の言葉に応えたのは、金髪のショートヘアが似合う女性隊員、エリゼ・イルマルシェ。


 ――それに続きもう一人、黒髪の短髪で四角い眼鏡を掛けた男が、腕時計を確認した。

「二人とも準備はいいな?」


 神経質そうなインテリタイプに見えるこの男も、特警の戦闘部隊における主力戦闘員であり、今回の事件の捜査員に選ばれた一人である。

 彼は王とエリゼが頷いたのを見て、狙撃銃を手に取り、椅子から立ち上がった。


「午前0時。状況を開始する――――」


 彼――特警刑事ペク・フォンハの掛け声とともに、ミッションがスタートした。

 三人はそれぞれの想いと覚悟を秘め、異能者の跋扈する夜の街へと赴く。泥欲に溢れ返った、一人の犯罪者を仕留めるために――――。





『S区婦女子連続失踪事件』――現在特警が必死に追っている案件で、文字通り、S区周辺で起きた連続失踪事件である。現在把握している限りでも、被害者は既に十五人にものぼっている。先日、普警捜査本部の捜査員がで発見された段階でようやく、普通警察から特殊特警に指揮権が渡ったが、犯人に対して大きく後れを取っているというのは揺るぎない事実だった。

 一連の事件の発端はもう一年以上前になる。最初に姿を消したのは、静月ジン・ユエ、二十四歳。彼女の家は代々弓術道場を受け継いでおり、ユエ自身も厳しく育てられ、とても真面目で大人しい女性だったそうだ。彼女の失踪とともに婚約者の男性も姿を消しており、目下捜索の対象となっていた。

 その後も犯行に一定のペースを崩さない几帳面な犯人は、S区の界隈を縄張りとし、一ヵ月ごとに最低一人、多い時には二、三人の――それも若い女性ばかりを狙って人攫いを繰り返した。

 被害者達に共通点は無いが、皆、家族や知人から見ても失踪や家出、また自殺などの可能性など考えられないような人物ばかりだった。そんな彼女たちが、買い物に行く途中、仕事帰りの夜道、そして一人暮らしの自宅で――神隠しのように誰にも目撃されず、忽然と姿を消したのだった。

 それらが同一犯による犯行だとされた理由は、どの現場にも、ヒトのDNA情報を含んだ謎の液体が残されていたからだ。そのDNA情報は、一番目の被害者――ジン・ユエの婚約者である男性のものと一致した。これにより、ユエの婚約者は緊急指名手配されることとなる。

 ただ、特警サイドではこの男性が犯人だという普警の論拠に懐疑的だった。なにせ事件のうちには完全な密室で行われた誘拐なども含まれており、早くから異能者の存在が疑われていたからだ。それに、現場に残されていた液体は、汗、涙、唾液、そのほかの体液とも全く異なった構造をしており、本当の意味で「謎の液体」だったのだ。もしこれが異能者による能力の産物だとすれば、毎回わざとらしく現場に残していくのはおかしいのではないか――と、そう考えていた。

 それにもかかわらず、普通警察の捜査班は一連の失踪事件に対して、きちんと異能を視野に含めた捜査を行わなかった。その認識の甘さが、今になってさらなる災いを招いてしまう結果となった――。

 連続失踪事件に対し、普警からは経験を積んだベテランの刑事を筆頭に、三人チームで犯人の追跡にあたっていたのだが、ある日を境に捜査チームからの連絡は途絶えてしまう。刑事らは被害者達と同じように、突然姿を消してしまったのだ。結局彼らは、犯人を逮捕するどころか、生きて戻ってくることさえ出来なかった。

 しばらく経ってから、死体が見つかった。

 事件を追っていた三人の刑事達の末路は、凄惨極まりないものだった。

 捜査チームを率いていた一番のベテラン刑事は、服も躰も、あちこちがドロドロにただれた状態で、ゴミ捨て場に捨てられていた。

 その相棒の中年刑事は、直径十五センチほどしかない排水管に、ぱんぱんに詰まって細長くなった状態で発見された。

 最後の一人の比較的若い刑事は、どぶ川で衣服と警察手帳が見つかっただけで、とうとう行方は分からずじまいだったらしい。回収された衣類はボタンやベルトなどは一つも外されておらず、襟にはきちんとネクタイが巻かれ、シャツの袖も上着の袖に通ったままだったという――まるで、中身の人間だけが溶け出して、どこかに消えてしまったかのように。

 彼ら捜査チームの全員がとても普通に殺されたとは思えない最期を遂げたことによって、普警上層部と事件捜査本部もようやく犯人の危険性を理解した。


 ――そのような経緯があり、哀れな前任者達から事件を引き継いだのが、当時から既に腕利きの特殊刑事として名を馳せていたペクと王だった。捜査にはもう一人、女性隊員であるエリゼ・イルマルシェも加わった。

