壊れた街の修復と軍の強化訓練。捕らえられた仲間の奪還。

俺は街の復旧に力を入れていた。

戦場になった場所を綺麗にして人々が住めるようにする。

そしてまたいつも通り生活できる街を作る。

今じゃ一丸となって作業をしている。


「おいそこちげーだろ! 飯作るところに瓦礫持ってきてどうすんだっ!」


「悪い悪い。それよりバース。お前無事だったんだな。前線に行ったからてっきり死んだかと思ってたわ。ま、俺は遠くから狙撃しててほとんど安全だったんだけどな」


「勝手に殺すな。俺があんなんでくたばるわけねーだろ! アーマーなかったら死んでたけどよ」


「私も…危なかった…よ」


赤城さん!? 

あなた目撃証言ではほとんど見境なくガードマスクと一緒に暴れまくってたって聞いておりますが!


「ガードマスク…好きになりそう…」


赤城が顔を赤らめてガードマスクに寄り添う。

ガードマスクから蒸気が出始めるのが見えた。

あのロボットすごいな!

そういうの感じ取ることができるのか!


「ばかやってないでちょっとでも手伝ってくれます? リリーすごい頑張ってるのにー。ねーレベッカ?」


「うへへ…カレーだ! カレーの匂いがしますわ! お菓子、カレー、お菓子、カレー…」


「…あんなのリリーが知ってるレベッカじゃない」


と、こんな感じでみんな頑張ってます(?)


「できたーっ!」


ホカがまたなにか作ったらしい。


「じゃじゃーんっ! 見た目はガードマスクだけど戦闘は一切できず耐久性もあまりよくないけど作業ロボっ!」


「また便利なのを作ったな」


「なんとなんとっ! デザインは既存のを使ったのであとは適当に作るだけっていうことだったのでアッという間に100機つくりましたっ! ホカちゃん天才っ!」


いやー素直にすごいしそんなにいるなら案外すぐ終わりそうだな。


「これはなんだ?」


1人の子供がなにかを突いている。

それ不発弾だ!


「レムっ! 子供を頼む! バース! 処理を頼んだ!」


「このレム様にお任せ!」


「この不発弾敵のじゃないな?」


もしかして…

俺は近づいてみてみた。

…これ空爆の時のやつだ。


「まぁいいか。処理してくる」


バースが慎重に不発弾を運び出す。


「ちょっとまってっ!」


ホカがどこかへ走って行ったと思ったら迫撃砲のような物を持ってきた。


「バース君っ! これに不発弾を入れたまへっ!」


「お、おう…?」


バースがホカの持ってきた迫撃砲のような物の中に不発弾を入れた。


「じゃあいくぞっ! それっ!」


ホカがボタンを押す。

すると不発弾がどこかへ飛んでいった…。


「ちょ、ホカ! あれどこに飛んでいくの?!」


「大丈夫っ! 座標は海に設定してあるからっ!」


ならいいか。

でもなんでその場で爆発しなかったんだ…?

楽に処理できたがホカが作るものはよくわからない。


「赤寺殿。ちょっといいでござるか?」


…? 

エルに呼ばれた。


「どうやら国際軍は解隊はされずそのままの様子。また攻めてきてもおかしくないでござる」


「そうだと思った。どこの国が指揮を取ってるんだ?」


「恐らく、露でござるな」


「でもこの島に上陸してきたのはアジア系だ。ってことは中華も怪しいな」


警戒しないとな。


「た、隊長…今回ほとんど役目が…ごめんなさい」


スクーはなんか…運が悪いだけな気がする。


「大丈夫大丈夫!」


そろそろ作業に戻ろう。


「隊…長…」


振り返るとパムがいた!


