小さな襲撃、大きなダメージ。
休暇は4日で終わった。
大津からいつでも出動できるよう言われたからだ。
なんでもスパイがまたいるかもしれないという噂がでたからだ。
海賀は結局どこのスパイなのかわかっていない。
また仲間がスパイだったら…。
考えないようにしよう。
もし本当なら大津が狙われるのは確かだ。
備えておくのが最善だろう。
だがほとんど情報がないため大津も身動きがあまりできないそうだ。
出歩いて狙撃でもされたらいくら大津でも回避なんてできない。
「FACには怪しい人物の捜索をしてほしい。場所はこのチャコ全体。パトロールみたいなもんだ」
「それならパトロール部があるじゃないですか? それではだめなんです?」
軍にはちゃんとパトロール部という治安を守るための部署が存在する。
なのにわざわざFACがパトロールするのも変だ。
「そうなんだがパトロール部はほとんど戦闘経験がない。だからいざ戦闘になってもうまくいかないと思ってね。存在が脅威にはなってるけどね」
「そうですか」
「それとわかってると思うけど特殊部隊というのは秘密で頼むよ」
俺達FACは一応非公開組織。
まだ一部にしか知られていない。
FACは街に向かった。
人が大勢いる。
本当なら人が少ない場所を見回ろうと思っていたのだが考えてみれば大津はそんなところへは行かない。
だったら狙われるのは街中か議事堂くらいだ。
だが怪しい人物の捜索は簡単なものじゃなかった。
その怪しいやつが怪しい格好をしてくれるならすぐわかるがそんなことはしないだろう。
時間だけがすぎていった。
銃を手に街中にいるというのは注目を浴びる。
そのとき一人の人物が目に入る。
フードをかぶっていて顔はよく見れないが壁に寄りかかってこちらを見ているように見える。
「なあ、あのフードのやつ。怪しくないか? なにか状況を探っているようにも見えるし。ちょっと声かけてみるか。バース、ついてきてくれ」
俺とバースでフードのやつに近づく。
近づいてくるのがわかったのか、フードの人物は移動を開始した。
「逃げるのか? スクー、悪いがやつを挟みうちにするから先回りしてくれ。俺とバースで追うから残りは引き続きパトロール頼んだ」
俺とバースは追跡を開始する。
が、相手の足が速い。
これはエルに頼んだほうがよかったか。
すると一本道の裏路地に入った。
これで挟みうちができる。
反対側にスクーが見える。
「そんなに逃げなくていいんじゃないかな? 近づいただけで逃げるのは変だからさ。ちょっとお話聞いてもいいかな?」
「ヒヒッ」
フードの男が笑った。
ちょっと気味が悪い。
「挟みうちかー。3人…悪くない。お話なんて不要だよ? ヒッヒッヒ」
そういうと男は壁にワイヤーフックをかけ、屋根へと逃げられてしまった。
「そんなのありかよ…追うぞ!」
あいつは完全に黒だ。
なにか企みがあるに違いない。
情報を聞き出すまでは発砲を控えたい。
「これじゃあ逃げられちまうぞ! エルを呼んだらどうだ?!」
仕方ないか。
無線でエルに繋ぐ。
事情を説明し4人で追うことになった。
するとエルが俺達にもう追いついた。
やっぱ早いな。
「それであの屋根にいる男でござるな? 拙者にまかせよ!」
そういうとエルも屋根に登り追跡する。
さすがアサシン系男子。
あとちょっとのところで爆発音が聞こえてきた。
「何事だ…?」
音が聞こえてきた方を見る。
議事堂の方角。
大変な事態だ。
レベッカから通信が入る。
「た、隊長! 大変です! 議事堂が、議事堂が襲撃されてます!」
もしかしてこの男は囮でわざと俺達の注意を引き議事堂から遠ざけたのか?
こうなったら議事堂に行くしかない。
「フードの男は後だ! 議事堂に全員で行くぞ。急げ!」
俺達は議事堂に向けて走った。
「作戦成功。囮はうまくいった。あいつらが主力かわからないがいい時間稼ぎにはなった。ヒッヒッヒ」
議事堂についた俺達は驚きを隠せなかった。
味方の兵士の死体がそこにはあった。
「一体なにがあったんだ…?」
「リリー、嫌な予感がするわ…」
とにかく大津のいる部屋へと走る。
銃声が聞こえる。
「大津さん! 無事ですか?!」
「おー、大丈夫大丈夫。ったく。参ったね」
大津は無事だった。
だが近くには見知らぬ2人が横たわっていた。
先ほどの男の仲間だろうか?
