第7話 mari―後編

私の契約は切れて、それからライブハウスや路上だけで活動した。




もともと音楽は、趣味だった


プロになろうとも思っていなかった


あの人がいなくなって、私は作曲をはじめた。



あの人のことだけを歌った…



そして たまたま、プロデューサーに私の歌が聞かれデビューした。 それだけだった…




私は、ただ歌い続けた






やがて私は詞が書けなくなった


ほどなくして曲も書けなくなった


だから今までの曲を歌った






ある日 歌っている最中に私は空っぽに なった

歌詞もメロディーも頭の中から消えてしまった


空っぽになった私に、どこから ともなく 優しい暖かな風が吹いた



その時、自分には、もう歌うことが必要がなくなったってことがなんとなくわかった



私は歌うことを止めた





私は、あの人がいなくなってから、ずっと泣いていたんだ、何年も…




私の涙は止まった


歌と一緒に





あなたは、もういない


私の心は、その事実を受け入れた




もうすぐ あなたの命日だ あなたが亡くなって何年も過ぎた




私が作った歌は、あなたのこと だけだった



私は、あなたのことだけを歌い続けた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る