第4話 幕間

 そこは不思議な場所だった。なめらかな長机が部屋の中央に整然と並んでいた。イスのような構造物もあり、長机の上には透明なガラスのような板をはめ込んだ箱がいくつも置いてある。イスに座って正面を見ると、壁一面にずっと大きなガラス板。

 要するに、長机の上にはパソコンのようなものがあり、正面のガラス板は、壁に立てかけられた巨大なモニターだった。何かの管制室。そのような面持ちがあった。しかし、そこには誰もいない。明かりも点いていない真っ暗闇。人に荒らされたような形跡はなかったが、床や机の上には大小の石ころが散乱している。上から落ちてきたのであろう石ころに潰されたパソコンも見受けられる。出入り口と思われる扉は、大きな岩に押しつぶされ、人の侵入を拒んでいる。パソコンはすべて画面が死んでいた。キーボードを見ると、見たことのない文字がキーに描かれている。間違いなく、現代の人間が作ったものではなかった。

 と、突然一つのパソコンが点灯し、キーボードが、カタカタと動き出した。そのモニターの光で、パソコンを操作した人物の影が浮かび上がる。「それ」は確かに人影だった。二本の手足に、丸い頭。しかしその人影は、誰かと決定するものがなかった。パソコンの光に照らされながら、黒い腕を伸ばし、黒い指でキーボードを操作する。頭の輪郭ははっきりしていたが、鼻や耳が見える一方で、目がなかった。探偵もののアニメなどで、犯人の特徴を隠して描写する、シンプルな人影そのものだった。

 ほどなく、パソコンのモニターにも人影が映る。こちらも、まるで強いバックライトで照らされているかのように、顔の見えない黒い人影だった。光が強くて、周囲の様子もわからない。

「首尾は上々のようだな」

パソコンの中の人物が口を開く。

「はい。ようやく六本の『杖』が全てそろいました。『計画』への参加も近々なされるでしょう。」

パソコンを操作する人影が答える。

「最後に加わった『光』も驚くほどの成長の早さです。私はこれを使えるようになるまで三年かかりました。彼女はたった一年で。」

「まだ完全に使いこなせているわけではないさ。だが、それを待つ必要もないし、こちらとしても早めに手を打ちたい。」

「『計画』を前倒しされる?何か込み入った事情が?」

「前倒しをするわけではないさ。そもそもが何億年前の計画なのだから。完成があまりにも遅すぎているくらいさ。」

「『器』が完成したと?」

「察しがいいな。そう、ようやく悲願が成就する。これがお互いのためなのだということは、前から念を押しているはずだ。」

「理解しております。だからこそ私もこうして協力しています。私たちのためでもあるのですから。」

「その言葉、忘れるなよ。」

「もちろん。誠意をもって協力させていただきます。」

「では、我らの悲願のために。裏切り、抜け駆けなど考えないようにな。冥人。」

「我らの悲願のために。そろそろ形の維持が難しくなってきたので、これで。」

そう言って、冥人と呼ばれた人影はパソコンの電源を落とし、暗闇の中に消えた。

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