 三人の特警隊員は、事件が全て水路や川の近く、もしくは下水の流れる上で起きていることに着目し、今までの犯行現場の遷移パターンから最も犯人出現率が高いと思われる区域を割り出した。

 その区域を重点的に巡邏するという手もあったが、目撃さえされずにこれだけ犯行を重ねてきた相手である。おそらく「狩り場」の変化にも相当敏感なはずだ。もしここで気取られ、これまで全く手掛かりすら残していなかった慎重な犯人が、さらに警戒して雲隠れしてしまっては元も子もない。そこでペク達が選んだ方法が、囮捜査だった。犯人を誘う寄せ餌――囮役には、女性であるエリゼが自ら志願した。

 首都を守る特警支部の精鋭部隊、その中でも特に腕利きの隊員が三人。事件は簡単に解決を迎えるだろうと、誰もが思っていた。


 ――これより以下、犯人逮捕時の顛末である。





 特警女性隊員、エリゼ・イルマルシェは、雨上がりの夜の街で、わざと人けのない道を歩いていた。

 金髪のショートヘアが似合うこの女刑事も、普段の任務では特警隊員の例に漏れず、黒ずくめの完全武装で戦闘をこなしている。黒い防弾仕様のロングコートの下に、予備弾倉を多数装備したプレート入りのタクティカルベストを着用し、ミニスカートで素早く駆け回りながらウージー機関銃を二挺構えでぶっぱなしまくる。その姿は『黒い雌豹』などと呼ばれ、男性隊員達からも恐れられていた。

 ――そんな彼女なのだが、今回に限っては囮捜査の為、ラフな格好で街中をうろつくことを余儀なくされていた。

 Tシャツの上にダウンジャケットを着込み、短いデニムのスカートと、茶色い革のブーツ。「おいおい、囮なんだからもう少し色っぽい格好をだな……」とは王の談だったが、エリゼの「何か文句ある?」という無言の圧力を受け、あとに続く言葉を飲み込まされた。

 もっとも、さらりとした金髪のショートヘア、そしてモデル並みに引き締まった体と整った顔立ちの彼女が着ていたのだから、どんな服装でもそれなりに魅力的ではあったのだが。そのせいか、人けのない道に至るまで、彼女は随分と通りすがりの男どもに色目を使われたものだった。

「(まったく、自分から立候補したとはいえ、嫌な役目よね――)」

 彼女はそんな事を思いながら、オフィス街のビルとビルの間を突っ切っていた。もう日付も変わって半時間も経った頃だ。この時間でもまだ人の目のあるコンビニや軽食店などからは離れて行動している為、明かりの灯っているビルも少なく、通りに人の姿も見当たらない。

 薄暗い夜道を歩きながら、エリゼは足下のアスファルトを見つめた。ちょうどこの道路の下にも、下水道が通っているはずだ。エリゼの歩く前方にも、その入り口であるマンホールが見えている。マンホールの周りには、先刻上がった雨のせいか、大きな水溜りが出来あがっていた。

 この道を通るなら、どうしてもその水溜りの中に足を踏み入れなくてはならない。抵抗はあったが、今さら引き返すのもおかしな話だ。


「ブーツが濡れるのは嫌だけど、ま、仕方ないか……」


 そう言って何気なく一歩を踏み出した時、得体の知れない違和感が彼女の全身を襲った。

「(―――なに? この気配……!!)」

 咄嗟に足を引っ込めるエリゼ。次の瞬間、水溜りの中から何かがにゅっと出現した。


 ――――――手だ。


 突如現れた青白い手が、万力のような力で彼女の足首を掴んだ。

 ぞっとする。全身の肌が粟立った。この〝手〟は危険だ。エリゼの本能がそう告げていた。

 頭で理解するよりも早く、彼女の右手はスカートの下、太腿にくくり付けていたベルトに隠し持っていたコンバットナイフを抜いていた。素早くその刃を振り下ろし、ブーツの靴紐と革の生地を一気に切り裂く。それと同時に足首の関節を外し、するりと青白い手の拘束から抜け出した。そのまま距離を取り、脱臼の痛みに耐えながら、関節を再び繋げる。

 エリゼは水溜りから出現した、人間のものと思われる奇妙な腕を視察する。その手は、彼女の脱ぎ捨てたブーツを握りつぶすように強く掴んでいる。

 それから周りの水溜りに目を移す―――。

 水溜り全体が、うぞうぞと動いている。まるで生き物のようだった。

 濁った水はやがて水面から突き出した上腕部のもとに集まり、人間の形を作り出す。

「どうやら大当たりみたいね……」

 エリゼは緊張した面持ちで、リバースグリップに握ったナイフを構えながら、空いている方の手でジャケットからハンドガンを取り出す。カドを取った滑らかな四角いシルエットとポリマーフレームの銃身が特徴的なオートマチック拳銃、グロック。

