第6話 金海沢デザイナーズ学園

「着いたよ」


 ミーコがそう言って守衛のいるゲート前で足を止めた。


「ここか」


 俺は周囲を見回す。

 小高い山の上に広がる広大な敷地に金海沢デザイナーズ学園はあった。

 だが、いまいるゲート前からはパンフレットに載っている学園の建物は見えない。

 なにやら他にも色々な施設が併設されているようで、ゲートの奥にも何かの研究施設のようなものが見えた。


「広いなー」

「本当だよね」

「おい、君たち」


 と、ゲートを守っていた守衛の人が俺たちに声をかけてきた。

 俺とミーコは少し威圧的なその声に背筋を伸ばす。

 そんな俺たちの元へ守衛の人がゆっくりとした足取りで近寄ってきた。


「こんなところで何をしてるんだ?」

「あっ、はい。実は――」


 俺は入学前に学生寮へと入寮するためにやってきた事を守衛さんへと告げる。

 いままで迷ったり、寄り道したりしてしまったが、ようやく俺が目指していた本当の目的地に着けそうだ。


「そうか、学生だったか。そっちの君は?」


 守衛さんはそう言うとミーコへと視線を向ける。


「私もここの学生になる予定なんですけど、今日はまだ入寮するわけではなくて、道案内でここまで着ました」


 ミーコの話を聞いて守衛さんは小さくうなずいた。

 そして俺へと視線を向けると再び口を開く。


「事情はわかった。だが、君は親御さんと一緒じゃないのか?」

「ハハっ、そこは色々と家庭の事情がありまして」


 俺は苦笑いを浮かべながらそう言った。

 ばあちゃんは俺の入学に反対していたからか、見送りや付き添いなど一切行おうとはしなかった。

 だから、ここに来るまでの作業はすべて俺が自分で行っていた。

 守衛さんは「そうか」と小さくつぶやくと後ろを振り返る。

 そしてゲートの側にあった守衛小屋に向かって声を張り上げた。


「おーい、ETチェックの準備をしてくれ!」


 その声に反応して、守衛小屋にいた人が動いたのが見えた。


「じゃあ君はこっちに来てくれ」


 守衛さんはそう言うと歩き出した。

 俺はミーコの方へと視線を向ける。


「ここまでありがとな。助かったよ」

「ううん、たいしたことじゃないから」

「じゃあ、また入学式の日にでも」

「うん、そうだね。また」


 俺とミーコはそう言葉を交わすと別れた。

 そして俺は守衛さんの後を追って歩き出す。

 その途中、肩越しに少し後ろを振り返ってみると、ミーコが小さく手を振っている姿が見えた。

 俺は鼻の頭をかきながら軽く手をあげて応える。

 そしてミーコの笑った顔を見届けると、俺はまた前を向いた。

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