『咎負い人の十字架』【3】



【12月24日(夜)】


 〝預言〟に示された儀式――それを執り行う日は、もう明日に迫っていた。

 夜の繁華街を連れ立って歩く三人の聖職者たちも、そのことを重々理解していた。焦っているのか、それとも慣れない異国の地を踏んでいるせいか、彼らの歩みはどこかぎこちなかった。隙もなく、しっかりとした足取りで、背筋もぴんとしている。だが、やはり何となく落着きがないように感じられるのだ。

 それはその男たちの格好のせいかもしれない。誰がどう見ても、彼らのいでたちがこの街においては異質なものであることに、疑いの余地はなかったのだ――。

 司祭服を纏った老人が先頭を歩いている。いかにも聖職者らしく、大事そうに立派な『聖典』を脇に抱えていた。眼鏡をかけたその老神父は、生え際の後退した白髪まじりの髪を後ろに撫でつけており、顔にはこれまでの人生の苦悩を記録するため付けられたかのような皺が、深く深く刻まれていた。深刻――というのはこういうことを言うのだろう。見た目はどう見ても短身痩躯の非力な老人だったが、背筋だけはとても年寄りとは思えないほど真っ直ぐに伸びていた。動きもきびきびしている。

 そしてその老人の後ろに並んで、長身の男と、中背の若者が歩いている。老神父の付き人のようにも見えるその二人の男は、やたらとボタンの多い黒いロングコートのような礼服で身を包んでいた。それはキャソックと呼ばれる祭服で、特にカトリックの神父がよく着用するものだ。

 長身の男は黒髪をポニーテールに結っており、小さな丸い黒眼鏡で視線を隠していた。体つきも逞しく、動作も表情も武骨な印象を受ける。

 それに対し中背の若者はプラチナブロンドの髪を優雅になびかせ、同じく丸いサングラスを少しずらし気味にかけていた。そこから切れ長の鋭い目が覗く。

 その二人の若い神父は、常に周囲を警戒しながら気を張り巡らせているようだった。まるで要人護衛の任務に就いているシークレットサービスのようだ。

 ――はっきり言って、場違いなのである。色とりどりのネオンが煌き、飲食店や他いかがわしい店も並んでいるその下品な通りに、仰々しく連れ立って歩く三人組の神職というのは、どう考えても似つかわしくない光景だった。神父達の異様な雰囲気に気圧されたのか、通りは混雑しているにもかかわらず、人垣は奇麗に割れ、彼らは何の障害もなく道を歩くことができた。まるで聖人の祈りで真っ二つに割れた――海の底を歩くように。


「しかし、相変わらず人間が多すぎるな。どこもかしこも人間だらけだ――気持ちが悪い。主はおっしゃった『生めよ、ふえよ、地に満ちよ――』それがこのざまです。世界はもう一度洪水に洗われて最初からやり直すべきだとは思いませんかね、師父?」

 長身の男が辺りをきょろきょろと見回しながら、老神父に語りかけた。彼らが目立っている一番の理由は、ひょっとするとこの男のせいかもしれない。その長身は群衆に紛れても頭一つ半は抜きんでているし、何より彼の背負った大きな「棺桶」が一層人目を引いていた。

 もちろんそのまま担ぐわけにもいかないので、特殊な帯のようなものを巻いて固定し、それを肩にかけて運んでいる。その棺桶は木製だが非常に丈夫そうで、繊細な彫刻と艶のある黒塗りが施されていた。そしてちょっとやそっと蹴り飛ばしたくらいでは開きそうにもない頑丈そうな蓋には、大きく金色の十字架が描かれている。中身が入っていなくともかなりの重量がありそうだったが、ポニーテールの神父はそれを苦もなく背負っていた。

屋古部ヤコベ――相変わらず発言が過激ですね、あなたはと言う人は――」

 隣を歩いていたもうひとりの若い男が溜め息混じりにそう言った。長身の男に比べて、どこか落ち着いた雰囲気がある。ヤコベと呼ばれた長身の神父は、「ああん?」と声を荒げた。

「おい叉井マタイ――お前さんには言ってねえだろうが、俺は師父に尋ねたんだよ。いいからいつもみたいに黙ってお祈りでもしてやがれ」

 プラチナブロンドの青年は、どうやらマタイという名らしい。屋古部の暴言に対しても、取り澄ました顔をしている。叉井は口の悪い相棒を無視して、前方を歩く老神父に声を掛けた。

「先生からも言って差し上げて下さい。神のしもべたる我々の同胞であるというのに、この汚らわしい言葉遣い――まったく嘆かわしいことこの上ありません」

「師父」、「先生」などと呼ばれているその老司祭は、歩幅を緩めることも振り返ることもせず、あくまでもきびきびと返事をした。

「屋古部、粛清は神の決めることで、我々はただ諾々とそれに従うのみ。滅多なことは口にするものではない。叉井、お主もだ。我らは志を――いや、神を同じくする兄弟なのだから、助け合い、愛し合わなくてはならないと常に言っておろう」

 老人はきびきびとした口調ではあったが、その表情はどこか柔和だった。

「いえ、先に暴言を吐いたのは屋古部の方なのですがね。まあ、分かりましたよ……主よ、私も彼を赦します故、どうかお怒りなさりませぬよう――エイメン」

 叉井が祈りながら十字を切るのを、屋古部はつまらなさそうに見物していた。「けっ」と毒づいたあとに話題を変えた。

「まあしかし、遊夛の野郎がとっ捕まったってのには笑ってしまいましたがね。あの阿呆、こんな辺鄙な島国の警察に捕まるくらいなんですから、存外大したことなかった――ってことですな」

 それを聞いて、再び叉井が諭すように語りかける。

「屋古部、遊夛は油断していたのです。彼の行う〝秘蹟〟は確かに強力でした。だからこそ彼も慢心した。そこに付け込まれたのです。しかも、それだけではありません。この国の特殊警察――対異能者用の部隊だということですが、なかなかに優秀ではありますよ。いくら油断していたとはいえ、我ら『十二使徒』の筆頭を生け捕りに出来たことも納得できます」

 ゆっくり噛んで含めるように言い聞かせるその口調に、屋古部はさらに不機嫌になった。

「だからお前さんには話しかけてねえっつの。そもそもお前ら全員、遊夛のヘタレ野郎を過大評価し過ぎだろ。俺とお前と、それからあともう一人くらい使徒がいれば、奴を討ち取ることだって可能だろうがよ」

「間違いだとは言いませんが。遊夛も彼の能力も、決して無敵という訳ではありませんからね――」叉井はずれた黒眼鏡を指で押し上げながら、若干控え目に同意した。

「しかし、遊夛も愚かと言えば愚かです。『聖骸外套』の能力を使っていれば、今頃逃げ出すことくらいは出来ていたかもしれなというのに……」

 それを聞いた屋古部が、鼻で嗤った。

「一回死んだフリして、三日後また生き返って脱出――ってか? それに、蘇生っていっても、『聖骸布』の回復速度でリカバリー可能な程度のダメージで死体が残っている場合に限る――だからな。焼却処分されたらどうしようもねえし、あいつにそんな危険な賭けを冒す度胸なんてねえだろ。あの阿呆、今頃俺達が助けに来ることを願って、警察んとこでガタガタ震えてるはずだ」

