袋小路の選択肢
side黒ウサギ
誰かに担がれて運ばれていながらも呆然とさっきの感覚について考える。
あの化け物を見て感じた感覚は既視感、よく見た光景を連想させた。そして忘れ去られた兄の記憶。
でも私に何ができるというのでしょうか。いつも兄について行くだけで自分では何もできず、周りの人からは笑って助けてもらっていた。私にはどうしようも出来ない。戦うことなんて出来もしないし、知識も考えも浅い若輩者。強大な恩恵だって使い方はわかっても力量がないから使えない。知識も知恵も経験も力もない子兎。
なにも出来ない。
その事実に涙が出るも、考えることだけは止めない。今、考えることすら止めてしまえば、兄は忘れ去られて怪物として退治されてしまう。それだけは嫌だ。
考えないと兄を救う方法を
大人たちに言う?知らない人には説得させるどころか話すら聞いてもらえない。
ならば知ってる人に言えば?それなら地域支配者の所に行けば可能性はある。
なんて言えばいい?何を言えばいいのかわからないが着くまでに思ったことや考えたことを全部言えばきっと何とかなるはず。
そして気づく、兄の顔が思いだせないことに。
必死で思いだそうとするも霞がかかったようにぼやけていて、今までの思い出を思い返そうとしてもそれが思いだせなくなってきていることに気づいた。
慌てて今までの思い出も思いだそうとするが、兄の記憶だけ靄がかかったかのように記憶が薄れてる。いや、思いだせなくなってきている。
「そのまま時間切れを狙うのがいいんじゃないか?それまで生き残れば勝ちだし」
それではお兄様はいなくなってしまう。
「別にかまわないだろ?そうなればお前がコミュニティで誰からも愛されるようになる」
・・・・・・でも
「どうせ、兄の事は忘れるんだ悲しくはならないよ」
・・・・・・。
「なんでそんなことを言うのかって?諦めて貰うと俺も助かるからね」
・・・・・・。
「それでも諦めたくないか。やれやれ子供は素直だねえ」
・・・・・・。
「それでどうするんだい?誰もあれの事は誰も覚えてないんだからお前が騒いでも意味ないよ?」
・・・・・・。
「範囲はこの外門だけだけど助けを求めに行ってたら時間切れは確実だね」
・・・・・・。
「そうだな。無理だから諦めな」
・・・・・・。
「悔しいだろうけどすぐにそれも忘れるさ」
諦めるしかないのか。なにも出来ないし、なぜ悔しいのかもわからなくなってきた。それが悔しくて悲しくて
「おいおい、マジか!?」
大きな爆音と高らかな宣誓が外門に響く。
「あれは・・・・・・!!」
箱庭では知らないものはいないと言われるほどの有名な階層支配者達の連盟” ”。
魔王退治を専門にしているだけあって魔王の退治或いは封印率はほぼ100%の絶対的な救いが現れた。
「予想より早かったがこれはこれで問題ないか、あとはあんたがどうするか決めるだけだね」
わたしは・・・・・・!!
「ん。降ろすよ?」
「ありがとうございます」
頭を下げてすぐに駆け出す。
「無謀だけど止めないよ。頑張りな」
背中から掛けられる言葉に背を押されるように。
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