 その武装を見て、さきほどまで液体に化けていた男がゆらりと立ち上がった。

 長身痩躯の、不気味な男だった。肌に密着する黒いインナーを着用し、その上から灰色のコートを纏っている。下半身には軍人のようなズボンとブーツ、腰のあたりにはベルトと一体になったホルダーが連なり、何に使うのか、沢山の筒状の容器が収まっていた。

 男の顔は不健康に痩せこけており、落ち窪んだ眼窩の奥は、左眼だけが外斜視気味。整髪料でべっとりと整えられた銀髪は、一房だけ垂れ下がっている前髪が印象的だった。

 ――この男こそが、『S区連続婦女失踪事件』の犯人、異能者ヴァイヒ=メルクーアであった。

 メルクーアはエリゼの全身を、下から上へと厭らしい視線で舐め回した。

「驚いたな。近頃の女は護身用に銃とナイフを持ち歩いているのが普通なのか? この国も物騒になったものだなぁ……」

 皮肉のあと、キシシシ……と歯の隙間から空気が漏れるような笑い声を発する。

 青白い手に握られていた革のブーツは、今やドロドロに液状化して指の隙間からこぼれ落ちている。

「(物を溶かす能力? いえ、違うわね……。それだけだと水溜りから出現した説明が付かない――)」

 エリゼも改めて相手の全身をまんべんなく観察する。首から下げられているのは、アクセサリ――ではなく、認識票ドックタグ。さらに、厳しい訓練を受けた者特有の隙の少ない立ち振る舞いから、彼女はメルクーアが元軍人であろうことを容易に看破した。

「(異能持ちの軍人崩れ……か)」

 ただでさえ厄介な『異能者』であるのに、そのうえ戦闘訓練を受けていたとなると、余計に七面倒臭いことになるのは必至である。それはエリゼ一人であれば大いに手こずったであろう敵だった。

 ――だが、今は状況が違った。

 突如、敵の背後から煌いた白刃が、袈裟掛けにその躰を切り裂く。

 バシャッ――――奇妙な手応えと音。

 メルクーアがぐらりと倒れると、その後ろには刀を振り下ろした王が立っていた。

「大丈夫か、エリゼ!!」

「ええ、今のところは。被害はブーツが片方だけよ」

 急いで駆け付けたであろう王は、極めて冷静に軽口を叩くエリゼを見て、「やれやれ、助け甲斐のないお嬢さんだな」とぼやいた。

 だが、安心するのも束の間、次の瞬間には素早く起き上った敵の反撃が、王の下腹部に叩き込まれていた。硬い軍靴の靴裏での後ろ蹴り。王は数歩分後ろに下がった。

 何事もなかったかのように立ち上がったメルクーアは、王とエリゼに一瞥をくれた。

「くそっ、貴様ら警察か!? 二人……――いや、」

 そう言いかけて、メルクーアは自分のこめかみの横にさっと右手を掲げる。――直後、彼の右手は亜音速のライフル弾に貫かれた。だが血飛沫を上げながら貫通した弾丸は、手の平を抜け出る頃にはなぜか、液状と化していた。パシャッと音を立てて、液体と成り果てたライフル弾が血液と一緒に顔面に付着する。右手は派手に損壊したが、頭部へのダメージは無い。

「――――三人か!!」

 メルクーアは叫びながら、弾の飛んできた方向――オフィスビルの屋上を見上げる。

 そこには立射姿勢で狙撃銃を構えたペクが立っていた。高層ビルのへりに足を掛け、射撃の反動を受けるために重心を前へ傾けているその姿は、素人目から見れば「落ちはしまいか」と冷や冷やするような体勢だ。

 彼がその手に構えるのは、特警武具兵器開発部門で独自に改良を加えられたVss狙撃銃ヴィントレス。赤外線暗視装置用のポインターを装着。通常の狙撃銃に比べると射程距離は短いが、高度な消音性能とフルオートでの狙撃を実現したスナイパーライフルだった。狙撃用ライフルとしては驚くほど軽量で、分解すればブリーフケースにも収まり、組み立ては一分足らずで行える。市街地で戦う特殊部隊にとっては非常に有用な銃火器だろう。

 ペクは敵を仕留め損ねたことにも狼狽えず、狙撃銃をセミオートからフルオートに切り替え、掃射した。一定間隔でトリガーから指を離す「指切り射撃」で三、四発ずつの弾を発射。小気味よい短連射を数回に分けて叩き込む。