 どうやら遊夛の着込む紅い『聖骸外套』の能力とは、使用者が着用したままの状態で死に至った場合、肉体の損壊や病状を徐々に回復させながら三日後に蘇生させる――逆に言えば、三日程度で回復できる状態の死体のみ蘇生が可能――というものらしい。

「しかし――確かこの国では、異能犯罪者の死体は防腐処理を施された後、一定期間安置されてから研究所に回されるのでしょう? 遊夛もその事は知っていたかと思いますがね……」

 叉井のその言葉に、屋古部はさらに嫌な顔をした。

「そもそもな、あんな信仰心の薄い野郎が着てるんじゃ、いくら原初の鍛冶屋の末裔が、本物の聖骸布を編み込んで造った有難い礼装といえども、効果を発揮してはくれんだろうに。結局奴は、俺達『十二使徒』の筆頭にしろ、今回の任務にしろ、役者不足だったっていうことだよ」

 屋古部が「ふん」と鼻息荒く締めくくった。

 叉井は、そうですかね、と若干控えめな反論をする。どうやら同意も反論も、同じくらい控え目にする男のようだ。

「ですが、『聖域』の外で完全な〝秘跡〟を行えるのは、我ら使徒の中でも背信者の名を背負う遊夛ひとりのみ。そのうえ腕も一番立つのですから、妥当な人選だったといえましょう。なにしろ、彼を派遣するよう司教連に進言したのは、他ならぬ先生だったのですから――」

 それに対し、屋古部も、「確かにな」と同意した。先生と呼ばれる老司祭は、どうやらこの二人からは相当慕われ、そして一目置かれているらしい。

「トバルカインの爺さんの『簡易聖域キット』が完成さえすれば、俺らも心おきなく『聖域』から出て戦闘できるんだがなぁ……」溜め息の後、屋古部はさらに続ける。

「他に現時点で、聖域外で〝秘蹟〟を発揮できる奴らと言ったら、二人組以上での行動が前提だがヘテル――いや、どんな任務でもあいつと組むのだけは絶対に御免だがな……。あとは能力の特性から言ってトーマスくらいか。どっちも重要任務を任せるには、性格に難アリだ」

「概ね同意すべき内容だと言えましょう。あとは例外的に、欠員使徒の町谷マチヤが該当しますか――もっとも、彼の〝秘跡〟では使い勝手が悪すぎますがね……」

 あいつは遊夛以上のヘタレだ、使えねえよ――と屋古部が嘲笑した。仲間の悪口を言う屋古部に憐憫の視線を送りつつ、叉井は「彼を赦したまえ」と再び十字を切った。そして自分たちを導くべく寡黙に前を歩む老司祭の背中に語りかける。

「それはともかく、このタイミングで新たな神託が下ったことは幸運でした。おかげで敵対組織や裏切り者達を出し抜いて本物の『預言の子』を手に入れる事が出来ます。――して先生、目的地にはあとどれくらいで到着いたしますのか、お教え頂けませんか?」

 叉井はあくまでも丁寧な物腰を崩さない。老司祭は目を瞑って立ち止まった。落ち着いた声でただ一言、

「うむ。どうやら迷ったようだな――」

と言った。

「あぁ~……まあ、高いビルが多いですしなぁ。しかも、どれもこれも似たような建物ばかりときたもんです。これは仕方ないですよ」

 特に気を遣っている様子もなく、敬愛のこもった口調で「本当に仕方ない」というように屋古部が言った。辺りを見回してみると、どうやら喋りながら歩いていているうちに、人気の少ない道に入ってしまったようだった。

 屋古部は巣のまわりを警戒するプレーリードッグのように背伸びをしながら、きょろきょろと視線を巡らせた。

 奥の方から一人、仕事帰りと思しきサラリーマン風の男が歩いてくるのが見える。屋古部は大きな棺を背負っていたので、代わりに叉井がにこやかな笑みを浮かべながら駆け寄った。

「ああ、ちょうどよかった、そこの人――」

 サラリーマンは夜の街を徘徊する神父たちに一瞬だけ驚きの表情を見せたものの、その敵意のない柔らかな笑みに警戒心を解いたようだった。

「今晩は――お忙しいところ呼び止めてしまい、大変失礼致します。わたくしどもは、各地の病院を回って、無償で患者さまたちに主のお言葉を授けて回っている流浪の牧師と神父にございます」

「は、はぁ――」相手は何が何だか、という顔である。そういった慈善事業(おそらく布教活動も兼ねているのだろうが)をしている神父が居ても、まあ、おかしくはないのかもしれない。

「しかし、大変お恥ずかしいことなのですが、この辺りの土地勘もなく、ものの見事に迷ってしまいまして――今はむしろわたくしどものほうが、さながら迷える仔羊と言ったところです」叉井は照れたように頭を掻いた。

 男も笑顔で返す。

「はは。いえ、この辺は入り組んでて、よく通勤路に使ってる僕でも迷いそうになりますから――」

「して、この辺りに閉鎖せれている教会と、それから大きな病院があったと思うのですが、貴方様はご存知ありませんでしょうか――?」

 男はネクタイをいじりながら、少しの間だけ考え事をしているかのように顔をしかめた。思い出そうとしてくれているのだろう。

「――ああ、はい。あります、あります!」そう言って男は、教会と病院、両方の道順を分かりやすく丁寧に説明した後、さらにメモに簡単な地図まで書いて渡してくれた。

「これはこれはご丁寧に――御慈悲に大変感謝致します。主は喜ばれます、どうかこれからも、貴方が全き者であらんことを――――」

 叉井はかしずくように男の前にひざまずき、こうべを垂れながらうやうやしく十字を切った。

 これには流石に男も半歩身を引いてしまった。道を教えただけでそんな大げさな――と驚いているのだろう。男は自らもしゃがんで、困ったようにそれに応えた。

「いえいえ、こ、困った時はお互い様ですよ。どうか頭を上げて下さい。正直に言いますと、神に仕えている方のお役に立てるなんて、なんだかこちらにまで御利益がありそうだ……なんて下心もありましたし。――――ねえ、神父さん」

 ぴくりと叉井が反応する。

 屋古部はその様子を見て、「あちゃぁ、またか」と額に手を当てた。やっちまったなぁ、という具合である。

 サラリーマンの男も、先ほどまでと空気が変わってしまったことを、直感で理解する。叉井は顔を俯かせているため、その表情が見えない。そこが余計に恐怖感を煽るところでもあっただろう。


「貴方、今――何とおっしゃいました?」


「え――?」男は目の前の神父の声色が急変したことに、少しばかり狼狽した。自分が何か、まずいことを言ったのだろうか――。

「あ、ああ! 下心なんて、良くないですよね。すみません、神父さん。あまり信心深くないもので、つい失礼なことを口走ってしまったかと……。気に障られたのなら謝ります」

「違います、その後ですよ――というか貴方、今また言いましたね?」

「え、あ……――――神父さん?」

「私を神父と呼ぶなッ!!!!!!」

 叉井は獰猛な動きで立ち上がると、サラリーマンの頸を片手で掴み、そのまま勢いよく壁に叩き付けた。物凄い音を立ててコンクリートにひびが入った。相手は自分が何をされたのか、全く理解できていなかっただろう。

