第2話神様との正しいおつきあいの仕方

act.2 箱根神社

〜テディベアルー 箱根神社を訪ねる の巻〜


【神様に愛されるための心得 その1.】

”笑う門には福来る” いつもニコニコ、朗らかで気だての良い子であること』


箱根神社へ向かう道中、ルーは私に幾つかの約束事をさせた。


「神様の前で 怒りの言動はご法度!特にケンカはダメ。口汚いののしりの言葉、罵詈雑言は神様が最も嫌うもの。だから、絶対に止めてね。神様が嫌がって逃げちゃう。スターゲートも開かなくなってしまうんだ。頼むね、ボク、お役目が果たせなくなるから。」そういってルーは 何度も念を押した。


【 神様に愛されるための 心得 その2.】

愛敬と感謝の言葉 。 “ありがとう”の言葉に宿る言霊は地球上で最もエナジーが高い。理由は 水が知っている。


「江本勝氏は著書 “水は語る”の中で こう、いっているよ。


水にいろいろな言葉を聞かせ、ある特殊な方法で水の結晶を撮影したところ、驚くべき結果が出た。“ありがとう”の言葉を聞かせた時、水の粒子はその言葉に反応して美しい花の形を取り、“バカヤロー”という言葉に水は 渋面。しかめっ面で そっぽを向いた、って。


感謝の言葉は幸せエナジーを産む。ポジティブ思考は幸せエナジーをUPさせる。神様は高位のエナジーがお好き。神霊も精霊もエナジーが高い所に集うんだ。だから“いつも ご守護 頂きありがとうございます”と感謝すると幸せエナジーが高まり、八百万の神が側に寄ってくる。そうすると お願いが通りやすくなる…こういう仕組みになっているんだよ。誉められて嬉しいのは、人も神様も同じなんだからね。


八百万の神様を味方につけ 願いを叶えて頂く最強の方法は神様に感謝と愛敬の言葉を奉じること。」 なるほど、ガッテン 致しました。


【 神様に愛されるための心得 その3.】

誓約を守る 。



「これは今から箱根の大神様の元で実践する。お願い事を叶えて頂くには 誓願と誓約が必須。これ無くして祈願は通らない。通らなければ成就しない。 ワコちゃん、覚悟はできているよね。強い信念を持つことなしに この“誓約の門”をくぐっては いけないよ。人間たちはお願い事=誓願する事を軽く考えているようだけど、誓約を守る覚悟が定まっていないと 後がたいへんなんだ。箱根の大神様方は、優しいよ。崇敬して頼る者には 慈悲をかけ 力になってくださる。でも、優しい反面 厳しいところもある。特に 如何なる理由であっても誓いを破った者には その後5年間…、」


「……応えて下さらない。」


「その通り。」


私には 覚えがあった。数年前 大願成就の誓願をした時、 神々様からチャンスを頂いたにもかかわらず私の力量不足で成し遂げることができなかった…。過ぎさった昔の苦い経験である。


「熊野の神々様はもっと厳しいよ。誓いを破った者には罰を与える。神様にしてみれば、“あれだけ お願いしておきながら 何だ、この体たらくは‼やる気があるのか!……だろうね。」


「神様に願いを叶えて頂くためには、私たち人間側も誓約した事柄には相応の覚悟を持ってあたること。そして、決してあきらめず、掲げた目標をやり抜くことが大切…ということね。」


「うん、そういうこと。でも、硬くならずに リラックスしてね。いつも 自然体でいることだよ。」


「よくわかりました。“神様に愛される為の心得の条”3つ、必ず守るわ。ルー、いろいろ 教えてくれて ありがとう。」特に心得その1は守ってね、“怒りは禁物”だよ、ルーはそう言って更に何度も念をおした。


そうこうするうちに 私たちは 右手に霊峰富士、眼下にセルリアンブルーの水を湛えた芦ノ湖を観る箱根神社に着いた。


「とうゃ~く!」ルーは大はしゃぎだ。朱の鳥居へと私を急かす。


「さあ、ワコちゃん スターゲートを開くよ。急に寒くなるから、持ってきたダウンコートを着て」


家を出る時 ルーは私に防寒着を持っていくように 言った。いくら箱根の天気が変わりやすいから といっても今は初夏。防寒用コートは行き過ぎじゃない、と思ったものだ。が、しかし……。


