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※キーワード「m」を手に入れました。
薄暗い部屋の中で、モニターの光が照明代わりに青白い光を放っている。
壁一面に貼り付けられた沢山のモニターを目で追いながら、男はため息をもらした。
「素晴らしい……」
男の背後では、カプセルに入れられた個体がクラゲのように沢山のコードを生やしてプカプカと浮いている。そして全く同じ形のものたちが、そのままズラリと部屋いっぱいに列を成していた。
「この世界はね、沢山の選択が積み重なって未来を切り開いていくものなんだ。だがその先は余りにも未知で、人は必ずしも正しい選択ができるとは限らない。そんなの、勿体無いよね? だったら未知を既知に変えてしまえば、もっともっといい未来が見えるんじゃないかなって考えるのは、当然のことさ。でも人っていうのは理性があるから社会を持てる。これが実験には厄介でね。そこのタガが外れてる患者に焦点を当てたのは我ながら良いアイディアだと思ったよ。本能がままに選択を重ねる彼らの姿は大変素晴らしいよ……。おかげで研究が大分進んだ。彼らの行動選択をデータ化し、私のコレクションに詰め込んでいく……全ての分岐を完全に見通せるだけのキャリアを積んだコイツを、早く見てみたいものだね。成功にしか導かない選択をしてくれる、人工知能を……!ねぇ君、素敵だと思わないかい?」
独り言のようにぶつぶつと語るだけ語り、その言葉に酔ったかのような恍惚な目をして彼は振り向いた。その先で、――車椅子に座っている青年はクツクツと笑った。
「でも、彼らの行動をいくら観察したところで知れる運命は一つだけですよ? 一つだけの運命をあちらこちらから搔き集めてるだけじゃあ、データを繋ぎ合わせようにも穴だらけじゃないですか」
しかし彼は表情を変えることなく、青年のように悪戯っぽく微笑んだ。
「問題ないよ。全ての分岐を網羅する方法は、ちゃんとある」
彼はまたモニターに目をやった。視線の先に写っているのは、
――看守や患者たちとは違う服装をしている男がいた。
「さぁ、楽しませて貰おうか。――キース君」
ふと、ドアをロックを解除する音が聞こえた。
「入りたまえ」
まるでそれを予期していたかのように悠々と、彼は来客を招いた。
重たい扉が、ゆっくりと静かに口を開いた――。
〈STAGECLEAR〉
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シャダフラ 香罹伽 梢 @karatogi
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