第11話 超絶な美少女
鬼更技先生が上の部屋から下のシュミレーションルームへと降りてきた。
そして今は俺たちの目の前にいる。
数日前に会った時はライダースーツを着ていたが、今日の先生はデザイナーズ学園オリジナルの意匠が施されたパンツスーツを着こなしていた。
そんな先生は俺の顔を見ると眉をひそめる。
「んっ、キミはこの前おうたな。確か新入生の――」
「星野流之介です」
「そやそや、流之介やったな」
先生はそう言うと微笑んだ。
俺は先生に怒られる事を覚悟していたが、この様子を見る限りどうやら怒ってはいないようだ。
(よかった)
俺はそう思いながらホッと胸を撫で下ろす。
「ところでキミら、こんなところで何してんねん?」
「それは……」
俺が言葉を濁していると隣の鯨が口を開いた。
「先生、オレらにもシュミレーターを使わせてください!」
(おのれ、鯨め。さりげなく俺も巻き込んだな)
俺は鯨の言葉を聞いて内心そう思った。
鬼更技先生はと言うと、鯨の言葉を聞いて目をパチクリさせていた。
だが、そのうちに表情が崩れ、八重歯を覗かせながら笑いだした。
「キミらまだ入学もしとらんのにそないな事の為にわざわざここに来たんか?」
「はい、オレはデザイナーとして一日も早く大成して人類の為に戦いたいと思っています!」
「そりゃ良い心がけや。でもな、そんな嘘は言わんでもええねん」
「いや、嘘じゃないです!」
「大人を舐めるんやない。顔にハッキリそう書いてあるわ」
鬼更技先生はそう言うと鯨の額をデコピンで弾いた。
「いてっ!」
「まあキミらの気持ちはわかるわ。男の子やしな。エクスユニットに早よ乗ってみたいんやろ?」
先生はニヤリと笑い、そんな含みのある言い方をして俺たちを見つめた。
鯨はすぐさま手を上げて叫んだ。
「乗りたいたいです!」
「いや、俺はあんまり――」
「流之介も乗りたいよな! なッ!」
「うっ……はい」
俺は鯨の勢いに負けて思わずそう言ってしまう。
そんな俺たちの言葉を聞くと、鬼更技先生は頷いた。
「キミらがそこまで言うなら仕方ないわな。特別にシュミレーターを使わせたるわ」
「ホントですか! やったぁー!」
鯨はそう言って飛び上がらんばかりに喜ぶ。
俺はそんな鯨の横でまたため息をついた。
その時、シュミレーターのひとつが大きな唸り声を上げた。
そして静かな空間に空気の抜ける大きな音が響き、俺は誘われるように視線をそちらへと向けた。
すると開いたシュミレーターの扉の向こうから、超絶な美少女が現れた。
ナチュラルな金色の長い髪に透き通るような白い肌。着ているのがラバースーツのようなものなので、体のラインもハッキリとわかるが、スタイルも抜群だ。
そして見るからに異国の人という風貌をしたその美少女は、伏し目がちだった青い瞳を大きく見開く。
「おっ、ちょうどええわ」
鬼更技先生はその美少女の方を振り返るとそう言った。
美少女は端整な顔立ちを少し歪め、桃色の唇を動かす。
「なんで舞がこっちにいるのよ?」
美少女は少し不満そうにそう言う。
すると先生は苦笑いを浮かべながら俺たちの方を見た。
「いやー、可愛らしいネズミちゃん達がココに迷い込んできてなぁ」
先生がそう言った事ではじめて俺たちの存在に気づいたのか、美少女はゆっくりと顔をこちらに向けた。
彼女は正面から見てもやっぱり美少女だった。陳腐だが、俺にはそう表現することしかできない。
そんな美少女は、あからさまに嫌そうな表情を浮かべると言った。
「なに、こいつら?」
「この子らは今年の新入生や。つまり、キミの後輩やでリャナーナ」
先生にリャナーナと呼ばれた美少女は興味なさげな様子で俺と鯨を交互に見る。
話の内容からすると、どうやらこの美少女は俺たちの先輩のようだ。
(さっきモニターに映っていた赤いエクスユニットを動かしていたのは、このリャナーナ先輩なのかな)
俺がそんな事を思っていると、先輩が先生に向かって言った。
「ふーん。で、なんで新入生がここにいるわけ? 入学式って明日じゃなかった」
「そやな。でもな、この子らは1日も早くエクスユニットに乗りたいちゅーてここに来たみたいなんや」
「はぁ?」
先輩は眉をひそめる。
そして俺たちを厳しい目つきで睨みつけると言った。
「アンタたち、エクスユニットに乗るのは遊びじゃないのよ。わかってんの?」
「リャナーナ、そないに凄むなや」
「舞。アタシはね、こいつらの為に言ってやってんのよ」
「ほな都合がええな」
「なによ、都合がいいって?」
「この子らの為を思うんなら、少し教えてやってくれんか」
「はぁ? どういう事よ」
「模擬戦や」
「えっ」
リャナーナ先輩がぽかんとした顔で声をあげる。
俺と鯨もそんな先輩と同じように声をあげた。
「ちょっと冗談でしょ、舞? まだ何も知らないこいつらとアタシじゃ勝負になんないわよ」
「それはわかってる。でもな、だからこそやる意味がある」
「はぁ?」
「勝負は流之介たちとリャナーナの2対1。使用する機体は08式。武装は標準装備。流之介たちにはウチがサポートに付く。これでええな」
「なんだかよくわからないけど……舞がやるって言うならやってあげるわ。ジリオン相手の練習にも飽きてたし、ちょうどいいかもしれないしね」
「キミたちは、本当にやるんか?」
鬼更技先生がそう言って、鋭い目つきで俺たちを見つめる。
「はい!」
鯨はすぐさまそう答えた。
ここまで来たら後には引けない感じだったので、俺も鯨と同じように返事を返した。
「よし、決まりやな。流之介たちはウチについてき。リャナーナは準備しといてや」
「はいはい」
先輩はそう言うと、再びシュミレーターの中へと戻っていく。
「ほな、行こか」
先生はそう俺たちを促して、シュミレーションルームの奥の方へと向かって歩き出した。
俺と鯨は顔を見合わせると、先生の後を追って足を前に進めた。
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