赤城海里の休日。

「……」


私の朝はいつもと違ってゆっくりだった。

通常なら家を出る時間もとっくに過ぎている。

休日というのは心が安らぐ。

だが久々の休日。

銃器店に行こうとしたくをはじめる。


「………」


ガンケースを持ち家をでる。

銃器店に行くにはまずは直進20歩、左に曲がり13歩、右に曲がって48歩、斜め左に29歩で到着。

これが私にとってのいつもの道である。

そして銃器店入口にいる猫に挨拶。


「…ニャーオ」


「ニャー」


そして店内に入る。

新品の銃の数々。

私は銃を見るのが好きだ。

だが決して触ることはしない。

ほんとに見るだけ。

そして店内にある射撃場で自分のスナイパーL115A3を撃つ。

5発の発砲、すべて頭部に命中。

だが私は今回なにか違った。

もう一つの銃、XM25が撃てる射撃場に行くことにした。

だがグレネードランチャーなんてものの射撃場など一般銃器店には存在しない。

そこで思いついたのが軍の所有する射爆場だ。

そこならなんとか撃てるかもしれない。

とにかく今はスナイパーしか持ってきていないので一度帰ってスナイパーライフルのガンケースを置き、グレネードランチャーの入っているガンケースを持ち家をでる。

しかしもう躓いてしまった。

急に射爆場を貸してくれといって貸してくれるだろうか?

それだけじゃない。

私はあまり会話しないため知り合いもあまりいない。


「……」


ちょっと考えてケータイを取り出す。

宛先は赤寺辰真。

『今、平気?』

という文を送信。

数分で返事が返ってきた。

『平気だけどどうした?』

それをみて電話する。


「もしもし?」


辰真がでる。


「……」


どう話したらいいのか、なぜ電話したのかといろいろわからなくなってしまった。


「えと、赤城? おーい?」


「…あ…」


要件を言い出そうとしても変に緊張してしまって声が出ない。


「どうした? なにかあったのか?」


勇気をだして声を出す。


「射爆場…借りたい……です…」


やっと言えた。

だが急なことに困ったのか辰真はいろいろ聞いてきた。


「…!? なんでまた? なにするつもりだ? あー電話じゃ時間かかりそうだから合流しよう」


会ってくれるみたいだ。

それから待ち合わせ場所だけ聞いて小さな公園に向かう。

すでに辰真が着いていた。


「よっ。それで…あーもうその荷物見てわかった。撃ちたいのか。だから射爆場ね」


「……」コクコク


私は顔を上下に振る。


「でもな、急に射爆場は…いや、待て。大津に頼んでみるか」


そういうと辰真は電話しはじめた。


「もしもし、赤寺です。あの、実は射爆場を貸してくれないかと思って…はい。メンバーの一人が使いたいそうで…」


辰真は私のために力(FACの隊長という権力)を貸してくれている。

電話が終わったようだ。


「なんとか貸してくれるって。よかったな。場所はちょっと遠くて車で45分のところにあるって」


「…ありがと…」


「おう。それじゃあ俺は帰るよ」


帰ろうとする辰真を私は腕を組み一緒に行こうと促す。


「なんだ、付き合えってことか?」


「…そう」


「でも困ったな。車がない」


私はバス停を指差す。


「なんだこれ。俺最近もバスに乗ったような…」


「…?」


そしてバスに乗り40分。

射爆場近くのバス停に降りた。

ここら辺は住居が少なく、ほとんどが森林に囲まれている。

その一部を軍が射爆場として使っているみたい。

それにしても軍が所有しているのに人がほとんどいない。


「なんかここ、もう放置状態らしいから好きに使えって。来るの大変だけど」


私に都合のいい場所だった。

私は辰真の腕を引っ張り歩きだす。

射爆場は目の前に見えていてすごい広さだった。

グレネードランチャーを使うには最適な場所だ。

私はさっそくガンケースからXM25を取り出す。


「いつ見てもすごい銃だよな。扱うの大変だろ?」


「そうでも…ない…。スカッとする…」


6発の弾を装填し私は構えたが標的がない。

なにかないかと辺りを見渡す。


「どうした? あー、標的か? そうだな…ドラム缶でいいか」


15分くらいかかったかな?

辰真がドラム缶を適当に配置してくれた。


「ドラム缶の中…空だったからよかったけど…250メートルを6往復はキツイ…!」


息切れしている辰真に感謝しつつ、再び構えて狙いを合わせる。

トリガーを引き弾が放出され一つのドラム缶が吹き飛んだ。


「え? 実弾? 俺てっきり演習弾かと思ってた。でも演習弾なんて普段いらないから持ってるわけないか。今度からは演習弾使おうな」


私は残りの5発を撃ち終えると満足した。

これだけで帰るのもつまらないので近くにいる数人の兵士にお願いして銃を借りて辰真と競うことにした。

お互い借りたのはSCAR-H。


「よし、距離は250メートル。マネキンが立ってくれてる。弾は5発。心臓5点、頭部10点でその他は1点。当たらなかったら0点。1発撃ったら確認してまた一発撃ったら確認の繰り返し」


「…サイトはアリ?」


「そうだな。お互いACOGを付けよう」


これは私の勝ち間違いなし。

勝ったらなにかあったりしないかな。

先行は私。

点の高い頭を狙う。

まずは1発。

―当たった…!