「どこをどう見たら私が神父に見えるのですか。私はプロテスタントの牧師です。あんなカトリックの傲岸不遜な権威主義者どもと一緒にしないで頂きたい。使徒の教えを歪め、解釈を押しつけ、ふんぞり返る救いようのない愚か者どもだ。そのくせことあるたびに教会教会と、教会がなければまるで何も出来ない。本当に虫唾が走ります」

 叉井はぶつぶつと文句を言いながら、執拗に男を殴り続ける。一定の力、そして一定の間隔を守りながら、均一に執拗に、強力な打撃を与え続ける。意識があるのかないのか、相手はほとんど無抵抗だった。

「おい、いい加減にしねえか――」見かねた屋古部が止めに入った。

 なされるがままサンドバッグと化していた男は、原型の留まっていない顔を上げ、ゆっくりと屋古部のほうを見た。きっと朦朧とした意識の中で、その長身の神父に感謝したことだろう。しかし、所々切れて腫れ上がった唇からは「うぅ……」という呻き声が漏れただけだった。

 屋古部はそんな哀れな被害者を叉井から引き剥がすと、どうでもよさげに路傍に放り捨てた。

「――警察沙汰になったら面倒だっていつも言ってるだろうが」

 そしてさらに捲くし立てる。

「そもそもさっきのお前の言葉、ことごとく聞き捨てならんな。カトリックを愚弄するんじゃねえよ――この、根暗なプロテスタントの聖典主義者どもが。お前らみたいな信仰の個人主義が溢れかえったら、解釈もへったくれも無くなっちまう。黙って部屋に籠って聖典読んでるだけなら、誰も迷惑被らずに済むんだがな……俺らに喧嘩売ってんのか?」

 到底神父とは思えないような台詞である。屋古部は静かに憤る牧師の腕を掴み、握り潰すかのような勢いで握力を込めた。

 叉井も全く動じずに、青筋の浮かんだ神父の顔を冷たく睨みつけた。

「私と貴方の実力は拮抗しています、三日三晩闘っても決着は付きませんよ。どうしてもというのであれば、ご希望に沿って差し上げてもいいのですが――」

 叉井が音もなく動こうとしたその瞬間――


「お主達、争いはやめないか――」


 老司祭の声が割って入った。

 それは怒気も殺気もない、とても穏やかな声だった。その声を聞いて、神父と牧師は動きを止めた。まるで叱られた子供のようにしゅんとして、お互い気まずそうに距離を取った。

「我々の間に宗派の諍いを持ち込んではならぬと、硬く戒律に定められておろう。目的のため、我らは何よりも固く結ばれた隣人であり、友人であり、そして家族であらねばならぬのだ」

 《十字背負う者達の結社》には、正統派から異端まで、様々な宗派のクルス教徒が存在する。そのため、今彼が言ったように、信徒の足並みをそろえる事に関しては教団幹部達も非常に神経を遣い、執着している。もし教団内での大規模な分裂、派閥争いなどがあれば、組織自体が存続の危機に直結する。この規律は末端や個人に至るまで徹底されており、例えば本来プロテスタントでは十字を切る宗派はほとんどないのだが、元牧師である叉井が頻繁に十字を切るのも、老神父が述べたような組織の方針に従ってのことであったのだ。

 老司祭は二人を交互に見つめ、黙って頷くと、そのまま放り捨てられた男の方へ歩み寄った。地べたを這うようにのろのろとその場から逃げようとしていた男の先に回り込み、目の前にしゃがみ込んだ。

「いやはや、申し訳ない。弟子たちの過ちは全て師である私の不徳が致すところ――どうか彼らを責めないでやって下さらないか」

 老齢の神父は笑顔で―――そう、笑顔でそう言ったのだ。

 男は瞬間に悟った。

 この老人は、あの若い二人よりもずっと、話が通じない――と。

 擦り傷、打撲などのちょっとした怪我などではなく、全治数週間はかかりそうな重傷なのだ。謝る以前に、即刻刑事事件である。申し訳も何もあったものではない。しかも傷を負わせたのは、老人の言葉を借りれば、他ならぬ彼の弟子なのである。それなのに平然と――そしてにこやか接してくる、この人当たりのいい好々爺のような神父を、男は恐怖した――。

「急ぎの用ゆえ、我々はこれで失礼します。どうか貴方に神の御慈悲と御加護があらんことを――」

 十字を切りながらそう言うと、老司祭はそこにもう何の未練もないかのように立ち上がった。

 男はすがるように手を伸ばす。

 慈悲も加護も、どうでもいい。せめて、せめて救急車だけでも呼んでくれまいか――。

 そんな事を考えながら、男は薄れゆく意識の中で、三人の聖職者たちが暗がりの道に去っていくのを黙って見送ることしかできなかった――。





【12月25日――儀式の日】


 それから遊夛の言っていた儀式の日まで、カインと王、そしてほかの特警隊員達はそれぞれ持ち場につき、各々の仕事をこなした。

 どうやら警護中の病院や、〝印〟の付けられた双子の産まれた家には、何度か武装集団の襲撃があったようだが、それらはすべて特警隊員達の手によって防がれた。逮捕できた襲撃犯達は、どの連中も《十字背負う者達の結社》に敵対する泡沫宗教の過激派ども――がそのほとんどだったようだ。

 遊夛の話では、こういった連中に機密情報を流す裏切り者達が、結社の中にも多数存在するのだという話だった。

 そんな不穏な空気の漂う中、いよいよ儀式の日が訪れる――。


 警備は交代制の為、カインと王は部署で待機していた。幸い最近は〝喰い荒し〟も〝散らかし屋〟も鳴りをひそめていてくれたので、どちらの事件も継続的な捜査に割かれる要員を除けば、隊員達は比較的自由に動くことができた。

 カインは所用を済ませ、署内の廊下を刑事部屋に向かって歩いているところだ。ちょうど、大事の前に銃のメンテナンスをしに『武具兵器管理部』まで足を運び、その部署の主任である、特警一の変人として名高い鴨志田老人のミリタリートークにひたすら付き合わされた後だった。

 ついでに今まで戦闘で使ってきた鴨志田製小型炸裂弾のモニター期間が終了したので、使い勝手や改良点、製品不良の割合などを報告し、残りの炸裂弾を返却してきたところだった。

「なかなか便利でしたが、起爆のタイミングにズレがあったり、不発だった物もありましたよ」とカインが報告すると、鴨志田老人は「あ、やっぱりねえ」などと言って、なんでもなさそうにそれを受け取ったもので、カインは改めて、このえびす顔の温厚そうな老人の正常性を疑う事になったわけだが――。


 それから自分の部署までの帰り道、カインは廊下を歩きながら考え事をしていた。遊夛の言っていたことについてだ。

 ――処女懐胎。王が馬鹿馬鹿しいと一笑に付したように、カインにとってもやはりそれは現実離れし過ぎているように思えた。通常なら妄言の類として受け流すべきだろう。しかし、カインにはどうしてもそのワードを頭から追い出すことが出来なかった。

