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息を吐くと、その呼吸音が跳ね返ってくるほどよく響いた。
もう見えなくなってしまったというのに、看守は二人が行ってしまった先をまだ見つめていた。
「……静かだな」
その呟きも、怖いほどによく自分の耳に返ってきた。それを体の芯まで沁み込ませるように、看守は大きく息を吸った。
「静かだな!随分と大部隊で戻ってきたはずなのにさぁ!」
今まで溜め込んでたものを全てぶちまけるように、看守は叫んだ。
それが合図となったのか、ジャッ!と威勢のいい音を鳴らすと、四方八方からそれは火を噴いた。
持ってるじゃん、拳銃。
看守は心の中で突っ込みながら、髪を棚引かせて仰向けに倒れた。
ああ、これだから男ってのは……。
特にこれといった理由もなく、看守は小さく毒づいた。しかしその頭の片隅には、違う男が映し出されていた。
何の肩書きも、正義感も無視してただ自分の意思だけでこちらを覗き込む、その澄んだ瞳――。あのキースという男ともっと早く出会っていたら、自分は変われていたのだろうか。
笑えない空想を胸に、しかし看守は満更でもない顔をした。
そして静かに目を閉じると、全てを託した彼と共に意識を手放した。 →26へ
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