冒険フェイズ ~第一サイクル
飯島燕 ~情報とお金は重要よ
「これで全員ね。じゃあさっそく
そろった四人の
「んー……じきそうしょうとおもう」
気だるげな表情で明日香が言った。詩織にスマホを取り上げられ、どこか手持ち無沙汰である。
「時期尚早って言いたかったんすかね? ああ、どちらにしても賛成っす」
明日香の言葉に首をひねってから訂正する琴美。二人の意見に詩織は眉を顰める。この人たちも自分の親神に言われてこの
「そもそも、その怪物……この学園の七不思議さんは何処に居るんすか?」
「う……」
琴美の言葉に答えに詰まる詩織。蔵星学園の七不思議の噂は一応知っている。あまりにくだらないため、記憶の片隅に追いやっていたのだが。
だがこの神話災害はそれらが力を持った、というだけしかわからない。七不思議がどういう形でどういう手段でこの学園に被害をもたらすのか……そこまでは詩織もわからない。
「そうね。先ずは情報収集が必要だわ」
懐から手帳を取り出し、燕が言う。椅子から立ち上がることなく手帳をめくれば、そこに浮かび上がる文字。それは知恵の神トトから授かる託宣とも言える
「すごい、手帳でググってるんだ」
「すっ飛ばすわよ、諏訪さん」
失礼なことを言う明日香を一瞥して、燕は手帳をめく……ろうとしてその手を止める。止まった燕を見て、詩織と琴美が問いかける。
「どうしたの? 飯島さん」
「ああ、あれっすか。実は書いてないとか」
「杖でしばくわよ、犬っころ。そうじゃないわ。重要な事だから聞いてほしいの」
一泊置いて燕は説明を開始する。三人の視線が集中したことを確認し、燕は口を開いた。
「この
四人とも神子であるため運命の輪は認識できるし、黒の力が貯まっているのは理解できる。その力がこちらの行動を阻害するように、薄く纏わりついているのだ。だが――
「黒の力は感じるけど……えーと……」
「具体的な説明の方が分かりにくいとかどーなんすか、知識の神様」
詩織と琴美が燕の
「気にしないで。ともあれその波動を一時打ち消すことができるわ。七不思議の情報を調べる障害を排除できるの。だけど問題があって」
「問題?
明日香が運命の輪を見ながら問う。
神の子はその親神に沿った恩恵を使用することができる。
だが、それにはいくつかの条件がある。その代表的なものが運命の輪に溜まったインガと呼ばれる力の流れだ。五色あるインガが一定の条件に達すると、恩恵が使用できるようになる。
そしてその条件は、恩恵により異なる。明日香が扱うアマテラスの恩恵と、燕が使うトトの恩恵。その条件は異なるのだ。明日香が十全に恩恵を仕えたとしても、燕がそうだとは限らない。
「いいえ。運命の輪は問題ないわ。だけどそれとは別の条件があるの。
――
は? 三人の目が半眼になる。
「神貨よ。神の使う硬貨の事よ。それが要るの。本気で要るの。無いと満足に様さができないかも。なのでみんなが持っている神貨を私に貸して」
神貨。燕の説明通り、神々の世界で使用される貨幣である。神の武器や道具などを取引するために使用され、四人の武装もこれにより取引されていた。そしてまあ、親は子供に多くお金を持たさない者である。
「盾を買ったら殆ど消えたわ」
「お母さんお金くれなかったの……」
「霊薬重要っすよ」
「……仕方ないわね」
不満な表情を無理やり押さえ込み、燕は書物をめくる。燕の懐から神貨が光り、宙に浮かんで消えていった。何かを悟ったかのように燕は眼鏡の位置を直す。
「ふ、造作もなかったわ」
「さっきまで物凄くビビってたっすけどね」
「ぐ……! ともあれみんな聞いて。怪物の手がかりが分かったわ」
燕の手帳には、七不思議の秘密が記される。
蔵星学園七不思議。
『瞳が光るベートーベンの絵』
『終わらない階段』
『踊る人体模型』
『赤マントの怪人』
『首吊り枝垂れ桜』
『プールから現れる白い手』
…そして欠けた最後の七不思議。それこそが怪物の正体。
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