 そんな事を考えながら歩いているうちに、彼はやがて、自分もよく世話になっている医務室の前に差し掛かった。明かりが付いているので、中にはあの子がいるのだろう――と、カインはドアの前でふと立ち止まる。

 ……少し、顔を出していくかな。

 そう思って扉をノックした。中から返事はなかったが、鍵の掛かっている様子もなく、「使用中」の札も掛かっていない。彼は扉を横に引き、部屋に入った。

 カインの思ったとおり、須山すやま沙帆さほはちゃんと部屋の中に居た。

 奥に置かれた机の前に座って、熱心に本を読んでいる。椅子の背には制服の上着を掛けており、その脱いだ制服の代わりに、白衣をタートルネックのシャツの上に羽織っていた。制服着用自由である特警において、いつも真面目に官給品の制服を着用しているのは、この沙帆と、あとは「部長」くらいのものである。

 どうやら彼女はかなり集中しているようだった。真剣に本を見つめながら、手に持ったペンで何やら色々とノートに書き写している。おそらくノックの音にも気が付かなかったのだろう。肩まで伸びた栗色のセミロングの髪――そこから覗く真摯な横顔をしばらくの間眺めていたカインだったが、やがて我に返って声をかけた。

「やあ沙帆ちゃん、ご苦労さま――」

 沙帆はようやく闖入者の存在に気が付き、顔を上げた。

「あ――カインさん」

 驚いたような恥ずかしいような顔で笑ったあと、「いつから居たんですか、声くらいかけて下さいよ――」と続けた。

「今入ってきたとこだけど……いや、ノックはしたんだけどね」

 カインがそう言って力なく微笑み返す。

「ああっ、ごめんなさいっ。わたしったら、本に夢中で気が付かなかったみたいで!」

「いや、いいんだよ。というか、むしろ俺のほうが沙帆ちゃんの邪魔しちゃったんじゃないかな? 集中してたところ、悪かったね」

 沙帆は「いえいえ」と嬉しそうな顔で本を閉じた。

「わたしもちょうど、ひと休みしようと思っていたところですから」

 そのあと彼女はいつもの癖で、対面者の身体を点検するように眺めた。不安そうな表情がちらりと覗く。

「カインさん、どこか怪我でもしたんですか――?」

「いや、そういうわけじゃないんだ。――ただ、今夜の出動に備えて、我らが守護天使のお顔を拝んでおくのも縁起がいいかな、と思ってね」

 特警内でも唯一の『異能者』である沙帆には、特別な力がある。それは他人のどんな怪我――それがどんなに重症でも、たちどころに元通りに治してしまう〈治癒能力〉だ。沙帆の持つこの力のため特警隊員達は皆、彼女のことを蔭では「女神」や「守護天使」などと呼んで、常日頃から感謝している。ただ、彼女自身はそのように呼ばれるのは苦手なようだった。

「もう、からかわないで下さいよぅ」

 沙帆は照れたようにぷいと顔をそむけた。そしてすっと立ち上がる。

「そうだカインさん、時間あるようでしたらお茶でも飲んで行かれます? 今からでよければ淹れますけど……」

「じゃあ、せっかくだから頂こうかな」

 カインはその辺にあった丸椅子を引き寄せて、机からちょっと離れた所に腰を下ろした。

 沙帆が紅茶を淹れている間も、二人は当たり障りのない世間話や、カインは王やアキラについての愚痴などをこぼしたりもした。やがてカップに熱い紅茶が注がれると、沙帆はそれと一緒にお茶請けのマフィンを差し出した。

「この前、ひとみさんと一緒に焼いたんですけど、作りすぎちゃって。よければ食べて下さい」

 ヒトミというのは、確か王の妻の名前だったとカインは記憶していた。沙帆が王の細君と仲がいいことは、カインもよく知っていることだった。

「ああ、ありがとう。ちょうど小腹が空いてたところなんだ」

 カインは有り難くカップとマフィンを受け取った。もっとも、彼の場合小腹は常に空いていると言ったほうが正しいかもしれないが(デスクワーク中も常に何かを齧っていないと落ち着かない彼は、王や他のメンバーからは密かに「小動物」などと揶揄われているほどだ)。

 こぼさないよう慎重にマフィンを食べながら、紅茶を啜る。そこでカインは、ふと沙帆の机の上に置かれた数冊の本に目が留った。

「そういえば、何の勉強してたの? 熱心に本を読んでいたみたいだけど」

 彼女がいつも、仕事をしていない時は難しそうな医学関係の本を読んでいるのをカインは知っていたので、気になって尋ねてみた。

「あ――これですね」沙帆が分厚い本を手に取った。「遺伝子学と、あとは生殖医療などについての医学書で。私の分野とは違うんですけど、ちょっと気になったんで調べていたんですよ」

 カインがへえ、と感心する。

「実は、わたしのお世話になった異能者保護施設の先生が、先月、長い不妊治療に成功して、やっと赤ちゃんが産まれたんだよって、教えてくれて。写真も見せてくれたんですけど、すっごく可愛かったんですよ、赤ちゃん!」

「そっか、それは良かったね。おめでたいよね……」

「はい!」と沙帆は笑顔で返す。

 カインは、祝福されて生まれてきた命と、それを喜ぶ人たちがいてくれることの温かさの一方で、今まさに自分達が関わっている事件では赤子を利用しようと陰謀が渦巻いていることを思い、胸が締め付けられるように苦しくなる。

「それでわたし、先生の嬉しそうな顔を見て、思ったんです。異能ばかりに頼るのじゃなくて、自分自身がもっといろんな場所で役に立てたらいいなって。そのためには、知識ってどれだけあっても足りないんだな……って」

 自分より若い女の子が、そのように考えて、そして実際行動も起こしているということに、カインは勇気づけられ、何故か、救われたような気さえした。

 自分達のようなこんな仕事でも、少しでも前に進もうと思えるのはきっと、この子みたいな人たちがいてくれるからなんだろうな――。そう思ったカインの口からは自然と、

「ありがとう」

 という言葉がこぼれ落ちていた。「あっ」カインがはっと赤面するも時すでに遅く、沙帆もドキッとした様子で「えっ」と驚いた顔をした。

「わ、わたしはそんな! お礼を言われるようなことなんて何も……!! ご、ごめんなさい! こんな話、まだ何もできもしないのに、人に話すようなことじゃなかったですよね……」

 沙帆も赤くなりながら体ごとカインから顔を背け、慌てて話題を変える。

「あ、そうだ、わたしの読んでいた本の話なんですけどね……!」

 それから彼女は、気持ちを落ち着けるためか、はたまた気恥ずかしさを誤魔化すためか、自分の読んでいた医学書の内容を、かいつまんで分りやすくカインに説明し始めた。

 どうしても専門用語などが出てくるため、カインにとっては半分ほどしか内容を把握することができなかったのだが、熱心に喋っている沙帆の顔を眺めているのも悪くはないとも思ったので、適度に相槌を打ちながら話を聴いていた。