「こいつら議事堂前で爆弾を爆発させやがった。そしたらあとは一瞬で兵士殺して俺のとこまで来やがった」
「大丈夫…なんですか?」
スクーが問いかける。
「このとおりな。だが久々に頭にきたぜ。…こいつらなにもんだ?」
「わかりませんが俺達も街中でこいつらの仲間と思うやつがいて追っていたらこのありさまに」
「そうか」
すると後ろから物音がした。
「大津ー! 覚悟! ヒャー!!」
追っていた男だ!
ナイフを持っている!
「ゴフッ…!」
不意な攻撃に大津は反応しきれずくらってしまった。
「このっ!」
リリーが男に発砲し命中。
男は死んだ。
「大津さん!」
その場にいた全員が駆け寄った。
「このくらい平気だよ…それより、事態の収束を急げ」
大津はお腹を刺されていた。
「もしものときは赤寺君。キミに任せたよ」
衛生兵がきて応急処置をしたあとすぐに病院に運ばれた。
これは俺らの失態だ。
そばにいながらあんなことも防ぐことができなかった。
入院していた大津は無事回復したことを聞いた。
FACでお見舞いをしにいったのだが…。
「大津が消えた?!」
なんと大津が消えた。
それだけじゃない。
大津部隊全員が消えたらしい。
「この国どうなっちゃうのっ? お菓子食べられなくなっちゃう? もうあたし、だめなのね…」
もしかしてあのときのもしもってこれのことか…?
「リリーが思うに、辰真がこの国を任されたんじゃん? 変なタイミングだけどそういうことだと思うわ」
いやいやいや、そんなことができるわけがない。
ましてや最近まで軍学校にいて最近軍に入って、言ってしまえばまだ素人レベル。
俺がこの国を守る?
できるわけない。
「そんなの無理だ! まだこの国をよくわかってないのにいきなりトップになれとかそんなバカな話しあってたまるか!」
「じゃあどうすんだ? この国はおしまいか?」
「そうだぜ。辰真。できるできないの問題じゃない。やるしかないんだよ。どんな国にも指導者は必要だ。今はそれを辰真しかできない。このレム様が断言する。お前ならやれる。俺達だってついてるしな」
「辰真…バックアップ…任せて」
「決まりでござるな」
「や、やれますよ。隊長なら! 絶対…」
どう考えても重荷だ。
だが断るわけにもいかないらしい。
それに大津だって消えただけで死んだわけじゃない。
これは一時的なことだ。
それならやるしかないか…。
「わかったよ。とりあえずやってみる」
そして俺はチャコのトップとなった。
国民には大津が死んだことになっている。
本当の事を言ってしまえば不満がでてくるのは間違いない。
不安にさせるわけにもいかないからだ。
「ふぅー。とりあえず理解は得られたな」
「そうね。多少の不満の声はあるけどそれほど多くはないし。大津がここを見捨てて消えたーなんて言ったらそれこそどうなるか…。でもリリー達が全力で協力するから安心しなさい!」
ほんと、心強いです。
にしても大津はどこに…?
「そうだ!」
ケーシーに大津を探させよう。
いい案だ。
俺はケーシーを呼び出す。
「なんの用よ? これでも忙しい身なんですけど?」
「ケーシーに頼みがある。消えた大津を探してほしい」
「はぁ? 嫌よ。仮に探すとして私がまた大津の命を狙いかねないわよ?」
「それは心配ない」
俺は端末のボタンを押す。
ケルベロス一号がすごい早さで走ってきた。
「…わかったわよ」
よし、決まった。
「よろしく頼む」
これでひとまず大津はいいとして、問題は政治だ。
もちろんこの国のこともそうだが他の国にも目を向けなければいけない。
大津はどんなことをしてたんだ?
こればかりは手探りでやっていかないといけない。
すると1本の電話が。
「どうですかな? 一国の主は?」
…誰だ?
「あのー。申し訳ないのですがどちら様で?」
「申し遅れました。日本の首相をしている者です」
?!
どういうことだ?
日本の首相がなんの用だ?