「パム! 無事だったのか?! 一体どやって?」


「敵さんが脱出ポッドを密かに積んでいたんですよ…。それを奪ってギリギリ脱出できました。」


「よく無事で…よかった!」


「その…撃たれたとこ、その場しのぎの処置しかしてないので治療を…。」


「もちろんだ!」


するとパムは倒れてしまった。


「パム! すぐに病院に…!」


「…カ、カレーの…匂い…バタッ」


うん、大丈夫そうだ。

本当によかった。

パムを病院に運び終えたところで話題のカレーをみんなで食べた。


「おいしい! おいしいですぅ!」


「リリーならもうちょっとおいしく作れるかなーなんて…」


「こりゃおいしい! このために頑張れるってもんだ!」


「このカレー、このレム様が認める。うますぎだぜ」


「おいしいでござるな! おかわりしたいでござるー」


「お、おいしいけど僕には、ちょっと辛すぎる…かな…なんて」


「辰真…カレー、あーん…」


赤城がカレーをすくい口元まで持ってきた。


「おっ? いいのか? あーん…おいしいな」


「辰真…関節キス……ポッ」


「赤城?! な、なにしてるのー?! た、辰真? リリーのも食べなさいよっ! ほら! ほらー!」


「いや、もういらな…」


「あ˝?」


「辰真ー…♪」


赤城がすり寄ってきた。

ちょっと赤城さん?

今それは逆効果な気が…。

リリーが噴火しないうちに逃げるとしよう。


「俺まだすることあるから! そういうことで!」


「たああああつうううううまあああっ!」


女って、わからん。

っと、こうしちゃいられない。

街のほうは作業ロボのおかげで順調に進むと考えて行方不明者の捜索をしないとな。

58人の行方不明者か。

意外と少ないな。

これもリリーが指揮をとってくれたおかげだな。

チャコ軍1万人で捜索にあたらせよう。

たぶん今まで襲ってきたスパイも数に入ってると思うから50人いるかいないかだな。

UAEからも支援物資が届いているからあとでお礼をしないとな。

それと見慣れない封筒が届いていた。

紫色の封筒で少し気味が悪い。

とりあえず中をみることした。

国際軍調査報告書というのが入っていた。

どこから来たものか確認すると米国からのものというのがわかった。

なんか助けられてばかりで悪いな。

内容を確認する。

『国際連合軍の指揮は露がしている模様。

参加国は中、朝、伊、独(確認ができた時点)で目的はチャコの壊滅。

恐らくは自国の国民には秘密裏に活動している。

我々米国が介入しようとしていることを知り、大きな動きは今のところないが行方が分からなくなっている大津の殺害を狙っていると予想。

こうしてカバーできるのも今だけかもしれない。

早急な対策の考案を提案する』

…国際軍か。

やり過ごすことはできそうにないな。

仕方ない。

チャコ軍の強化訓練を実施するか。

俺はバースを呼び出した。


「赤寺ー? 何用だ?」


「チャコ軍を強くするために鬼教官をしてもらいたい。戦闘経験があっても連携が取れていなかったりして心配だから」


「そんなことか。わかったぜ」


「鬼教官がバースというだけで訓練はFAC全体でするから。それでどんな感じの訓練がいいと思う?」


「そうだな…やっぱそれぞれわかれてやったほうがいいと思うぜ? 狙撃なら狙撃に特化したもの。突撃ならそれなりの動きや格闘。こんな感じに」


「なるほど」


まずは兵科から作っていかないといけないな…。

突撃、工作、衛生、援護、偵察、潜入ってとこか。

これなら俺らもわかれて教えた方がいいか。

突撃はリリーとバース。

工兵はスクー。

衛生はパム。

援護はレベッカ。

偵察はレムと赤城。

潜入はエル。

俺はそれぞれのバックアップをしよう。

問題は教える側が少ないということだが…ある程度できる兵士には教える側になってもらうしかないか。

さっそくFACに通知する。

パムは入院中なので俺がまず衛生を担当しよう。

突撃はすべての能力が平均以上じゃないとやれないだろう。

射撃や格闘が主になる。


「それじゃあまずは射撃だ! 300メートル離れた的に弾を当てろ。もちろん急所を狙えー? 格闘はほとんど最終手段だ。相手はほとんど大人だと思うが力任せに挑んでも普通じゃ返り討ちだ。大人が力なら子供は早さだ。身体を倒すことを考えろ!」