「どれー? 見事に頭に命中だな10点だ」


双眼鏡で確認し終え、次は辰真の番。

どこ狙うのかな。

辰真が発砲する。

私は双眼鏡で確認した。


「…頭に…当たってる」


「じゃあ10点だな」


そして私の2発目。

当然頭を狙う。

撃つ。


「また頭か。うまいなー」


そして辰真の2発目。

発砲したと同時に確認したけどあれ?

傷がない。

ハズレかな。


「外しちゃったか」


こうしてすべて撃ち、結果は私が50点で辰真は35点。

私の勝ちだった。

辰真は残念そうにしている。


「悔しいけど俺の負けだな。そうだな、なにか希望あるか?」


「…」


どうやらなにかしてくれるみたい。

でも欲しいものとかないし、どうしよう。

そうだ!


「あの…頭…」


「頭がなんだ?」


「…撫でて……欲しい」


「おう?!」


辰真は驚いていた。

私もなんだか恥ずかしくなってきてしまった。


「じゃあ、いいか?」


「ん…」


撫でてもらえた。

とっても恥ずかしい。

今気づいたが銃を借してもらった兵士に見られていた。

私は顔が赤くなったのが自分でわかった。

それでも私はなんだかとても気持ちがよかった。

こうして人となにかするのもめったになかったし、男の人と関わってることも奇跡のようだ。


「こういうのは恥ずかしいな。でも楽しかったよ。それじゃあそろそろ帰るか」


そしてバスに乗った。

バスに人はいなくて貸切状態だった。


「家まで送るよ」


優しいな。

辰真はみんなに優しいのかな?

しばらくしてバスを降りて私の家についた。


「ここが家か? じゃあ俺はこれで帰るよ」


「…辰真」


「ん?」


「家…お茶入れる…」


「いいのか? お邪魔します」


私は辰真を家に招き入れ、紅茶をだした。

家に人を入れるのは初めてだ。

なにを話せばいいのかわからない。


「こうして仕事外で仲間と接するのもいいな。なんていうかいつもと違う顔が見られていろんなことを知ることができるな」


「…そうね」


「赤城も意外と表情豊かで今日知ることができた。なんでそんなに無口なんだ?」


「……」


私にそう言われても困る。

元からこうだったから理由があるわけでもないし。

そもそもいつからこうなったのかもわからない。

だけど私はこのとき、辰真達と一緒なら変わる気がすると思った。

まだ他のメンバーとはあまり話したことはないけれど、この部隊とメンバーならうまくやっていけそうだと思えた。


「私は…この仲間だったらいい…」


「?」


「だから…これからも…その…仲良くしてください!!」


勢いに任せて想いを言葉にしたらつい大声がでてしまった。

相手を驚かせてしまったか顔をみる。


「そんなの当たり前だよ。この部隊は特別だ。学校のときは関わりはなかったけど今は違う。同じ仲間として協力とかできたら最高だよ」


心配なんてしなくていいみたいだ。

私の居場所がやっとできたみたいでホッとしたら涙がこぼれそうだった。

今日のことは忘れないようにしよう。


「もうこんな時間か」


気が付いたら日が沈んでいた。


「お茶、ありがとう。せっかくの休暇なんだ。身体休めておけよ! お邪魔しました」


辰真は帰った。


「ニャー」


猫の鳴き声が聞こえた。

外に出てみると一匹の子猫がいた。

親猫とはぐれてしまったの?


「ニャー…」


お腹がすいているみたいだ。

私はこの子の面倒をみることにした。


「いい…? 私の話し相手になってね…?」


「ニャーン!」


もう懐いてくれた。

今日から新しい生活をおくることになりそう。


「名前…なにがいいかな…?」


「ニャー?」


私は考えた結果。


「…ルーガ」


「ニャーン」


気に入ってくれたみたい…。

するとルーガが窓から外にでてしまった。

私はそれを追いかけようとしたらルーガが出て行った窓からたくさんの猫が入ってきた。


「ニャー」


「ニャーウ」


「フシャー!」


「…埋もれる…」


何匹いるかわからない。

部屋が猫で埋め尽くされそう…。

だんだん息がしにくく…。


「…はっ……!」


私はいつの間にか寝ていたみたいだ。

ルーガが私のお腹の上に寝ている。

…苦しかったのはルーガがいたからか。

私はルーガを撫でながら家でゆっくりした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る