 そして沙帆が人工授精についての説明を始めた時、カインはふとあることに思い当たった。

「人工授精って言ったら、あんまり詳しくは知らないけど……あの顕微鏡で観察しながらシャーレの中で卵子と精子を結合させるっていう方法かな?」

 その場合は体外受精、顕微授精って言いますね――と沙帆は言った。

「試験管内受精――なんて呼ばれたりもしてますけど、採卵した卵子を培養液にかけて、それから男性から採取した精子と接触させて人為的に受精させるんです。特にICSI(細胞内精子注入法)によってガラス管で直接卵子に精子を注入するのを顕微授精というんですよ。そのあとに受精が確認できたら、お母さんの子宮に戻してあげて、着床させるんです」

 カインは沙帆の話を聞いているのかいないのか、真剣な顔をして「そうか」とつぶやいた。

「カインさん、どうかされました……?」

 沙帆には何のことだかさっぱり解らない。そこへさらに追い討ちをかけるように、カインが弾むような笑顔で沙帆の手をギュッと握った。

「それだよ! そうか、なんで気が付かなかったんだろう……。沙帆ちゃん、とにかくありがとう!!」

 そう叫んで立ち上がると、両手で包んだ沙帆の華奢な手を、大げさな握手のように勢いよくぶんぶんと振った。そのまま慌てて部屋を出ようとしたカインは、思い出したように振り返って、カップに残った紅茶を飲み干すと、食べかけのマフィンを口に放り込んで、「じゃあまた!」とだけ言い残して風のように医務室を出て行ってしまった。

 唖然とする沙帆。

 しばらくの間ぽかんとしていたが、ようやく我に返ったところで、彼女はカインに握られた手を見つめた。

「カインさんったら、子供みたい――」

 そう言って困ったように笑う彼女の顔は、どこか嬉しそうだった。





 ――都立大学附属総合研究病院。そこは様々な医療分野の研究設備が据え置かれ学究の徒が集う、都内有数の巨大な病院施設だった。

 その研究棟から出てきた二人の神父と牧師は、それぞれ産まれたばかりの双子の一方を抱きかかえていた。

「預言はやはり本当だったのですね」――黒眼鏡にかかったプラチナブロンドの髪を掻きのけ、牧師、叉井が言う。

「生け贄はしっかり用意されていた。『主の山に備えあり』、だな」――返り血を浴びた長身の神父、屋古部が笑う。

「さあ、儀式のときまでこの子たちを守り通さなければなりません。先生のもとへ急ぎましょう」

 医師達を惨殺し、母親から赤子を奪い上げ――彼らは目的の〝預言の子ら〟を手に入れた。惨劇はまだ外部にも漏れておらず、病院内にも知れ渡ってはいない。それでも二人はくこの場を離れるため、急ぎ足で病院の門へと向かっていた。なにより泣きじゃくる赤子が煩くてしょうがない。この状態で警察にでも見つかったら面倒である。

 黒衣の聖職者たちは、嬰児を抱きながら颯爽と夜の闇へと消えて行った。



 ――数十分後、カインと王が大学附属病院に到着したのは、事件が発覚し院内が騒がしくなり始めた頃だった。

「どうやら、お前の予想が当たったみたいだな……カイン」

「こうなる前に阻止できなかったのが悔やまれますがね――」

 遊夛の属するテロ教団が狙っていた本物の〝予言の子ら〟とは、まさに聖誕祭の今日、この病院で出産予定だった双子のことだったのだ。

 既に産まれてきていた子供達にも〝印〟が付けられていたことにとらわれ過ぎて、現時点で出産を控えている女性の保護にまで考えが至らなかった――カインと王は自分たちの落ち度に自責の念を感じないでは居られなかった。

 もっとも、先に産まれてきていた偽の〝預言の子〟達にしても、「本物」と勘違いした別組織や宗教団体から狙われていたことには変わりはなかったので、どのみち護衛は外せなかったわけだが。

「ようやく、答えに辿り着けたというのに……!」

 カインがこれまでに特警の捜査で探し出された七組の双子を「偽物」だと看破し、そしてここ――都立大学付属総合研究病院で産まれてくる「本物」の〝預言の子ら〟を見つけることができたのは、沙帆と牧俊のおかげだった。

 彼は沙帆の話を聞いてから、遊夛の言っていた「処女懐胎」が、体外受精によってもたらされた人工的なものなのではないか――という発想に至ったのである。

 急ぎ調べてみたのだが、護衛対象であった双子達の中には、体外受精による妊娠の例はなく、皆その条件には当てはまらなかった。そこでカインは、並外れた情報収集能力を持つ天才少年ハッカー牧俊に、「現在体外受精により双子を身籠っており、出産予定日の近い妊婦の居る病院」を調べてもらうよう頼んだのだった。

 ――結果、この大学付属病院が答えとして導き出されたわけである。

 牧俊の調べた情報によるとその双子は、とある閉鎖的な旧家――天戸辺あまとべ家という、代々異能者を輩出してきた血筋で、公家の末裔だとも謂われている――の令嬢が親族の命令で跡継ぎを残すため、半ば強制的に身籠らされた子供達であることが分かった。一人娘であるその女性は、まだ二十歳はたちを過ぎたばかりだったが幼少からの重度の男性恐怖症が一向に治る気配を見せなかったため、業を煮やした当主――父親がこのような人権を無視した行為に走ったという話である。

「しかしよ、生娘に受精卵宿して処女懐胎たぁ、屁理屈も甚だしいぜ……胸糞悪りい」

 おそらく王は気に喰わなかったのだろう。その旧家――天戸辺家の在り方も、それを利用しようとする《十字背負う者達の結社》の連中も――。

 産まれたばかりの我が子を略奪された若い母親は、ただただ両手で顔を覆って泣いていた。凄惨な殺戮の真っ只中にいたのだ、それも無理からぬことだろうとカインは思う。むしろ殺されなかったことが幸運だったかもしれないが、結社にとっては彼女は〝聖母〟とでもいうべき存在――あえて彼女だけがこの場に生かされたのは、ある意味必然なのかもしれない。

 天戸辺家令嬢の腕は驚くほどか細く、彼女がまだ大人に成りきれていない人形のような顔と声を震わせているのを、カインは黙って見ていることしかできなかった。望んだにせよ、そうでないにせよ、九ヶ月近くを最も身近に過ごし、そしてお腹を痛めてこの世に送り出した命を取り上げられたのである。その悲しみを、男であるカインや王には完全に理解することは出来なかっただろう。彼らは彼女に掛ける言葉もなく、ただ赤子を取り返すことだけを心に誓った。

「確かこの近くに、閉鎖され廃屋となった教会があります――敵側にも時間がないはず、奴らが儀式を執り行うとすれば、おそらくそこの可能性が高いのではないでしょうか」

「うむ。まずはそこから当たってみるか――しかしよく知ってたな、そんな廃教会があるだなんてよ」

 カインは「ええ、まあ」と適当にお茶を濁し、ポケットの中の「お守り」をギュッと握った。

 彼らは通報によって病院に到着した普警の班に後を任せ、急ぎその教会跡へと向かった。

 移動しながらも王が、芒山隊長に携帯で連絡を入れる。護衛の交代を他の隊員に任せ、この病院に来たのは独断での出動だったため、開口一番耳をつんざくような怒号が飛んでくるのではないかと心配していた王だったが、隊長の口調は予想に反して穏やかだった。

