12
手頃そうなものといったら、スタンガンだろうか。よく分からないまま キースはそれを手にすると、倒れてきた盾を奪ってそれで看守を払いのけ、体制を崩した輩に押し当ててみた。
一瞬看守が面白いほどに跳ねて、動かなくなる。とても簡単な作業だった。
その時、こちらへ飛び込んできた看守が目に入り、慌ててキースはまたそれを突き立てた。跳ねて、動かなくなる。
また来る、当てる、跳ねる、動かなくなる。
工場でベルトコンベアに流れてくるものを加工していくように、キースは手際よく看守を動かない物体へと仕上げていった。
来る、当てる、跳ねる、動かなくなる。
また来る、当てる、跳ねる、動かなくなる。
またまた来る、当てる、跳ねる――。
「……はははっ」
単純作業がどんどんパターン化されていくにつれ、手際は早くなる一方だ。それがキースの中で何かを加速させていた。
「ははっ、あはは!あははははははははっ!」
何が愉快なのか、本人にもよく分からないままキースは笑った。息が吸えなくなるほど笑って、また当てて、跳ねて、倒れる。来て、笑って、跳ねて、倒れて――。
「あはははははっ!ひゃはっ!はははは――」
しかし笑い声は、発砲音一つですぐ止んだ。
キースはよろめきながら、傷口を抑えることもなく緩み切った口角をへらりと吊り上げた。
肩からダクダクと溢れる血を眺めながら、ゆっくりとスタンガンを自分の首にあけた。
ボタン一つで、キースの視界はあっけなく暗転した。
〈GAMEOVER〉
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