「これは失礼。どういったご用件で?」
「なに、ただの確認ですよ。トップが変わったと聞きましたので挨拶をと」
「それはご丁寧にありがとうございます」
「あと一つだけ言っておきます。我々は味方です。別に信じるかは自由ですがね。詳しく言えば、後ろ盾」
噂は本当ということか?
「そうなんですか」
「はい。それではこれで。他の国にはくれぐれもお気を付けください」
電話が切れた。
それにしてもすごい話しをしてしまった。
おかげでちょっとこの国のことがわかったが。
しばらくすると一人の男が部屋にやってきた。
「これは初めまして。内政関連を担当してますミハエルと言います。さっそくですがこの国の問題が山ほどあるので説明しますね」
これはまた難しそうな。
だがやると決めたんだ。
逃げるわけにもいかない。
「この国には大きな問題として3つあります。一つはこの国の治安です。いくらパトロール部があっても事件が多ければ意味がありません。そして二つ目、この国の防衛対策です。最近敵を防ぐためミサイルを設置しましたがスパイ相手には意味なしです。何か考えなければいけません。そして最後の三つ目ですが同盟国を増やしましょう。今同盟を結んでいるのは日本だけです。ですがこの国を認めていない国がほとんど。そこをなんとかしないといけないでしょう」
山のように難題が襲ってきた。
1つずつ解決にあたるしかないか。
だが一つ目は簡単だな。
警察を作ればいい。
軍がすべて請け負うから手に負えなくなるんだと思う。
「警察を作りましょう。そうすれば治安はよくなるはずです」
「それはいい考えです。さっそく手続きに入りましょう」
公募したところ約5000人が集まった。
これで充分だろう。
「ところで事件というのは何が一番多いんだ?」
「そうですね。喧嘩ですかね」
…さすが子供しかいない国。
俺らはあまり喧嘩はしないが他では起こりやすいんだろう。
それにしても一番多い事件が喧嘩って、平和だな。
それでも日本じゃ一番多い事件は窃盗でどっちもどっちって感じだな。
これで治安のほうは大丈夫だろう。
「二つ目のスパイ防衛対策だが、いくら子供でも荷物検査からの入国にしよう。最初から銃を所持していたらちょっと怪しいし。それと聞き取りだな。どうしてここへきたのかとか聞こう。今はこれくらいしか思い浮かばない」
「それではそうしましょう」
それで三つ目だがこれが一番難しい。
なにをするべきなのかもわからない。
下手をすれば逆効果にもなりかねない。
困ったな。
「そういえばつい最近UAEから連絡を受けまして、なんでも石油を提供していただけるとか。」
石油か。
だけど提供とはどういうことだろう?
これは連絡をとる必要がありそうだ。
「UAEの大統領に電話を。こういうのは会って話したほうがいいのかな?」
「お会いになられるのはいいことだと思います。ではさっそく」
ミハエルは番号を入力しコールしてある電話を渡してきた。
「どうぞ」
それを受け取り耳にあてる。
「もしもし」
繋がった。
「あー、チャコの赤寺といいますが…」
「おー! チャコ! 連絡来ると思ってたよ! だいたいの話しは聞いていると思うんだけど石油いらない?」
「はい。それなんですがお会いして是非話しを聞きたいと思いまして…」
「会っていただける! それはうれしい! ですがこちらはちょっと離れることはできないので来ていただけぬか?」
「わかりました」
「それとこれは内密にしたいので船、飛行機ではなく潜水艦でお願いします。話しは通しておきますから」
「そうですか。それでは後程」
電話を切る。
内密…?
なにかあるのか?
それでも会うことはできるらしいのでさっそく向かうことにしよう。
「潜水艦用意できます? なんか潜水艦で来いと言われてしまって」
「わかりました」
警戒されないようにFACのメンバーは連れないようにしよう。
俺はUAEへと向かった。
どんな人なのかちょっと楽しみでもあった。
着くまで寝ることにした。
そして着いたのか兵士の人に起こされた。
話しは通しておくということだったのですんなり入れたようだ。
そして潜水艦を降りるとUAE大統領が出迎えてくれた。
「いやー! わざわざ遠くからありがとうございます! ささ、お疲れでしょう? 私の部屋で座ってお話しましょう」
そいうと部屋に案内された。
さすがUAE。
どれも高級品に見える。
シャンデリアのある部屋なんか初めてだ。
そんなことより俺は本題に入る。
「それで、石油の提供とはどういうことでしょう?」
「はい。そうですね。無償提供ですね」
「無償?! なにが目的ですか?」
「石油はただの見返り。本当は同盟を組んでいただきたく思っています」
この話しはうますぎる。
なにを考えているんだ?