「クッ……!!」

 メルクーアは間一髪で、弾道上から身を躱すことができた。これも軍人時代に鍛えられた勘と、異能者特有の鋭敏化された戦闘本能のおかげだろうか。

 咄嗟に横に跳んだメルクーアに向かって、今度はエリゼが走り込む。彼女は短機関銃の名手でもあったが、徒手格闘技の技術を併用した逆手持ちでのナイフファイトも得意としていた。右手に持ったナイフをフックで殴り付けるように斬り付ける。刃は正確にメルクーアの頸動脈を捉えた。

 本来ならば、重要な血管を切り裂き致命傷を与えるであろう必殺の一撃。しかし、異能を発動したメルクーアには通用しなかった。

 ナイフは「とぷん」と音を立てて首の中に潜り込むと、そのまま何の抵抗もなく反対側の首筋へと抜けて行った。敵の首からは、よく分からない濁った色をした飛沫ひまつが少しばかり飛び散っただけで、一切のダメージは与えられなかった。振り抜かれたブレードも奇麗なもので、血糊の類は全く付着していない。

 メルクーアはその斬撃を微塵も意に介さず、それどころか即座に、ナイフを振り切った直後のエリゼに反撃を喰らわそうとした。剃刀カミソリのように鋭い右ハイキック。大きく弧を描くような派手さはないが、その代わりスピードと重さの乗った一撃だ。

 エリゼは左背腕で、軍靴の重い蹴りを受け止める。蹴り足を素早く引き戻した敵は、続けざまに左手を突き出し、エリゼの細い首を掴もうとした。彼女は上体を反らして、伸びてきた青白い手を躱すと同時に、下からアッパーのように振り上げたナイフでその腕を斬り付ける。しかし、先ほどと同様、「ぱちゃっ」という水音とともにナイフはメルクーアの腕を素通りするだけだった。そこには何の手応えも感じられない。

 それでも彼女は、攻撃の手を休めるわけにいかない。

 獲物を捕らえることなく虚しく宙を掴むメルクーアの左手に対し、エリゼの左手はへそ下あたりの位置まで下げられ、その手に持った拳銃からは弾丸が三発、相手の腹に撃ち込まれた。が、これらの銃撃もまるで水面に撃ち込まれたかのように、メルクーアの躰を通り抜けていく。

 決定打のないまま、打撃、掴み、ナイフ、と高速の攻防を繰り広げる女刑事と異能者。

「なんだありゃあ、ヌカにクギだな……埒が開かん!」

 王が舌打ちをしながら二人に再接近する。敵の躰を貫通した弾丸をうまく避けながら距離を詰め、王は脇構えから刀を斜め上に斬り上げた。

 メルクーアは屈伸運動のように躰を深く沈み込ませて王の斬撃を回避すると、その体勢から素早くエリゼの拳銃を掴み、銃身上部のスライドを後退させた。こうすることで半自動式拳銃は一時的に弾丸を撃ち出すことが出来なくなる。そこに生じた隙を利用し、自らの異能を行使する。

 異能者の触れた拳銃に、異変が起こる――――強化プラスチックと金属で構成されていた銃身は、見る見るうちに黒いゲル状の物体へと変容していく。さっきまで拳銃だったその物体は、まるで意思を持ったスライムのように、エリゼの手の内からメルクーアの手の内へと移動していった。

 それを見た王は、斬り上げの動作からすぐに刃を返しての左袈裟斬りへと転じるが、メルクーアは自分を挟む二人の刑事の間からするりと抜け出し、刃の殺傷圏から逃れた。

 ドロドロとした流動体だった「元拳銃」が、異能者の手の中で再び本来の武骨なフォルムを取り戻してゆく。武器は一瞬にして敵に奪われてしまった。

「触れた物と、そしててめえ自身を液状化する能力か……!!」

「そのようね。しかも、液体から元に戻すのも本人の自由みたい」

 短時間にこれだけ何回も見せ付けられれば、誰だって容易に理解する。

 ―――液状化。

 それこそが異能者ヴァイヒ=メルクーアの持つ能力、“Ooze makerウーズ・メーカー”であった。

 彼の異能は、王の言った通り〈手に触れた物体を液状化させる〉というものである。その力は自らの身体にも適用可能であり、また液状化させた物体を元の状態に戻すことも自由自在だった。

「まるで液体人間だな……古くせえ特撮映画みたいだ」

 だが、もちろんそれ相応のデメリットもある――。

『王、エリゼ……そいつの能力は自分の体とそれ以外の物体、それらを同時に液状化することはできないはずだ。つまり自ら液状化している間は自分以外に向けて能力を発動できないし、逆を言えば物体への能力発動中には自身を液状化することはできない――。 エリゼの銃を液状化している最中に、能力を使わず王の刀を避けたのがその証拠だ』