「準備はいいかい?じゃ、まず、朱の門の前で一礼。次に、住まいと真名(まな)を門番に伝えてから門を通って。ワコちゃんたち人間の目には視えないけれど、箱根の朱の門の左右 両側に“時の守りの翁と嫗”(ときのもりの おきな と おうな)がいるの。門を通って向こう側に渡れば彼らの存在がワコちゃんにも見えるようになるよ。」


「了解。ところで、真名(まな)って 何?」


「ああ それ、ワコちゃん 知らないんだっけ。宇宙名。撰名(せんめい)ともいうよ。未来永劫 変わることのないたった一つの名前。ワコちゃんの魂の名前だよ。スターゲートを通る時に必要なパスワードさ。」


『ワコちゃん真名はね、“ワコ エストレーラ ガイエス エストリアス”』


その名を聞いた途端、身体中にパワーが漲ってきた。


「じゃ、行くよ。ボクは左腕に抱っこね。」


そうして私はルーに導かれるままに 箱根の朱の鳥居、朱の門・スターゲートをくぐった 。


朱の鳥居に一歩 足を踏み入れたその瞬間、白い朧げな影がふたつ 目の前を横切っていった。


そして聴いた。高やかな笑い声と共に幾重にも重なり合うように鳴り響く鈴の音を…。そして、…


「寒っ‼!」


門を通り抜けた直後、寒気が私の肌を刺した。一体、どーなってるの?私は予想外の寒さにびっくり仰天、思わず叫んだ。


「当たり前だよ。今、 冬だもの。2014年12月30日。大晦日の前日にワープした。」


「!!!」


時を越えた⁉ 私はあまりの衝撃的な出来事に言葉を失った。そして 、気づいた。一瞬で16歳も年をとってしまったことを。


「たいへんだっ! ルー、私…、私……。」するとルーは アハハ!と高笑いして答えた。


「大丈夫だよ、年はとってないから。鏡、見る?」と おどけた。


私は目に視えないものや 突拍子もないことに対して 人並み以上の理解力がある、と自負してきたが、これは度を越えている。まるでSFの世界の出来事のようだ。


「あのね、この時にワープしてきたのには訳があるの。2014年 初秋、箱根神社で最強の誓願成就のパワーを持つ、願い串と起請文の奉献が始まったんだ。更に 今日、九頭龍神社新宮の龍神水の所に成就水盤ができた。ボクの大好きなMr.ジャイアンツS.O氏も誓願符成就水盤 流し納めをしたんだよ。この2ツ、すっごいぞ!超強力‼ 牛玉法印の守り札付きだよ。」


ルーはこの起請文と成就水盤が よほど気に入ったのか とても興奮していた。ルーは私に箱根神社には願い串と起請文を入れさせ ニニギノミコト様,コノハナサクヤヒメのミコト様,ヒコホホデミノミコト様に誓願,誓約を、九頭龍様には誓願符流し納めをさせ 、神々と契約を結ばせた。そして神様方との約束を必ず守って幸せをつかもう、と言った。


「誓願を成就させるためには 強靭な精神力がいる。何の保証もない中で未来に向かって努力するのはたいへんなことだよね。くじけそうになるのは当たり前だよ。急がなくていい、ゆっくりでいいんだ。とにかくサボらず 諦めずに やり遂げる強い信念を持とうね、ワコちゃん。」


CMでいってるじゃない?“ワタシ、根性デ 結婚シマシタ”って。やっぱり最後に勝つのは ‘揺るぎない信念’ だよねぇ、とルーは言った。ごもっとも でございます、と思うものの 煩悩の塊である我が身には いささか 耳が痛い話であった。(私が奉献した誓願の内容はヒミツです)


両社の参拝を終えた後、ルーは私を芦ノ湖の畔に座す箱根のシンボル、朱の大鳥居へと誘った。


「ここが地球のヘソ。ユーラシアプレートと北アメリカプレートが ぶつかって大地のエナジーが地球の懐に還る場所。箱根→戸隠→諏訪と龍脈が抜けていっている。龍たちの通り道さ。大地が生まれるのは アイスランドだよ。いつか 訪ねようね。」