「さすがにそれは…冗談がすぎますよ」
「冗談ではありませんよ! ただ敵を作りたくないだけですよ。確かに怪しむのも当然。どうでしょう?」
「ではこちらもなにか提供しましょう。なにもかもが無償では気が引ける。と言ってもこちらはあまりいいものはありませんが」
「それなら…そうだ、米国の技術を盗んでいるみたいですね? その技術をちょっと教えていただけませんか?」
そこまでの情報がもうあるのか。
しかし米国の技術は俺達のものではない。
別に隠す必要もないだろう。
「それでいいでしょう。交渉成立です」
それで握手を交わす。
だがまだ聞きたいことがある。
「なぜこのことは内密なんでしょうか? なにか特別な理由でも?」
「それはですね、チャコはまだ国とはほとんど認められていない。その国と同盟を組んだなんて知れたら批判を浴びかねない。そういうことです」
なるほど。
よく考えればそうか。
帰り際、UAEの大統領に小声で話しかけられた。
「あくまでも表ざたにはしません。仮にチャコが戦争を始めても裏からの支援しかできません。そこらへんは了承を」
「わかりました。それでは」
潜水艦に乗り、チャコへと帰る。
あの大統領しっかりしてるなー。
まだわからない部分はあるけれど頼もしいことではある。
これで一歩前進しただろうか?
この調子が続くといいけどな。
チャコに着いてさっそく米国のAIロボットの技術をUAEに教える手配をした。
「ほんとにいいんですかー? せっかくの技術ですよー? ホカは不安ですっ!」
ホカには悪いがこれしかない。
それにしてもなんかうまくいってるな。
運が味方しているようだ。
だがいいことばかりではないようだ。
大津がいなくなったのを見計らって各国に動きがあるようだ。
一部では軍の動きが活発化しているとか。
戦争にならないといいが。
「あっ! 辰真! 帰ってきたのね! すぐで悪いけど開発室に来てくれる?」
リリーにそう言われたので開発室に向かった。
FACのみんなとホカがそこにいた。
「実はホカが辰真のいない間に2つの兵器を完成させたのよ」
「これはですねー…なんと独自開発なんですよっ!
フルアーマーはどうやら人に装着型の兵器でガードマスクというのが…ブルドーザー…? に似ている。
このガードマスクという命名ミスってませんか?
「ホカがまた試せっていうんだよ。詳しいことは言わねえから身を以て体験するしかないってこった」
バースがフルアーマーを装着して試験場に入りガードマスクの前に立つ。
あのアーマー、よく見ると背中に小さなミサイルポッドがついている。
ガードマスクの方は大きな壁状の物が左右についていて大きめのロケットランチャーにガトリングガンが装備されている。
「んじゃっ! バース君っ! まずはガードマスクにターゲットして背中のミサイルを飛ばしてみようっ!」
ホカが言うとバースはなんの動作なしに背中のミサイルをガードマスクに放つ。
それをガードマスクは壁状の物を前にだして見事防いでみせた。
「アーマーのミサイルは全部で16発っ! ロックオンは目視するだけっ! あとは自動的に射出するよっ!」
なんて兵器を作ったんだ。
並の相手なら木端微塵じゃないか。
「ガードマスクは強固の壁に左右に1門ずつのロケットランチャー計4発に6000発のガトリングガンを一つ装備したとんでも野郎だっ!」
あー壁を前に突き出してる状態だとマスクの形に似てる。
それでガードマスクね…。
「フルアーマーはさすがにロケットには耐えられないだろうからガトリングいってみようっ!」
そしてガードマスクが装備するガトリングガンが回りはじめる。
「いくらアーマー着ててもガトリングは無理だろ! や、やめろおおおおおお!!」
バースが両手を前に出して防ぐ体勢に入る。
バース、生きて帰ってね…。
だがガトリングガンが命中しても多少凹みはしているがなんともないようだ。
「だいじょーぶっ! 両方ともチタンでできててちょっと私なりの加工をしてあるから銃弾じゃなんともないっ!」
満足気にしているホカだがこれ、いつから開発してたんだ?