 衣服の内に取り付けた小型無線機から、ペクの声がした。ペクは敵の闘いぶりを視察しながら、メルクーアの持つ能力の欠点を看破していた。それを聞いた王が、にやりと笑った。

「おいペク! お前、冷静に分析してる暇があったら援護射撃くらいしろよな!!」

 王の叩いた軽口に、ペクも少しむっとしつつ反論する。

『お前達が標的に接近し過ぎるから、撃とうにも撃てないんだろう。もう少しスマートに戦うことはできないのか?』

 そして売り言葉買い言葉のついでに、新たな情報も追加しておく。

『あとだな、そいつは俺が頭を狙って狙撃した時だけ、手を使って急所を庇った。狙うなら頭部を重点的に狙え――!』

 ペクのアドバイスは的確だった。メルクーアは自分の躰の一部分だけなら一瞬で液体化することが出来るが、身体全域の司令塔である頭部だけは即座に液体化させることは出来なかった。首より上を液状にするには、まず手足などの末端部位から徐々に全身液状化していき、最後に頭部を液状化させる必要がある。それを実行しようとすると、どうあがいても十数秒はかかってしまう。


「(まさか、この短時間でオレの能力の欠点を見抜いたというのか――)」


 無線機から漏れ出た狙撃手の声を聴き取り、メルクーアは戦慄する。目の前にいる王とエリゼの常人離れした戦闘力よりも、離れた高所から戦況を把握し、わずかな情報から自分の能力を的確に見抜いたペクの観察眼にこそ驚愕していた。真に警戒すべくは現在交戦中の二人ではなく、ビルの上のあの狙撃手だと――異能者としての本能がそう告げていた。

 メルクーアは己の本能に従い、エリゼから奪ったハンドガンをペクに向ける。拳銃程度の命中精度、しかも重力に逆らった下方からの射撃では、この距離でライフルに対抗できないことなど元軍人の彼にも分かっていたが、それでも牽制のためだけに、弾倉にある弾を惜しげもなく消費していく。王とエリゼの強襲に応戦しながら放たれた弾丸は、戦闘中の不十分な射撃体制だったにもかかわらず、高層ビル屋上の縁に立つペクの足下付近に着弾し、あるいは躰のすぐ横を通り過ぎて行った。

 ペクはとりあえず頭を引っ込める。

「あの男、なかなか良い腕をしている」

 流石は元軍人、と言ったところか――。

「――っと、このままサボっていたら王にまたどやされるな。やるべき事はやっておくか……」

 先刻同僚には冗談交じりの文句を言われたが、彼とてただ何もせず観戦を決め込んでいたわけではない。ペクは仲間達が下で交戦している最中、ライフルに搭載されたカメラ機能と望遠スコープを用いて敵の姿を撮影しておいた。その画像データを、足元に置いていたタブレット型の電子機器に転送する。火器に搭載されたインターフェースとタブレットPCは繋がっており、特警本部のデータベースや軍事衛星などともリンクしている。これらのシステムは、謀大国陸軍の研究していたランド・ウォーリアー計画(次世代統合型歩兵戦闘システム)から着想を得て、特警の戦略・技術開発部と武具兵器開発研究部が共同で試作したものだった。

 データの転送完了とともに、PC内ではペクの自作した検索エンジンが起動。自動的に特警総本庁、国内外の警察機構、そして彼が傭兵時代にコネを築いておいた各国軍部のイントラネット(※組織内、企業内のみでの利用を目的に構築された独自ネットワーク)に回線を接続、画像データを基に迅速な情報収集を開始する――。


 一方のメルクーアは、弾切れになった拳銃を捨て、王とエリゼから距離をとった。コートをばっと広げ、その下のベルトから水筒のような金属製の容器を二本、両手に取り、内容物を空中にぶちまける。中から黒い液体が流れ出たかと思うと、その物体は一瞬で二挺の銃器に早変わりしていた。

 フルオートのマシンピストルが二挺。メルクーアは空になった容器を捨て、宙に放り出されたマシンピストルに素早く持ち替えた。交差した両手に握られた二つの銃口が「タタタタタッ」と連続で火を噴く。

 これにはエリゼと王も面喰った。メルクーアの腰周りに巻かれたホルスターと、ベルト部分にある複数のホルダー。そこには円筒形の容器や小瓶などがいくつも差し込まれている。容器や小瓶の中には殺した刑事達から奪った銃や、軍隊時代の繋がりから横流しで手に入れた自動小銃、そしてそれらの予備弾薬などが〈液状化〉して収納してあるのだ。液状化するとどんな容れ物にも隙間なく納まり持ち運びにも便利だし、丸腰を装える。元に戻すのも一瞬なので奇襲効果も抜群だ。

