23

 入院患者でもなければ況してや管理員でもないキースは、言われるがままにシャッターに背を向けた。だが、もう管理員たちの姿は見えない。仕方なく、キースは一人で走り出した。だが、

「……あれ?」

来た道は狭い廊下の一本道だ。辿ればいいだけのはずだ。はずなのだが――。

走っても走っても、出口が見えない。無機質な廊下なため、目印となるものが何一つない。どれくらいの地点まで戻ってきているのかも分からなかった。

「おい!どうなってんだよ……!すみません! 誰か!」

更に、キースの焦る気持ちを走らせるものがあった。

――フシュウウという、何かが吹き出ているような音。

どれだけ前へ進んでも、遠のくこともなければ近づくこともなく、ただひたすら同じ音がまとわりつくように鳴っていた。

「一体……何が!うっ……!」

そんな音に重さを感じるようになるまで、そう時間はかからなかった。疲労だけでない、何かが足を引きずっているような感覚に襲われ、キースはその場に膝をついた。

改めて無機質な噴射音が重くのしかかってくる。立ち上がることは、出来そうになかった。

「どう……して……」

頭の中を飛び交う疑問符を消す術も無く、動かなくなる身体を遠のく意識に任せるしか無かった。

もう、戻れないところへ――。


〈GAMEOVER〉

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