「4年粘った甲斐があったっ!」
そんな前からなのか。
あとから聞いたが2つともそれぞれ1つずつしかないからケルベロス1号をホカが所有してアーマーとガードマスクをFACが使うことになった。
「それにしてもすごい兵器でござった」
「でもあたしは呼ばれる意味なかったなー。お菓子食べれてよかったけど」
「で、でもあの兵器が使えるなら、ちょっと安心…だよね。怖いけど」
「私たちの…存在意義…」
赤城がサラッと痛いこと言ったが気にしたら負けだ。
俺は議事堂に戻り休憩を取っていた。
…疲れる。
今までしなくてよかったことをしはじめたんだ。
大変すぎて身が持つかどうか…。
「大変でござるな」
いつの間にかエルが近くに。
「本当に疲れる。気を抜くタイミングがわからない」
「拙者にその疲れはわからぬが同情するでござる。それとケーシーから聞いたでござるが国際軍なるものができたと言ってたでござるよ?」
…国際軍?
次から次へと気が休まらない。
それはなんだ?
UAEに聞いてみるか。
「大変だぞ、赤寺さん。国際軍の目的は…チャコだ」
「本当ですか?!」
こうしてはいられない。
なんとかしなければ。
最近までは人権派団体が各国で猛抗議をしてなんとか戦争にはなっていなかったが大津が消えた今そんな抗議の声も無視し攻めてくるつもりだろう。
こんなことになるなんて思いもしていなかった。
今すぐ国際軍に抗議しなければ。
「国際軍に抗議する! 大統領、ありがとうございます」
「裏で支援に回ろう。それと気を付けろ。どうやらこの国際軍、米国は関わっていないらしい」
どういうことだ…?
「恩にきます」
さて、とりあえず日本に確認を取ろう。
俺も動かないといけないから日本に誰か行ってもらおう。
「スクー、悪い! 日本に行って詳しい情報をつかんできてくれ」
「は、はいっ! わかりました…!」
あとは米国だ。
ここは俺が行くべきだろう。
無線でリリーに繋ぐ。
「悪い、俺ちょっとここを離れるからチャコの指揮をその間やってほしい!」
「オッケー! 早く行きなさい! ここはリリーに任せて。一応パムを護衛に連れていきなさい!」
頼もしいな。
パムか…最近あいつと話していなかったが大丈夫か?
「赤寺隊長ー? なんか護衛がどうとかって…」
「おう! ちょうどよかった。米国にいくからついてきてくれ」
「いいですよ」
ジェット機に乗り米国へと向かう。
離陸して数分、サイレンが鳴った。
「なんでしょうかね?」
パァンッ!
機内で銃声!?
瞬時に敵がいると察知し銃を取り出す。
「赤寺隊長は僕の後ろに。先行します。なんとか脱出用航空機に移りましょう」
このジェット機にはもしなにかあったときのために10人まで乗れる航空機を搭載している。
それよりこんなにスパイが入りこんでいたなんて。
「おかしいですね。血の跡はあっても死体がない。それが逆に不気味です」
「それだけじゃない。なぜ死体は隠して銃はそのままなんだ…?」
俺の護衛についていた軍人達の銃が散らばっていた。
相手が何人いるのかわからないまま後方にある航空機を目指す。
通路に一人倒れているのがわかる。
「僕が確認してきます」
パムが倒れている人物に近づき生死を確認しようとしたとき、倒れていた者が起き上がり拳銃を構えてきた。
「ばあああぁぁかッ!」
「くそっ!」
パムは手にしていた拳銃で相手に発砲。
倒れていたやつがまた倒れた。
今度は本当に死んだであろう。
「パムはすごいな」
パムに近寄るが様子がおかしい。
「赤寺隊長、すいません。撃たれたみたいです」
ガクッと倒れ込むパムに俺は声をかけることしかできなかった。
「パム! パム! そんな…。」
「赤寺隊長…俺はもういいです…早く、早く航空機に…」
俺はパムを背負い歩きだす。
見捨てるなど俺にはできない。
しかしあとちょっとのところで後ろから敵がきた。
「こんなときにっ!」
「隊長、ここは俺が引き受けます。早く!!」
俺は急いで航空機のエンジンをかけに入る。
そこへ無線が入る。
