もしもし
もしもし。
…もしもし。
ねえ。ねえねえ、電話の時のもしもしの由来って貴方知ってる? この前私聞いたのよ、誰だったかしら誰かに教えてもらったの。
「私は妖怪ではないです」っていうことなんですって。
妖怪ってね繰り返せないんですって、同じ言葉を続けられないんですって。「もし」は言えるけど「もしもし」は駄目なんですって。ほら。「もし」が続くから。
ね。迷信よね。
私「もしもし」って言ったものね。
電話ってすごいわよね。
え? ううん別に変わってないの話変えたりしてないわ。ほら。私言えるじゃない? もしもし。ほら人間みたいに言えるじゃない? ね。だからね。そうなのよ。
角があっても目が多くても、私電話ならこうして人間みたいにお喋りできるの。
人間みたいでしょう? 私声だけだったら人間みたいでしょう?
だから私電話って好き。直接貴方と話せるのに、直接会わなくて良いんですもの。
もしもし。
もしもし。
もしもーし。
こんなに繰り返さなくていい? そうね。そうよね。うるさかったかしら。でも良いじゃない。電話ですもの。声だけなら私人間みたいに。
あー。
うん。あのね。私間違っていたわ。間違っていたかもしれない。
やっぱり「もしもし」は「私は妖怪ではないです」なのよ。
だって私そうだもの。今そうだもの。人間のふりをするために何度も「もしもし」って繰り返すの。私は今妖怪ではないの。電話している間だけ、私は人間なのよ。
…違うわ。
決して私は人になりたい訳ではないのよ。だってそれならさっさと角をへし折るわ。でも、たまーに、貴方と同じになりたくなるの。そういう時私は貴方に電話をかけるのよ。
知っているわ。貴方が妖怪の私を受け入れてることも知っているわ。私はそのままでいいって貴方が思っているのも知っているわ。むしろ貴方の趣味からして人間の私より妖怪の私が好きでしょう?
でも貴方と同じだとほら結婚とかできるじゃない? 妖怪と人間だとほら、障害ってあるじゃない? 私障害って嫌いなの。面倒じゃない。ん? 結婚? そうよできるならしたいわよ。
あら私まだ貴方に愛してるって言ってなかったかしら。
それならさっきのが愛の告白だったっていうことにしといてちょうだいな。いいのよ返事なんか今度でいいからそれよりお喋りしましょうよ。何か話したいことはある? 私は貴方の声が聞きたかっただけだから、貴方の好きな話でいいわよ。
もしもし。もしもーし。さあさあお喋りしましょうよ。
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