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「左!」

 強いて言うなれば何となく、だけを根拠にキースは左の壁に突っ込んだ。

 すると突然壁の一部が新しく縁取られ、そのままクルリと回って三人を中へと詰め込んだ。

「っと! 何だよこれ……」

 あまりに急な動きに驚いたが、同時にその原始的な仕組みに呆れてしまう。

 部屋を一周ぐるりと、視線を巡らせてみる。ただの長方形であること以外、情報は何一つなかった。――起爆装置も。

「あ、これってさ! これって――」

 ロイもそれに気づいたのか、再びその場で跳ね始めた、しかしそれはすぐさま響いてきた衝撃音によって止められた。

「……もしかして、隣の部屋が?」

「きっとね。あっちに起爆装置があったのかも。でも……」

 キースとリオンは顔を見合わせた。その表情は、お互い曇っていた。

 そのままゆっくりと、天井を見上げる。

 ――物騒の代名詞とでもいうような黒い箱が、貼り付けられていた。

「こっちにもあるみたいだね」

 リオンが苦々しく笑うと、再び爆音が彼らの周りを取り巻いた。

 ――その音を尻目に、看守は口角を不気味に吊り上げた。

「なんで今まで男ばかりが地位を優先されてきたんだと思う?」

 役目を果たしたスイッチを、看守は道端に捨てた。

「男の方が優れていたから? とんでもない! 女の方が肝も据わってるし根性もある。そんな奴が同じ土俵にでも立たれたら、男の立場は無くなるからよ。ナンセンスな生き物なのは、」

 看守は火薬の匂いが漂う道に背を向けた。

「……あななたちの方よ」

 ポケットから無線を取り出しながら、そのまま曲がり角へと姿を消した。

 取り残されたモノたちは、もう動くこともなく使われることもなく、ただただ静かに終わりを物語っていた。


 〈GAMEOVER〉

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