『本当の』欠けた七不思議 ~奮起、そして偵察

「来たわね、。……そう、真相に気づいたようね」

 待ち受けていたのは『鏡の中の自分自身ドッペルゲンガー』。この鏡が怪物モンスターの物語の根幹。この裏に居る生徒のうめき声こそが、鏡の世界から声が聞こえるという物語のオチ。

「そうよ。だからその鏡を壊して真実を暴露するわ。そうすれば七不思議あなたたちも存在できない」

が明かされた話はもう不思議じゃねぇっす。本当の事件として扱われ、風化していくのが定めっすよ」

 燕が手帳を手にして口を開き、琴美が補足するように告げる。運命の輪から緑のインガが輝いて消え、琴美の傷を塞いでいく。

神話災害クラーデを解決して、元に戻ってゲームするの」

「そうね。学園を返してもらうわ、七不思議」

 明日香と詩織が日常を守るために武器を構える。同時に運命の輪から赤と青の光が一人ずつ消え、明日香と詩織の傷を消し去った。

「ええ。言われずともの意志わかっている。自身だから。だけど当然わかっているわよね? そうはさせないという事を」

 自己の消滅を避ける。それはごく当たり前の戦闘理由だ。

 だからと言って、これを見過ごして起きるであろう蔵星学園の悲劇を見過ごすわけにはいかない。そしてそれができるのは神子アマデウスだけなのだ。

「ここでなら、本気が出せる。大元の鏡の近くなら」

 鏡像から感じる圧力プレッシャーは前に戦った時の比ではない。ましてや今ここには、未知の七不思議が鎮座しているのだ。『首吊り枝垂れ桜』『踊る人体模型』……。

 未だにどのような攻撃をしてくるかわからない相手だが、神子達は恐れず立ち向かう。


「『鏡の中の自分自身』は……確かに強くなってるわね。具体的には攻撃値と生命力が跳ね上がってるわ」

「OKっす。具体的な説明はともかく、動きが素早くなってタフになったのはわかったっす。例の『アイツを攻撃したら傷を写される本体攻撃時、重傷2を受ける』『心を読む命中-1』も健在っすね」

「でもここからなら鏡を破壊することができるわ。殴って壊す武勇で判定か、霊的な儀式で壊す霊力で判定か」

「んー。ちょっと堅そうだけど、運が良ければクリティカルだと一撃で行けるかも?」

 燕、琴美、詩織、明日香は目まぐるしく自分達の姿を形取る鏡像を見ながら、相手の能力スペックを確認する。面倒な相手だが、捕らえられないほどではない。むしろ問題は、現状未知の二つの七不思議脅威だ。だがそれは、

「調べれば済む話よ。先ずは『人体模型』は……ふん、大したことないわね。服を破って奪われる恥辱の変調を受けるだけよ」

「絶対いやよ! っていうかなんで人体模型が服を奪うのよ!」

 手帳を閉じた燕の言葉に振り向いて叫ぶ詩織。明日香と琴美はえろーい、とハモってそれ以上は何も言わなかった。

「裸だと恥ずかしいんじゃないかしら。いろいろ丸見えだし」

「そうなんだけど! っていうかそういうモノでしょうが人体模型は!」

「大したことないわよ。服が破られても恥ずかしくて動きが鈍るだけだし。具体的には――」

「具体的にどうだろうと乙女として嫌なの!」

 がー、と叫ぶ詩織。燕は肩をすくめてその怒りを受け流した。

「次はあたしが調べるねー。八咫烏ごー!」

「……調べてるのカラスさんすよね?」

 明日香の八咫烏が『首吊り枝垂れ桜』に向かう。どう見ても自分では動いていない明日香に琴美がツッコミを入れた。

「こまけぇことはいいんだ……これマジヤバい! 『枝垂れ桜は死体を一つ求めてる対象一人は致命傷表を振る』ってマジ死んじゃう!」

 明日香の言葉に動揺が走る神子達。七不思議の中で明確に『死』について描かれた物語。故にその効果は確実な誰かの死。神の子であっても、死からは避けられない。神話の中には死から蘇る者もいるが、それだって楽な手段ではないのだ。

 燕も琴美も、古木の枝垂れ桜を見る。危険すぎる脅威を動く前に叩くことはできる。だが、神子達はまず鏡を破壊しなくレはいけないのだ。枝垂れ桜に手を割きながら鏡を破壊できるか? 危険な綱渡りを前に唾をのむ。

「問題ないわ。あれは私が何とかするから」

 唯一詩織だけが、『死』を告げる七不思議を前に恐れることなく言い放つ。死を恐れていないわけでは無いし、明日香の言葉を疑っているわけでもない。全てを理解し肯定しながら、その上で『任せて』と詩織は言った。

「わかったわ、生徒会長。『枝垂れ桜』は任せるわ」

「ええ。じゃあ行くわよ!」

 詩織の号令と共に神子達は動き出す。

 七不思議を終わらせるために―― 

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