「どうしてここにいるの?」

 患者用の寝巻に身を包んでいた彼に、キースは率直に尋ねた。こんな薄暗いところにちゃんとした病室が存在しているとは思えない。もしかしたら迷ってここまで放浪してきている可能性もある。そうしたら連れて帰らなくてはいけないのはキースだ。まずは彼の目的をはっきりさせておきたかった。

「どうして? さあな。気が付いたらここにいただけだ。それよりもさ――」

「駄目だよ。ここは安全とは言えない。早く戻ろう」

 迷子と判断したキースは彼の腕を取ろうと手を伸ばした。が、

「やめろよ!」

「ゔっ!」

 突然鈍い痛みが走り、手を引っ込めてしまった。彼の手には、大層立派なこん棒が握られていた。管理員が腰に下げていたものと同じだった。

「そんなの! 俺が! 俺が決める! ことだ!」

「おい! やめ――ぐはっ!」

 彼がこん棒を振り下ろす度、キースの頭に鋭い痛みが走った。巻かれていた包帯が潤ってくる。今にも髪からしたたり落ちそうなくらい充分に血を含んだところで、キースは成す術無くその場に伏した。

「何でも! かんでも! なんで他の奴が! 口出ししてくるんだよ!」

 痛みは絶えず襲ってくる。彼の細い腕からは想像できないほどの強い力で、尚もキースは殴られ続けた。

「俺は! 何も悪くない! ここにいるのも! 悪い事してないのに! なんで! なんで……うわああああああっ!」

 肉を叩く鈍い音は、未だ絶え間なく刻まれる。

 抵抗する者がいなくなろうとも。いつまでも――。


〈GAMEOVER〉

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