さすが鬼教官。

これは期待できそう。

工兵は目標の破壊、地雷原の敷き設など実は一番大変だったりする兵科だ。


「こ、ここでは目標の、破壊…地雷などを扱う、ことにします…! 爆薬の量、など、間違えたりしたら、大変。注意しながら…頑張ってください…!」


ちょっと不安だが大丈夫だろう。

戦車とかあるけど島国だとあまり使い時がないな。

衛生は仲間の手当をする兵科だ。

応急処置とはいえかなり大事になってくる。


「戦場ではあらゆるケガをする可能性がある。なかでも出血や火傷等が多いだろう。今回はこの2つをメインにやっていく」


俺も無知ではないがパムと比べると劣るだろう。

…パム! 早く退院してっ!

援護は主に制圧、仲間の尻を守ることが多いだろう。


「あたしこういうの得意じゃないんだよねー。ゆっくりお菓子食べてたい。そうね。仲間のために制圧または制圧射撃といった火力がものをいう兵科ね。たまに仲間の尻を守ることもあるわ。敵を発見次第、発砲。いかに相手に弾を撃たせなくするかも重要よ」


本音が出てるぞー。

心にしまえ…(笑)

偵察は敵の把握が重要になってくる。それだけじゃない。狙撃もある程度できなければいけない。


「そうだなー。敵の把握なんてものはスコープを覗けばわかることだ。めんどうだな。なんで俺がこんなこと…」


「狙撃も大事…だから弾を命中させるのが必要……500メートル先の敵に当てれたら上出来。1キロ先の敵に当てたら英雄もの…」


レムはだるそうだが赤城はちゃんとしてくれそうだな。

正直、俺は一番狙撃が高度なセンスが必要だと思う。

潜入は暗殺などを目的とした兵科だ。


「よいでござるか? 潜入とは敵に正体を覚られることなくターゲットを抹殺するスパイも兼ねている兵科でござる。己を偽装し相手を騙す。正体ばれても捕まることは許されないでござるよ」


言ってみればニンジャだな。

今できるのはこんなものか。

これであとは合同練習をやって効果を期待するとしよう。

海と空は20歳以上の人達が担当してるからほとんど口だす必要はないし。

なんで陸だけこんなに差があるのか不思議だけど。

基本的なことは軍学校で教わってるはずはんだけどな。

数日してパムが回復し、衛生を担当して二ヶ月がたった。

そろそろ合同訓練をしてみてもいいころだと思う。

あのときみたくやってみるか。


「じゃあ選ばれた10人の兵士がFAC相手にどこまでやれるかやってみようか。今回はペイント弾で。でも工兵や衛生、潜入なんかは今回はほとんどなにもできないだろうけど一応参加で」