 ばらまかれた弾丸を上手く避けるエリゼと王。その間にメルクーアはさらに距離をとる。お目当ての地点まで到達した頃合いを見計らって、彼は弾切れのマシンピストルを二人の追跡者に目がけて投げ付けた。

 エリゼは高々と掲げたかかと落としで、王は刀を振り上げて、それぞれ飛んできた銃身を叩き落とす。

 充分に時間を稼ぐことに成功したメルクーアは、地面に勢いよく両手を突き、足元のアスファルトを液状化した。そのまま、ずぶずぶと底なし沼のように沈んでいく。下には下水道――おそらくは、逃げる気だ。

 それを見た王が、襟元に取り付けられた無線機のマイクを手繰り寄せた。

「敵の逃走行為を確認、作戦をプランBに移行する!」

 王が小声で、ビル屋上に待機する狙撃手に呼びかける。

『了解』

 敵の行動を逐一確認していたペクは、言われるまでもなく万全の射撃体勢をとっていた。ライフルに装填されていた弾丸を排出、薬室を空にすると、マガジンを「特殊な弾丸」の入った物に交換する。

「(能力発動中の今なら、身体を液状化しての回避は不可能――)」

 道路に沈んでいくメルクーアの背中に照準を合わせ、引き金を引いた。ライフルから発射されたのは、発信器を内蔵した粘着弾――それが敵の着ているコートに貼り付いた。銃身そのものにサプレッサー(消音器)の内蔵されたVss狙撃銃による消音効果のおかげで、相手にも気付かれていない。

 メルクーアが完全に道路に沈み込んだのを確認し、ペクは手早く装備をまとめてから、ラペリングロープを使い、ビルからの降下を開始した。武具兵器開発研究部、室長の鴨志田老人が開発した特警戦闘部隊専用ラペリング装置。

 両足で何度かビル壁面を蹴りながら無駄のない動作で素早く降りてきたペクは、音もなくアスファルトの道路に着地した。訓練された特殊部隊や自衛軍空挺団にも引けを取らないスピードと熟練度だ。

「……敵の足取りは?」

 腰に装着されたラペリング装置を取り外しながら、ペクが問いかける。

 王は携帯電話くらいの大きさの機器を取り出し、その画面を覗き込む。そこに映し出された地図上を、光点が点滅しながら動いていた。表示されているのは移動中のメルクーア――その現在地だ。

「現在ここより二百メートル離れたところを南下中。思った通り、下水道を沿って進んでやがるな」

 水路を逃走経路に用いるのは、敵の能力から考えても、なかなか理に適った手段だと言えるだろう。仮に追い付かれたとしても、液状化して水の中に逃げ込まれてしまえば、捕らえる事はほぼ不可能だ。

 そのリスクは重々承知していたペク達であったが、失踪した被害者達の安否が分からない以上、もし彼女たちがまだ生きているとすれば、可能な限り早く救出しなければならない。そのためにも「敵が逃走しようとした場合は発信機を取り付けて泳がせ、アジトを割り出す」ことを最初から念頭に置いていたのだった。

 捕らえてからの尋問では時間がかかり過ぎるし、戦闘の末に相手が死亡してしまった場合はもっと絶望的な事態になる。それに比べたら現在のこの状況は、多少マシな流れだと言えた。

 メルクーアに奪われていた拳銃グロックを回収し、エリゼが二人に歩み寄る。

「敵は発信器に気付いていない。ぼやっとしていられないわ、さっさと追跡を開始するわよ」

 そう言い放った彼女は、両足ともブーツを脱ぎ捨て、裸足になっていた。その奇麗な脚を、ペクと王が目を細めながら無言で睨み付ける。二人の視線に気づいたように、エリゼも自分の素足に目を向ける。

「な、何よ……だって片方だけブーツじゃ、走りにくいでしょ?」

 雌豹と恐れられる女刑事は、同僚達に脚をじろじろと見られ、少しだけ顔を赤くした。

 ペクと王はお互いの顔を見合せ、やるせなさそうに溜め息を吐く。

「やれやれ、どうしてうちの女子どもはこうガサツなのが多いのかね」と王。

「まぁ、今さら言っても仕方あるまい……」とペク。

 エリゼはむっと不機嫌そうな顔になった。

「さあほら、ヒトの足じろじろ見てるんじゃないわよ! 急がないと!!」

 彼女の怒鳴り声に合わせて、三人は一斉に駆け出した――。





 真っ暗な地下水路の横を走りながら、男――ヴァイヒ=メルクーアは激しく悪態を吐いていた。

「クソ忌々しい! 何なんだ、あの連中は!? 軍の特殊部隊でもあんな腕が立つ、変態じみた奴らはいなかったぞ!!」

 ライフル弾の貫通によって負傷した右手からは、血が止め処なく流れ出している。メルクーアは自身の能力“Ooze makerウーズ・メーカー”を発動し、その傷口に、〈液状化〉した自らの肉体を埋め込んだ。これを止血も兼ねた、とりあえずの応急措置とする。