「隊長、どうやらジェット機に爆弾が仕掛けられてるみたいです…敵が言うにはあと2分で爆発すると…もう時間がないです。行ってくださいっ!!」
「そんなことできるわけ…」
「行けッ!!」
あんなパム、初めてだ…。
俺はエンジンをかけ脱出に成功した。
ジェット機に目をやると爆発して部品の数々が吹っ飛んでいる。
パム…お前の死…無駄にはしない。
なんとか米国についた俺は米大統領に会うことができた。
「お疲れのようですね。それにしても大津さんはどこへ…。それで要件は?」
「…平気です。要件ですが、あの国際軍のことです。どういうことですか?」
「あれは我々にもよくわかっていません。だいたい検討はつきますが…」
「なんとか止めることはできませんか?」
「そうですね…応じるかわかりませんがちょっと手を打ってみます」
「ありがとうございます」
「ですが時間が必要です。それまでなんとかしのいでください」
「わかりました」
協力してくれて助かった。
俺はなんとかリリーの連絡を入れる。
「リリー? すまん、迎えを送ってくれ」
「どういうこと? ジェット機は? とにかくそれどころじゃない! 国際軍が攻めてきてるの! なんとかして戻ってきて!!」
なんてことだ。
俺は米大統領に頼んでなんとかチャコに帰れるようになった。
「今行く! 耐えてくれ!」
―リリー視点(チャコの状況)―
辰真が帰ってくるまで耐えなきゃ。
でもどうすれば…。
「前線はロボット兵を全力投入! 手の空いてる者は国民の非難優先よ! 急いでっ!」
任された以上頑張らないといけない。
それにしても国際軍…行動が早い。
そこまで私たちやチャコの存在が邪魔だというの?
「まずいぜ。前線がロボだけじゃ足りてねえ。俺がフルアーマーで出るぞ! 押されれば終わりだ!」
バースが行ってしまった。
こんなときに好き勝手に動かないでくれないッ?!
「…私も行く」
赤城まで?!
「ガードマスク、連れていくね…」
もうー!
とにかく非難が最優先ね。
「じゃあ、レム様は適当に出遅れた避難民でも守ろうかな」
「拙者もレムについて行くでござる」
「私とチャコ軍はシェルターに行って国民が避難完了するまで守るわよっ!」
私たちは銃を手に取り戦闘を開始する。
早く帰って来いっ!
ばか辰真…!
「ゆっくり! ゆっくりシェルターに入ってくださいー!」
あと少し、あと少しで避難が完了する。
でも敵がもうそこまできてる…。
こうなったらやるしかない。
「軍の力見せてやりましょう! 撃ち方はじめーっ!」
国際軍と私たちチャコ軍の衝突が始まった。
少しして通信が入る。
「リリー! そこを離れろ! 空爆する!」
辰真だ!
私たちは離れシェルターへと入った。
ドカァーン!
音が止むのを確認し外に出る。
辺り一面がえぐられたような跡になっていた。
航空機が着陸してきて辰真が出てきた。
「ばかばかばか! 本当に大変だったのよ?! 遅いわよ!」
「ごめんごめん。米国に協力してもらったんだ。ちょっと時間かかちゃったけど…。国際軍のやつらもう攻めてこないと思うよ。米国が戦争行為をやめないと介入するーって言ったらあいつらあっさり撤退を始めたからな。」
これで戦争は終わった。
「それと、パムだけど…ジェット機にスパイがいて俺を助けようと…」
「そんな…でもパムはすごいわよ・・・ちゃんと守れたのだから」
こうして一時の落ち着きが戻ってきたけど私達には大きすぎるダメージが残った。
まだこんなことが起きるかもしれない。
その時どうするかが課題になった。
子供だけの世界…やっぱり…。
「あー、あの…隊長…?」
スクーからの無線だわ。
「なんだ?」
「国際軍なんですけど…」
「「もう遅いっ!」」
2人で同じことを言った。
「す、すみませええええんっ!」
「もういいから早く帰ってきなさい!」
私はシェルターの扉をあけ人々を解放する。
これから復旧作業が大変ね。
それからは…辰真に任せるか。
この事態は全国で報じられ、恐らく歴史にも刻まれるだろう。
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