訓練を受けて優秀だった10人が来る。

突撃3、工兵1、衛生1、援護2、偵察2、潜入1の編成だ。

いくら訓練でも手抜きはしない。

こうしていざやってみたわけだが…。

当然FACが負けるわけがなく…それはそうだ。

あとは俺らがやってても意味がない。

しばらくは訓練を継続させて能力アップを待とう。

すると見知らぬ2人が近寄ってきた。


「海軍の指揮をしております! 新井といいます! 紹介遅くなり申し訳ありません!」


「空軍の指揮やってます。柴田です。大津さんの代わりが君? へー思ってたより普通な人だねこりゃ。でもあの大津が認めたってことはそれなりなのかな?」


今まで代表としてやってきたけど会うのは初めてだな。

なんで今になって会ってんだ…もっと早く会っておくべきだった…。


「すいません。挨拶もなにもなしに勝手に国を代表なんかを…。赤寺辰真といいます。よろしくお願いします」


「はい! よろしく申し上げます! ったく柴田?! あんたね、最初くらいしっかりしないさいよ!」


新井って言う人は女性ですらっとしていて綺麗な人だ。

なんというかリリーみたいな人だな…。


「はあ? ちゃんと挨拶したろ? なにがいけなかったのかさっぱりだ。あ、よろしくねー」


柴田って人は男性で気の緩い人のようだ。

どこか大津っぽい。


「それでいきなりですみませんが…海と空の装備をなんとかできないかと思いましたので相談にきたのですが…」


「そうそう。なんとかしてくれよ。ホカに開発するよう言ってくれ。な?」


そうか。

これまで俺達のために全力だったからな。

海と空か。

ホカにお願いするか。


「わかりました。じゃあ今からホカのところに行ってみましょう」


俺達3人は開発室にいった。


「やあ! やあっ! あら? 珍しい人と一緒だね? なにようだぁっ!」


相変わらず元気マンだな。


「忙しいとは思うんだが海と空のなんかを作ってほしいんだが…」


「お安い御用だねっ! というよりだよー? もうすでに開発は進んでいるのですっ! そう言われるかと思ってあらかじめやっておくホカちゃんなのであったっ!」


「さすがホカだぁー! 頼りになるー!」


「それならいいとしてなにを作ったんだ?」


「海は船を建造中あとちょっとで終わるさっ! あと主砲とかもちょっと? 空は攻撃機とかだねーっ! 無人機なんかもやっちゃってたりっ?」


仕事が早いと助かるけど前から思ってたことがある。


「いつも思うんだけど資金とか材料はどうしてるんだ?」


「あーそれっ。大津から聞いてないのかー? まあ日本にちょっと助けてもらってる。それと最近はUAEにもねっ。最初は大津が資金源だったんだよーっ? すごいよねっ!」


そうだったのか。


「作業は誰がやってるんだ?」


「専用の作業ロボだよっ。」


だから仕上がりが早いのか。

それより…。


「いつできそうなんだ?」


「じゃあ完成したやつから見ていくかぁっ?」


「そうしましょう。柴田。行くわよ」


「へいへい」


「まずは空軍装備からだぜえーっ!」


ホカはそういうと倉庫の大扉を開けた。


「これがステルス機能搭載の戦闘機兼爆撃機だーっ!」


見た目は特に変わったようなところはないけど…?


「おいおい、これ乗るとこないぞ。不良品なんじゃねーのか?」


「ばかを言いなさんなっ! こいつは無人機だぜっー! ただ一つ問題があってな、耐久性が低いんだっ! だからステルス機能をうまく使ってくれい!」


それでも充分すぎるぞ。

ホカに作れない物なんてないんじゃないのか?


「ほうー。人も多くないから無人機は助かるな。これなら一安心だ」


「そろそろ海軍の装備を頼む」


「じゃ見に行くかっ! ドックに行くぞー!」


港近くのドックに向かう。

すでに大きな船が三隻見える。

そして見たことない武装だ。


「ほお。これが新しい船か。ほとんど造り終えてるではないか?」


「実は新型の潜水艦が未完なのでーすっ! 他はできてますっ!」


一隻目の船は戦艦のようだ。

乗船してみる。


「さすがに船の運用は有人じゃないときついねっ! これ戦艦ねっ! ただの戦艦じゃないよー? メインは主砲の4基8門の光線砲っ! 圧倒的破壊力で当たったところはゴッソリなくなると思うよーっ!」


「それにしても思ってたよりスリムな主砲なのだな。だがいいものだな」


「いやいや、新井。もっと驚こう。光線砲だぜ?! やばいって。なにこの謎の技術力の高さ!」


そして二隻目は空母。


「これはさっきの無人機の発着艦専用空母なのだっ!。空母には人必要だけど艦載機には不要っ! ちなみに100機ほど乗りますぜ…! そして空母は守りが苦手だろっ! そこをカバーするのがGフィールド! しばらくのあいだ敵の攻撃を受けなくなるぜいっ! いつまでもは耐えられないけど無いよりはいいと思う!」