「うん、いっしょに 行きましょうね。ルー」


「ワコちゃん 見て! 龍たちだよ」


ルーは夕陽を受けて金色に輝く湖水の一点を指した。紺碧の湖水を割り 黄金色の光が螺旋を描いて天へ昇っていく。そして、箱根の山々の そこかしこから金色,銀色の光が立ち昇り、宙の彼方へ消えていった。


「きれい…。」


「スターゲートの放つエナジー、幸せオーラだよ。宇宙の根源に還っていくんだ。」


「ワコちゃん 協力 ありがとう。地球にある28のスターゲートのうち まず ひとつめが 今、開くよ」


ルーの言葉が合図になったのか、天が にわかに かき曇り灰色の雲が空を覆った。箱根の大地は あっという間に深い霧に包まれた。ややして 霧がひきだすと、今度は ポツリポツリと雨が降り、ついには強風を伴う大雨に。正に大雨 強風 波浪だった。箱根は山ゆえに天気が変わりやすいことは承知している。が、まさか ここまでとは思いも寄らなかった。私たちは神社近くのホテルのteaサロンでafternoon teaを楽しみながら天気の回復を待つことにしようと箱根神社を後にした。


そして、再び 朱の門・スターゲートを通り、時を翔けて1998年6月12日の夕刻に還って来た。

山のホテルのteaサロンは私の大のお気に入りの場所だ。芦ノ湖畔にあるレストランも素敵だが、私は暖炉のあるこのサロンの落ち着いた雰囲気が好きだ。afternoon teaも本場イギリスに負けず劣らず 素晴らしい。大雨の中、ルーを抱えて猛ダッシュしてきた後のこと、私はサロンのゴージャスなソファーに腰掛けて アッサムのmilk teaでほっこり。疲れた身体を癒しながら びっくりの連続で 目まぐるしくも楽しく過ぎた今日1日を振り返った。ルーは というと、私の傍らで ふかふかゴージャスソファーに座って上機嫌。箱根でのお役目が果たせて満足しているようだった。


「ワコちゃん、日乃本 の12ヶ所にあるスターゲートのうち、ひとつめが開いた。北アメリカプレートの中では ここ、箱根が最も重要だったんだ。だから反動も大きかったね。今日は山頂の箱根元宮におわす、箱根の山神様方の総元締・箱根のボスも降りて来られたし。皆さん ごきげんだったよ。上々、上々。」と 言い少し疲れたから抱っこして”と甘えてきた。私はルーを抱き天気の具合を確かめようと窓から外を眺めた。雨は上がっていた。先刻の雨風は噓のように青空が広がり、シュークリームに似た白雲がぽっかり、空に浮んでいた。それにしても、あの強風 大雨 波浪は何だったのだろう。もしや、神々様や龍たちのドンチャン騒ぎだったのでは?などと考えたりした。


「ルー、帰ろうか。あ、そうだ。私 箱根神社に寄って\100のおみくじ引きたいな。良く当たるって評判なのよ。」


「今日は帰らない。明日13日でしょ? 九頭龍様の月次祭に出る。今夜はここに泊まることにしたから。ボク、このホテル気に入っちゃつた!だって、フロントのお姉さんたち美人だもの。ウフフ…‼!だから おみくじは明日にしてね。」そう言って私に部屋を取らせた。


「ねえ、ルー。このホテル とってもゴージャスでステキだけれど、結構いいお値段なのよ。」とため息をついたら


「大丈夫、ボクが払うから。」ルーはサラッと 実にサラッといった。ほんとうに大丈夫かしら…と思った。が、そのひと月後、ルーはそれがハッタリでないことを証明してみせた。私は忘れていたのだ、ルーが神様であることを。そのことを納得せざるを得ない、ラッキーなハプニングが待っていようとは この時には未だ、知る由もない私であった。


~つづく


次回 『 神様はお酒がお好き 』は 芦ノ湖の中ほど 、湖畔に鎮座する九頭龍様の本宮をお訪ねします。


黒龍王様,白和龍王様,箱根の龍たちの総元締め、九頭龍様。それから九頭龍様とご縁の深い弁財天、市杵島姫様。それぞれの管轄と御利益とその頂き方をご伝授します。


皆さんに 幸多かれ!


Looking forward to seeing you soon!! From,ルー

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