 彼は走行速度を緩めずに、あれこれと思案する。

「(仮に手持ちの銃火器と弾数たまかずで応戦したとして、奴らに勝てるものか……?)」

 メルクーアはそうシミュレートしてみたが、すぐに考えるのをやめた。彼我の力量の差が分からぬほど愚かではないし、自惚れてもいない。

 格闘、銃撃戦で不利なら、能力を使って相手をドロドロに無力化してしまえば……とも思ったが、やはりその考えも浅はかなものだと考え直す。

 対象が無機物である限りは、大きさにもよるがほとんど一瞬で液状化できてしまう彼の能力、“Ooze maker”――。しかしこれが「自分以外の生物」を相手にした場合では、少しばかり勝手が違った。生きている者を液状化するには、生命力の強い個体ほど液状化までの時間がかかる、という欠点が存在するのだ。

 仮に健康体の成人をドロドロのリキッド状に変えようとすると、所要時間は全身をこね回すように触り続けて3分弱――といったところか。腕や頭などの体の一部だけなら、十数秒ほど触れていれば無力化出来るが、それでもやはり、実力で上回る相手に使用するには厳しい条件だろう。

 これらの理由からも、自らの能力がとても戦闘中――ましてや多人数相手に対人使用できる代物ではないということは、メルクーア自身が一番よく理解していた。何より敵は腕利き揃い――――あのような輩を相手に長い時間密着し触れ続け、なおかつ攻撃を受けずに立ち回るなど、とても現実的な戦法とは言えない。

 やたらすばしっこいナイフ使いの女に、優秀な腕と頭脳を持ったスナイパー。もう一人の男に至っては何を考えているのかジャパニーズ・ソードを振り回していた。意味不明だ。そんな連中の相手をしていたら、命が幾つあっても足りはしないだろう。

「おそらくは、警察関係者か……」

 信じ難いが、そう考えるより他ない。メルクーアはそう判断した。彼は軍隊時代の噂で聞いたことがあったのだ。不可解な事件や特殊な力を持った犯罪者に対抗するための法執行機関が、世界各国、秘密裏に存在しているらしいということを――。

「……河岸かしを変えるか。……いや、最悪この国から出た方がいいかもしれんな」

 この区域の警察は無能な上に汚職にまみれていた。そのため、彼は絶好の狩場として四年にも渡りS区で神出鬼没の犯行を繰り返してきたのだ。しかしそれも、あのような戦闘のプロが出張ってきたとなれば話は別だ。戒厳令が敷かれ警戒態勢が行き渡る前に、さっさとこの街からおさらばした方がいいだろう。

「だがその前に――」

 メルクーアは舌舐めずりをしながら、厭らしい笑みを浮かべる。

「――まずは大事なコレクションを回収しなくては、な……」





 ――ペク、エリゼ、王の三人は受信機モニターに映されるメルクーアの動きを追って、暗闇の中を疾走していた。

 敵の衣服に取り付けられた発信器から電波を受信し、画面上に映された地図に光点として居場所が示される。王がその受信機を手に持ち先頭を走る傍ら、ペクは感圧式タッチパネルのタブレットPCを忙しなく操作していた。

「……ふむ、出たぞ。敵の情報だ」

 液晶画面にメルクーアの顔写真が映し出される。

「一体どこから拾って来たの?」とエリゼ。

「昔作っておいたコネクションが役に立った。国外軍部のデータベースでヒットしたようだ」

 ペクは続けて、現在追跡中の異能者の経歴を読み上げた。

「ヴァイヒ=メルクーア、享年二十八歳。現在生きているとするなら三十二歳か。二十一歳からの七年間、職業軍人として某連邦共和国軍での従軍経験あり。最終階級は伍長。出世しなかったのは恐らく、最前線から離れたくなかったからだろうな……生粋の戦争屋だ。その証拠に、戦地での捕虜虐待、非戦闘民への暴行など、素行不良により度々査問に掛けられている。結果、精神異常と見なされ除隊。強制送還のために監禁されていた際、上官二名と兵士三名を殺害、脱走しようとしたところを射殺される……――ぞっとしない経歴だな」

