fence
その柵は豪華な庭園を護るため、そして飾る為にそこ
にあっただけだった。
庭園の主は金に溺れ男を漁る妻を愛することに
疲れ果てていた。
庭師は主の為にと庭園を磨いていた。
妻は自らが造らせた庭園に足を踏み入れることを
しなかった。
柵は金を練り込んだ高価なものだった。
月の明かりに照らされ、花道を照らし
光り輝く薔薇のアーチが美しかった。
主は妻を初めて庭園に連れていこうとした。
見て欲しかった、どれだけ愛していたかを。
妻は足を踏み入れず、近くの展望台のベランダから
庭園を見下していた。
庭師が目にしたのは柵に突き刺さる妻だった。
ベランダには黒い人影が叫んでいた。
柵はただ、そこにあっただけだった。
殺意も、感情も何もかもを持っていなかった。
妻が貫かれ、月に照らされていようと
柵はその場にたって見せた。
薔薇のアーチに映し出された残酷な影絵は
庭師の心に深く残り
主は庭園そのものを燃やしてしまった。
甘い香りと、ものの焼ける匂いがあたりに漂った。
燃え尽きた庭園には3人の燃え滓と柵だけが残った
高熱に当てられた金は溶けだし、もう二度と
光を反射することは無い。
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