「牧俊君から話は聞いている。大学付属病院に向かったそうだな――赤ん坊は無事か?」

「一足遅かったようです、すみやせん。母親は無事でしたが医師三名と看護師五名が殺害され、双子は誘拐されました。とにかく緊急事態だ、応援を頼めますか?」

 王が煮え湯を飲まされたような顔で苦々しくそう言うと、電話の向こうからも「ううむ」と獣が唸るような声が聴こえて来た。

「分かった。最寄りの者から向かわせていく。他の赤子のところも、まだまだ油断できない状況だからな、全員というわけにはいかんが――」

 王は例の廃教会の場所を隊長に伝え、電話を切った。

「医者と看護師は全員急所への斬撃か、鋭い刃物の一突きで殺されていた。相当な手練れに違いねえ――油断するなよ」

 王は真剣な表情でカインに、そして自分にもそう言い聞かせた。鯉口を切り、いつでも刀を抜刀できるよう臨戦態勢を取る。いよいよ廃教会の門が見えてきたのだ。

 しんと静まり返った夜の居住区。

 洋館の乱立するこの地区はかつて海外移民の裕福層が集まって居を構えていたが、今ではほとんどそれらの家系が絶え、土地だけ残ってしまったのを国が買い上げ、再開発の待たれているエリアだ。不気味なほど人がおらず寂しい区画だが、それも結社が計画に利用する際、好都合だったのだろう。

 カインも目的地をすぐそこに控え、愛用のカスタムリボルバーを取り出し、弾倉に弾の込められていることを確認した。

 目の前にそびえ立つ古ぼけた教会は、ぼろぼろの壁と、暗闇をつらぬく時計台の尖塔も相まって、どこか禍々しい気配を漂わせている。野放しの状態で育ったいばらが無茶苦茶に絡まり、庭園は枯れた雑草に覆われ、ひび割れている。夜に見るとまるで、悪魔の住処だ。

 だが、その雰囲気のせいだけではない。

 ――中に、何か居る。

 二人は確信した。

 そのまま教会の荒れ放題になった広い庭を突っ切る。厳めしい装飾のほどこされた大きな門に体当たりをかまして、勢いよく開け放った。

 軋む大音響で扉が開き、すっかり埃っぽくなっていた聖域の中に、冬の冷たく澄んだ空気が流れ込む。

 その空間は永らく閉鎖されていたとはいえ、世間一般で言う「教会」のイメージをまだしっかりと残していた。門から祭壇まで、一直線に伸びる通路。祭壇の向こうには、磔刑にされた救世主の像がそびえ立っている。そして通路を挟むように、信者の座るための長椅子が左右に何十組ずつも並べられ、床に固定されていた。

 奇襲を警戒していた二人だったが、建物内部に侵入した途端、前方に見える祭壇に人影を発見した。

 司祭服を纏った老人が、二人の特殊刑事を振り返る。天窓から入る月光が丸眼鏡に反射し、きらりと光った。

「ああ――儀式の刻まであと少しだと云うのに」

 老司祭は無表情でそう言った。祭壇の上には、小さな鉄の棺桶が二つ、並べられていた。恐らくその中に赤子が入っているのか。

「儀式とか預言とか、そんなこたあ知ったこっちゃねえんだよ! いいから赤ん坊を返しやがれ」

 王が刀を構えた。

「抵抗するなら容赦はしませんよ。大人しく降伏した方が身のためです」

 カインは銃の照準を相手に定める。

 教会内部はかなり広々とした空間だったが、そこかしこにどんよりとした殺気が充満していた。隅の方は真っ暗で、ほとんど何も見えない。少なくともあと二人、どこか暗闇に紛れている――カインはさらに神経を研ぎ澄ました。

「抵抗? ――何を馬鹿なことを。私は老いた身だ。お主らのような者の相手をするなど、とてもとても……のう、我が息子たちよ――」

 司祭は姿の見えない何者か達に語りかけた。

 カイン達も既に気付いていたので、決して驚きはしない。この老司祭以外に、教会の中に複数の手練が潜んでいたことを。

 どこからともなく、老司祭とは別の、若い声がした。

「おうおう、叉井――死臭がするな。くくく、これはこれは恐ろしき者達だ。はてさて、一体今まで何人殺してきたのやら……」

「屋古部――そのようなことを言っても無駄ですよ。彼らは正義が己らにあると思い込み、それを振りかざし自らの殺人行為を肯定しているのですから……」

 教会内は広く天井も高く、声がよく響く。そして、足音も―――。


 コツ、コツ、コツ、コツ――。


「血の川を築きし者達よ。累々たる汝らが罪業、汝らの血と、我らが暴力によってのみ贖われん。懺悔も改心も要らぬ。ただ粛々と己が最期を受け入れたまえ――エイメン」


 コツ、コツ、コツ、コツ――。


「異教徒、神敵、神をも畏れぬ者達よ。あなた方のような類が我らの眼前に存在すること、一切適わぬ事と知りなさい。せめてその最期が安らかであらんことを――エイメン」


 左右から物々しい祈りの文句を唱えながら、屋古部と叉井が――彼らは足音を響かせながら、老司祭を守るようにその前に歩み出た。

「――主よ、私はあなたの放った一矢となり、あなたの敵を滅ぼしましょう」と叉井。

「――そこにはいささかの躊躇もなく、そして一片の悔いもなく」と屋古部。

「――何故なら彼らを塵に還すが」

「――我々に与えられた聖務なのですから」

「「エイメン」」

 芝居がかっている――カインと王はそう思わずにはいられなかったものの、年季の入った廃教会という舞台装置の力も働いてか、その場の空気に呑まれてしまい、動くことが適わなかった。

「まあしかし、随分と早い到着だな。儀式の刻まであと三十分弱……どうしたものか」

「ですから言ったでしょう、屋古部。この国の警察は優秀ですよ、と――」

 叉井はそういうと臨戦態勢を取った。

「私と屋古部が足止めを致します。先生は早く準備をお済ませに、地下堂へ――」

「うむ、あれらはかなりの使い手だの。お主らも努々油断せぬことだ」

 老司祭が板張りの床に隠された一辺をゆっくりと踏むと、祭壇がズズズと音を立てて動き、地下へと繋がる仕掛け階段が現れた。

 老人は二つの小さな棺を抱え、下り階段奥の闇の中へと消えていった。

「ま、待て……ッ!!」

 カインが叫び一歩踏み出そうとしたその瞬間、複数の――円形をした何かが、二人に向かって凄まじい速さで飛んできた。

 王は刀でそれを叩き落とし、カインはさっと身を躱した。床に落とされたその武器に、ちらりと目をやるカイン。

 それはこの国において――否、現在においてはほとんど見かける機会のない、珍しい投擲武器だった。

「チャクラムとはまた、風変わりな武器を使いますね……」

 ――戦輪チャクラム。もとは南アジアのシーク教徒が使う、密教の武具であったものだ。直径十五センチほどの金属の輪。その外側の縁が研ぎ澄まされており、刃物になっている。手裏剣やヒョウなどの「打つ」「刺す」のとは違い、投擲用の武具の中では珍しく斬撃に特化されたものだった。

