21

「右だ!」

 特に根拠もなく、キースは右の壁に突っ込んだ。

 すると、壁の一部が切り抜かれるようにしてくるりと回り、後に続いた二人と共にキースを飲み込んだ。そして、音もなくパタンと元の壁に戻った。

「いつの時代のどこの国の仕掛けだよ……」

 その簡素な造りに思わず呆れた。

「片刃の剣を腰に下げてる国の、暗殺部隊でしょ? かっけー!」

「知らないよ、そんなこ……あ」

 真面に答えてきたロイに更に呆れる手前、キースは息を呑んだ。

 部屋の片隅に光る、幾多ものコードを纏った黒い箱――。

「……」

微かな電子音が唐突に訪れた静寂の中でリズムを刻んでいた。その空気を破って、リオンは力なく笑った

「ハハッ……あーあ、これは君を末代まで祟るようかなー。といっても末代は君か。ま、手間が省けていいかな」

 そして壁を思い切り蹴った。あれほどスルリと回っていた扉は、今はもうビクともしないただの壁になっていた。

「リオン……ロイ」

「ん? どうしたー?」

 何も表情を変えることなく、ロイは首を傾げた。

「本当にごめ――」

 申し訳ない気持ちが謝罪として溢れきる前に、キースは全身に強烈な衝撃を受けた。

 身体が天地逆転し、扉のようにクルリと回る。ふと、キースは看守の持っていたスイッチも、こんな感じに回ってたなと思い出した。

 そのまま走馬灯を見る暇もなく、キースの意識はプッツリと切れてはじけた。


 〈GAMEOVER〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る