 読み上げられた殺人者の履歴書に対し、エリゼが不機嫌そうに眉をひそめた。

「で、なんでその『死人』がこんな島国にやって来てまで女の子攫ってるのよ」

「待ってろ、今調べている…………ああ、正確には射殺ではなく、逃亡中に撃たれて、崖から川に落ちたらしい。死体は見つからなかったため、軍はこれを死亡として処理した。命の危機に晒された特殊な状況下――――恐らく、奴の異能が発現したのはこの時だと考えるのが妥当だろうな」

 それを聞いて、王が「ふん」と鼻息を鳴らした。

「大方、逃げ延びた後はマフィアの密輸船にでも便乗してこの国にやって来たんだろうよ。その後は暴力団の用心棒だとか武器の密輸入の仲介だとか、日陰者街道まっしぐらってとこだろ。鬼が出るか蛇が出るか――ったく、今回もとんでもないハズレを引いちまったもんだ」

 ぼやきながらも、感付かれない程度に距離を保ちつつ追跡を続けていると、やがて地図上の光点が一つ所に留まって動かなくなった。どうやら、ついにメルクーアのアジトを突き止める事が出来たようだ。

「ここか――」

 王が見上げたのは、四階建ての小ぢんまりとしたオフィスビル。

 ペクはGPSの位置情報からすぐに建物の番地と名称を割り出し、PCを使い検索を開始した。

「ふむ、関東の広域指定暴力団が傘下組織に闇金融の事務所として使わせていた物件だな。その金融会社自体は捜査四課マルボウの一斉検挙で摘発されて、結局、組からはトカゲの尻尾切りされてしまったらしい。それ以降正式に人の出入りした記録は見当たらない。おそらくは無人になっているのをいいことに、メルクーアが住み付いたのだろうな……」

 出てきた情報を淡々とした口調で述べていく。

「建物の見取り図はある?」エリゼが彼の隣に立ち、薄い小型のタブレットPCを覗き込んだ。

「今、入手したところだ。どうやら地下室があるらしい。通常なら袋の鼠になってしまうが、メルクーアの能力を考えるなら、地下水路の近いそこを隠れ家としている可能性が一番高い」

 ペクはそう言って、一拍置いてから

「――――俺が行こう」

と、覚悟を決めたように口を開いた。

 そのあと同僚二人とそれぞれ目を見合せ、こう続けた。

「二人は念のため、下水に降りてこのビルから繋がっている二箇所の排水口を見張っていてくれないか? それから、捜査本部へ至急この場所を知らせるのと、増援の手配を要請しておいてくれ」

「「了解」」

 エリゼも王も異議を唱えなかった。ペクが戦場の狙撃手としての経験から、特警隊員達の中でもずば抜けて隠密行動に長けていることを知っていたからだ。それに、見取り図で確認したところ、地下室への通路は狭く、地下室自体もかなり手狭であった。三人連れ立ってぞろぞろと突入する訳にもいかないだろう。

 刑事達はそれぞれ無言でうなずくと、己の持ち場に就くために素早く離散した。

 ペクは建物の裏手へと回った。おそらくは地元の不良達の仕業か、既に割られていた窓ガラスを発見すると、そこから建物の中に侵入した。

 追跡信号受信装置のモニタを確認すると、メルクーアの存在を示す光点は、既に画面上から消えていた。発信器の存在は、相手に気付かれたと考えたほうがいいだろう。

「敵はゲル状の躰でどんな場所にも潜り込める……奇襲を仕掛けるポイントが多い屋内では更なる注意が必要だな」

 水道管、通気ダクト、雨どい、果てはコンクリートのひび割れまで――〈液状化〉したメルクーアはどこから襲い掛かってくるのか、皆目見当も付かない。しかし、ペクには慎重になりすぎて足踏みしているような暇も与えられない。アジトまで突き止められたことを知った敵が、追い詰められてどんな行動に出るか分からないのだ。被害者奪回のためには、素早い作戦行動を要求される――。

 こういった、曲がり角コーナーや設置物の多い建築物の中では、銃身の長いライフルは使いづらい。ペクは動きやすさを重視し、装備を狙撃銃ヴィントレスから、ロングコートの内に隠してあった室内戦闘用のサブマシンガンに変更する。SMG――いわゆるサブマシンガンというカテゴリの銃器で連射できるのはあくまでも拳銃弾と共通のものであり、ライフル弾のような射程や貫通力は無い。だが、今の状況ならこの武装でもメルクーアに対して充分有効だと彼は判断する。相手は際立った防弾装備などは着用していなかった。防御面に関してはよほど〈液状化〉の異能に自信があるのだろう。

 ペクはそのまま前方や死角を警戒しつつ、足音を立てずに地下室への入口へと進んで行った――。





(【下】に続く――)



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