人として生きる編
変わった日常
sideゲント
「行ってしまうのですねお兄様」
上目遣いで泣きそうになりながら覚悟があるなら止めないみたいな顔でリトルシスターが言ってくる。
「ねぇこれ毎月やるの?4回目だよ?月一で帰ってきたら出る時に毎回やるの?」
コミュニティから自分から出ることを決めてから約半年、いろんな事情でコミュニティに所属するのは問題があるという結論に至ったらしく、自主的な脱退が認められたので俺は俺でコミュニティを作り、自分を高めるために修行することにした。
だが、それに大反対をしたのは予想通りというか予想外というかマイリトルシスターだった。
俺の言うことは基本的に聞くいい子だったはずだが珍しく我儘を言い・・・・・・黒ウサギの名誉の為に伏せるが泣き疲れるまで5時間と言った所だった。
その時にいろいろあってある程度までコミュニティを成長させるまで会うつもりはなかったのだが月一ペースで里帰りする条件を飲む破目になったのだ。もっとも最初の要求は毎日帰って来いという事だったのでだいぶマシなったのだが。
「コミュニティに帰って来て貰えないのですか?私からも皆に言いますので」
「あのな?俺も帰る場所あるんだよ。ここは故郷ではあっても帰る場所じゃないんだよ。それに俺の部下を路頭に迷わせるわけにはいかんしな。また来月来るからそれで良いだろ?」
「・・・・・・約束ですよ?もう勝手にいなくならないでください」
「それは保証できない。俺のコミュニティにもそこそこ有名になったし、守るもんも多いしな」
妹をなでて適当なことをいう。守るものの所でリトルシスターに笑いかける。
「えへへ。ハッ!? お兄様!」
「はは、じゃ、行ってくるよ」
「いってらっしゃいませ!」
見送られながら境界門をくぐり抜けて、”まだ”7桁外門にあるコミュニティの本拠地に向かう。途中から待ち構えていたらしい商業コミュニティの勧誘を半ば適当に受け流しながら商談につなげるように言いくるめていく。
自分だけで集めた大金を使ってそこそこいい立地の土地を買い取り、フリーだった人間を引き込み5桁程度の戦力を持つコミュニティになった。
”人材紹介コミュニティ”として今まで創り上げたコネとかコミュニティとの顔つなぎや商談の取りまとめなんかを専門とする『黄昏』というコミュニティ。これは自分の身を守るためとちょっとした天への嫌がらせのために活動をしている。
最もなにも違法なことや問題になることはしていない。天が引き起こそうとしている大きな戦争である”太陽主権戦争”だったかで天が間接的に使おうとして引き込もうとしているコミュニティをこっち側へ引き込んでいっているだけである。間接的に使おうとしてるコミュニティは敵対してたり中立だったりするから恒久的な利益を生む商談とかで引き込むのは比較的楽ではあるが。
「それにしてもコネって偉大だわなあ」
適当な商談を終わらせて適当に部屋で書類を整理しつつ、適当に嘯く。
ウサギ時代に作ったコネは即座に様々なコミュニティへのそこそこの影響力を得ることになり、潰しに来る輩への大きなけん制としてかなり役立っている。
もっともウサギで無くなったから切られた縁も多いがそれ以上にウサギで無くなってから作ることの出来た『大聖』や『女王』などの魔王系統のコミュニティとかと関われるようになったのは大きい。
つくづく仏門は様々な連中と敵対してたんだなと呆れるものである。最も一神教の異端なら皆殺しとか許容する連中に比べればまだましなんだろうが。
「マイナスとマイナス比べても意味ないか」
「そうやねえ。なにもしてないのに賞金首にされたりするからねえ」
「そこら辺は知らんが自業自得じゃねえの?あと、お前誰?」
いつの間にか部屋に入り込んでたネコ目の男へ一瞥してから書類整理を続ける。
「おや、てっきりお礼でも言われるかと思ってたのに。誰とはないやろ」
「心当たりがあり過ぎてわからねえな」
見た所、日本神話系統のようだな。人の思考を読んでいるようだから”サトリ”だろう。結構前に潰した犯罪コミュニティで見た顔だし。
「そう言いながら俺のこと見抜いてるみたいやん」
「妹から聞いた特徴が合致してるからな。で、何のようだ誘拐犯」
「いやいや、恩人に対してそれは酷くない?あとサイやお見知りおきを」
「事実だろ。ゲントだ覚えとけ」
「事実だけども。忘れられるわけないわ」
こいつが来た理由をいくつか思い浮かぶが嫌な予感しかしない。
「予想してるようだし単刀直入に言うわ。コミュニティに入れてくれない?」
「入会金としてサウンドアイズの金貨10枚で認めてやる。ロンダリングはメンドイから表の金で頼む」
「いや、ぼったくり過ぎやろ。そんな金ないし」
「てめえの札付きなかったことにするように掛け合うためだ」
「お前なら1枚あれば十分やろ」
「お前みたいな不良債権入れるんだそれくらい貰わんと割に合わん」
「意外やな?てっきり断られると思ったら別に入れても構わないと思ってるみたいやん」
「俺含めて問題のないやつはこのコミュニティにはいねえよ。むしろどこかに目をつけられてたり敵視されてる奴かしかいねえし」
どこにでも問題児や異端児なんかの身内の恥は存在するし、逆に手に負えないから追い出された類も結構いる。類は友を呼ぶというかそういう類にはなぜか顔が広いというか縁があるというか。
その筆頭みたいな立場だからかいくつかのコミュニティには敵視されまくってたりする。特に階層支配者みたいな物理的に秩序を守る連中にとっては大きな爆弾に見えるらしい。まだ7回しか迷惑をかけてないというのに。
「確かに問題児ばっかやな」
うるさいな。で、払うの払わないの?
「払いますわ。ここにいるのも楽しそうやし。分割でええか?」
「いっとくけど仕事はキッチリしてもらうからな。しばらくただ働きな」
「当然やな。ただ働きはきついなあ」
「知るか」
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