 それらを投げたのは、叉井だった。彼はさらに祭服の中から複数のチャクラムを取り出した。

 〝天使の輪〟――エンジェル・ハイロゥ。他の使徒からもそのように呼ばれるほど洗練された、彼の絶技。

 叉井は両の腕のスナップを利かせて、二つのチャクラムを手から解き放つ。骨をも断ちそうな勢いで飛んでくる光輪を、王は前に出て、抜刀していた刀で叩き落とした。

 カインがその陰に隠れ、銃で叉井を狙い撃つ。叉井は祭壇に片手をついて後転とびで回避しながら、その後ろに逃げ込んだ。その回避動作の最中にも、チャクラムを投げてよこすのを忘れない。

 放たれた輪は弧を描きながら飛来し、横方向からカインを襲う。軌道はどうやら自由自在のようである。――相当に熟達した使い手だ。

 並ぶように立っていたカインと王は、同時に身を沈めてチャクラムが頭上を通り過ぎるのをやり過ごした。

 そこへ屋古部が一足飛びで間合いを縮め、襲いかかって来る。十五メートルはあろうかという距離を、たった一歩、それも一瞬で――だ。純粋な身体能力だけなら、王やカインをも軽く凌駕しているかもしれない。

 屋古部は黒い漆塗りの柄に、十字型の白い刃のついた長槍をその手に持っていた。それを振りかざし、下段横薙ぎに振り払った。

 カインと王は、咄嗟に後ろに跳んで槍の殺傷圏から逃げ出した。屋古部はさらに突進しながら、槍を振り抜いた勢いそのまま頭上で素早く旋回させ、今度はそれを二人の間に叩き下ろした。慌てて左右に分かれるカインと王。槍の一撃は、老朽化した床を広範囲にわたって粉々に打ち砕いた。

「形状としては東洋の十文字槍に近いな――何にしろ一筋縄ではいかん」

 王は飛び退いた勢いで長椅子を蹴ってさらなる反動をつけ、屋古部に向かって斬り込んだ。神父は槍の柄でその斬り込みを受け止める。柄は木製だが、斬撃は半ばで喰い止められる。芯に鉄が通してあるようだ。

 その攻防の隙に、叉井が祭壇の後ろから横に飛び出した。並べられた長椅子の背凭れに足を掛け、その上を器用に走り抜ける。カインは相手の動きを追って、四発の銃弾を撃ち込んだ。牧師は素早く長椅子の上を駆け抜けながら、上に跳び、身を屈め、弾丸を避けていく。その間にも反撃にチャクラムを投げ返してくる。輪の中に人差し指を差し込み、それを軸にくるくると回し遠心力で投げ飛ばす方法と、刃の縁を指でつまんで手首のスナップで投げ飛ばす方法――その二通りの投擲法を上手く使い分けている。カインは複雑な軌道で飛んでくるチャクラムのうち、ひとつを弾丸で撃ち落とし、残りを銃身で払い落した。躱すこともできるが、近くにいる王に当たってしまっては仕様がない。

 一方の王は肩での体当たりで敵を突き放し、逆風の切り上げ、唐竹の切り落とし、そして一点を貫く刺突つきで連続攻撃を仕掛けた。屋古部は切り上げを十字型の槍頭で受け止め、切り落としを石突き(槍の柄の、刃とは逆の先端部分)で払いのけ、そして刺突を柄で受け流す。

 屋古部の反撃は、まるで杭打機のように力強く高速で繰り出される四連突き――。

 刀で防ぎながら、王が言う。

「てめえら、あの遊夛の言ってた『十二使徒』とかいうイカレた集団だろ――!」

「あぁ、お前達か。遊夛の阿呆を捕まえたっていう警察連中は――」

 屋古部が石突きでの足払い。王は床に刀を突き立ててそれを押し止める。そのまま刀を支点に跳び上がって、振り下ろすような蹴りを敵に浴びせたが、屋古部は槍を握っていた片手を離し、背腕でガードした。

 屋古部は、カインと戦っている己の相棒に向かって叫び掛けた。

「おい、聞いただろ叉井! 二対一とはいえ遊夛を生け捕りに出来るような連中だぞ! てめえもいつまでも遊んでねえで、さっさと本気出しやがれ!!」

 カインと叉井は、少し離れたところで一進一退の攻防を演じていた。飛び交うチャクラムを搔い潜りながら接近戦を仕掛けたカインのラッシュを、叉井は何とか捌ききっている。どうやら牧師は飛び道具による遠距離戦だけでなく、少なからず体術の心得もあるらしかった。

「やれやれ、致し方ないですね――」

 牧師は冷静に、刑事の上段廻し蹴りから後ろ廻しに繋げるのを、頭を下げて躱す。続けて横殴りの拳打を手刀で受け止める。そこからカインが反転してバックブローを繰り出すが、叉井はスウェーで避けると同時に胴体を蹴り込んで一撃を入れた。連続してさらに反対足での前蹴りでカインを突き放す。

 前蹴りによって十分な距離を取れたところで、叉井は服の下から何やら両手に取り出した。

 それは、はっきりとは分からぬが――どうやらチャクラムのようだった。

 というのも、今まさに叉井が取り出したそれは、先刻まで彼が投げていた装飾性皆無な鉛色の戦輪とは、全く違った形状をしていたのである。

 大きめの、直径三十センチほどの円形状、しかしまるで茨を編んで作ったかのように彫刻が施され、刃状の突起が様々な方向に突き出している。それはおおよそ武具としては非常に扱い難そうな代物に見えた。

「なるほど――聖槍に、いばらの冠ってわけか……」

「クルス教救世主の――聖人の処刑に関わるアイテムがモチーフのようですね」

 カインは緊張した面持ちでそう言うと、隙を見て、撃ち尽くした弾丸の装填を済ませる。

 よく知ってるじゃないか――屋古部が愉快そうに言った。

「俺らの組織には、トバルカインっていう原初の鍛冶屋の血を引く爺さんが居てな、聖遺物やクルス教にちなんだ特殊な武具をせっせとこさえてくれてんのさ」

 武具を開発する老人――そう聞いてカインは、特警の鴨志田老人を連想した。

「彼の神槍『ロンギヌス』には、実際処刑の際に千人長が救世主の脇腹を刺した、かの聖槍の刃を溶かし、その鋼で鍛えた刃を使用しています」

 叉井が両手に持った荊冠を構え、続ける。

「そして私のこの『荊冠輪』は処刑の際に編まれた――救世主の血を吸ったその直系の品種である茨を芯に通してあります。故、我らの使う聖なる武具、そこに与えられる加護は計り知れません」

「神の加護だって? そんなもんが戦闘中に何の役に立つってんだ――!!」

 王が叫ぶのと同時に、背中合わせになった二人の刑事は、くるりと変わり身でお互いの位置を入れ替えた。王が叉井に斬りかかり、カインも屋古部に向かって発砲する。

「百聞は一見に如かず――だ!! 身をもって思い知るがいい!!」

 屋古部は槍を旋回させ三発の弾丸を防御し、そのまま回転系の技に繋げ、竜巻のように突進する。神父は目にも止まらぬ早業で槍を旋回させながら連続攻撃を仕掛ける。カインは体捌きと、銃身で槍の穂を打ち払いながら何とかそれをしのぐが、中段と下段の刺突を躱しきれず、脇とふくらはぎにかすり傷を負ってしまった。


 一方、飛び道具遣いの叉井相手には接近戦が有利――と踏み込む王。叉井は、交差した荊の冠で王の打ち込みを防御し、そのまま後ろに距離を取った。そして王から離れた瞬間に、彼らが言うところのその霊験あらたかである武法具を、惜しげもなく投げつけてきたのだ。

「なめるなっ!」

 王がバツの字を描くように斜め下から二連続で刀を振り上げ、それぞれ別方向から飛んでくるその大きなチャクラムを弾き返した。

 今までの戦輪と同じように、この『荊冠輪』なる武器も、複数のスペアを用意しているのだろうか―――王がそんな事を思ったその瞬間、弾かれた二つの荊冠輪は、より回転の勢いを増し、物理法則を無視した動きで叉井の手元まで戻って行った。

「――なっ!! どういうことだ!?」

 王が驚きの声を上げる。

「ですから、こういうことですよ――。トバルカイン殿がお造りになられた武具には神の与えたもうた不思議な力が宿るのです」

「つまりその鍛冶屋は、自ら造った武器に異能を付加する能力を持った異能者――ということか?」

「まあ、あなた方の俗世の垢にまみれた言葉で言うと、そういう事になりますか……。この『荊冠輪』に与えられた力は、〝円環〟の形状が示す通り、〈必ず投げた者の手元に戻ってくる〉ということ。さらに適性と才能、その上特殊な訓練を積む必要がありますが、軌道から回転まで、ほぼ使用者の思う通りに操ることも可能です」

 なるほど、これは厄介だな――そんな事を考えながら、王は舌打ちをした。

「そしてこの『荊冠輪』に選ばれた私こそが、使徒の中では最もこの武具を上手く扱う事が出来るのです――!!」

 誇らしげに叫びながら、叉井は両腕を交差するように下から振り上げ、再び荊の冠を投げ放った――。


〈武器に封ぜられた『異能』〉――その現象に王が驚かされているもう一方で、屋古部もまた休まずカインを攻め立てる。カインは神父の放った刺突しとつを、手の平で柄をはたいて逸らし、下段横薙ぎの柄も足裏で押し止める。

 冷静に防戦に徹しながら、王と叉井の戦いも細かに観察するカイン。屋古部の槍術は充分に達人級だが、余力を残してもまだ対応できる。特警本庁では武器術も想定した模擬戦闘の訓練を行っている。その組手で先輩である炎上寺アキラの槍術相手にいつもぐぅの音も出ないほどしごかれているカインにとって、屋古部の槍さばきは考え事をしながらでも何とか防ぐことができるレベルのものだった。

「(これは、アキラさんに感謝しないとだな……。けど、油断は出来ない。もう一人の武器を見る限り、この槍にも何かしらの能力が付与されていると考えていい――)」

 余計なことをされる前に、攻勢に回り、急ぎ捕縛するべきか――彼がそう考えたのを読み取ったかのように、屋古部が凶悪な笑みを浮かべた。

「能力を使わせる前に決着を付けようと考えているな――? 残念だが、貴様はとうにこの聖槍の神秘をその身に受けているぞ」

 屋古部の猛攻をしのぎながら、かすかに動揺するカイン。相手に拳銃を向けるが、下から打ち上げられた槍の穂で、銃口の狙いを外された。追加の銃撃も、屋古部が斜めに掲げて油断なく残心をとった聖槍の柄に弾かれた。

「なに、俺の『ロンギヌス』は、叉井の投げ輪に比べると幾分地味な能力だよ――それ、その脚。大丈夫か?」

 カインがその言葉につられて、怪我を負わされたふくらはぎのほうに意識を向けた。ほんの皮一枚の切り傷だったはずが、ずきずきと痛みはじめている。

「――――!!?」

 おかしい。かすり傷程度だったはずの足の怪我は、今ではパックリと割れ、傷口が深く広がっている。そしてそこからは血がドクドクと流れ出していた。脇腹の傷も同じだった。

「くくく、どうだ? これが『災いの一撃』――神をも滅ぼす我が神槍『ロンギヌス』の力だ」

 誇らしげな神父の長身と剛腕から、御自慢の神槍が立て続けに振るわれる。

「この槍はな、傷付けた物に対し、不可避にして絶対の破壊を齎す。無機物ならば分子の結合を分断し、生物ならば細胞を破壊し、決して癒えることのない進行形の傷を与える。止めるには創傷部自体を切除するしかない。早く俺を倒して治療を受けないと、そのうち失血死するか、切り口からどんどん壊死していくことになるぞ――?」

 なるほど、この聖槍を相手にした場合、たとえそれがかすり傷でも致命傷になり得るというわけだ――カインは一気に焦りを感じ出した。

 しかし、これもおそらくは敵の作戦であることに間違いはない。そうでなければ能力をばらす必要などなく、持久戦でカインが戦闘不能になるまで待てばいいだけのだから。つまりは、勝負を急ぎ、短期決戦を望んだわけである。それは言い換えれば、カイン相手に持久戦で粘るのは厳しいと――屋古部自身がカインの実力を己と互角か、それに近い戦闘力を有する相手だと認めた証拠でもあったわけだ。

 カインは落ち着いて敵の槍を躱しながら、まだ発砲直後で熱が残った薬莢を、回転弾倉から取り出す。火傷するほど高温のそれらをごっそりと手の平に乗せ、脇腹の傷口に強く押し当てた。気休め程度にしかならないが、熱による血液凝固で傷口を塞ぐ、一種の焼灼止血法だ。

 ジュウ。――皮膚の溶ける音がし、肉の焦げる匂いがした。

「ぅぐ……ッ!」

「くははッ! 見上げた根性だが、その程度では塞ぎきれんぞ!」

 屋古部の言う通り、聖槍による傷は今この時も広がり続けている――。


 ――しかして緊迫した戦闘の続いていた、その時だった。

 扉が物凄い音を立ててぶち破られ、疾風のような黒い影が堂内へと乱入した。

「チェェエエエストォオオオオオ!!!」

 その何者かは、通り過ぎざまに叉井を飛び蹴りで突き飛ばし、さらに眼で追うのがやっととでも言わんばかりのスピードで乱舞しながら、カインと屋古部の間に割り込み、銀色の棒状の何かを振り下ろした。

 たまらずに屋古部が飛びすさる。

「なんだ――お前は?」

 大股開きで床に片手を突き、槍を背に回した構えをとった神父が、明らかに不愉快そうな表情で顔を歪めた。


「カイン、それに王――てめえらばっかり楽しそうに戦ってるんじゃねえよ。アタシにも譲りな!!」


 赤みがかった艶やかな長髪に、ライダースーツのようにぴったりと躰にまとわり付く黒い革のロングコート。

 乱入者――炎上寺アキラは得物の銀槍を肩に担ぎながら、好戦的な笑顔を作ってみせた。






(【4】へ続く――)



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