「すっげーな! もうよくわかんなくなってきたぞー!」


そして最後の三隻目だが、一隻目の主砲がないだけで同じにみえる。


「これはミサイル艦。計50のミサイルを積んでてロックオンや追尾機能があるよっ! それに加えて高性能なジャミングシステムっ! 敵にロックオンされたらそれを無効にするっ! ただし、100パーセント安全ではないよっ!」


なんかとんでも兵器ばかりで頭がマヒしそうだ。


「それで、新井さんに柴田さん。これで平気ですか?」


「そうだな。ありがとう。赤寺殿」


「充分すぎるぜ! これで問題なくサボ…じゃなくてやってける!」


これで一件落着だな。

次襲撃があってもなんとかなる…いや余裕がでてくるかもしれないな…。


ドォーン!!


大きな音が響いた。


「こうして光線砲撃つと次撃つまでに10分かかるから気を付けてっ!」


「なるほど…」


どこに向けて撃った?! 

というか勝手にやらないで…。

これで軍備は整ったかな。

街もほとんど元通りみたいだし。

行方不明者もだいたい見つかった。

大津…戻ってこないかな。


「赤寺辰真っ! ちょっといいかな?」


ホカに呼ばれた。


「実はだな…」


いつもと違って真剣だ。


「露にスパイを入り込ませてたんだけど、捕まったらしい。どうにかできない?」


…勘弁してくれよ。

問題解決してもまた問題発生か。


「わかった」


とりあえずは情報からだ。

これは始まりなのかもしれない。

俺の直感がそう言っている気がした。


露で捕まった仲間のためにもまずは情報を集めるしかなかった。

だけど簡単に情報は集まらなかった。

UAEにも協力を要請して手当り次第に調べたらしいが大した情報はなかったらしい。

早くも手詰まり。

だがなんとかしなければ…。

露に捕まっているのはホカの友人だという。

ホカにはお世話になりっぱなしだ。

それもあっていつも以上に真剣に取り組む。


「はぁ…」


だが成果は出ない。

あきらめるわけにもいかないので俺は直接露に連絡をした。

すると話しあいには応じてもらえた。

これで一歩前進することができる。


「ところでホカ。なんで友人が露にいるんだ? スパイって…一体なにを?」


「技術だよ。それと監視。でも今回でわかった。スパイなんてさせるものじゃないな」


「そうか…。でもなんで捕まったってわかるんだ?」


「定期的に連絡を取ってたんだよ。だけど急にその連絡が途絶えたから。なにかあったに違いないよ」


「なるほど」


FACを連れて露に行くか。

普通の航空便で露に向かうため日本を経由した。

そして露の大統領と会うことができた。


「これはこれは。遠いのにありがとうございます。それで確か…のことですよね?」


「はい。開放していただきたいと考えています」


「それはできませんよ。なにをしていたのか聞き出さないといけないですし…。返せと言われて返せるものではないですよ。」


「どうすれば開放していただけますか?」


「割に合う見返り。そうですね…。大津の居場所…とか?」


それは無理だ。

こちらでもわかっていない。

このままじゃ開放なんてされない。

くそっ…。


「それはできません。なんとか返してもらえませんか?」


「なら実力行使にでも出ますか?」


「そんなことはしません。今日のところはここらへんで失礼します。お時間を作っていただき感謝します」


そういって俺達はチャコに戻った。


「くっそー。あの野郎返す気ないぜ。見てきたからわかる」


レムは苛立っていた。

俺もそうだ。


「辰真、俺しばらく露に滞在する。それで情報をかき集める」


「それはだめだ。捕まるかもしれない」


「大丈夫だ。正式に入国するから。それでも監視はつくだろうけどな」


そしてレムは露にいってしまった。


「しばらくはなにもできないわね…。リリー、何もできないのが悔しいわ」


「大丈夫です。レムさんがなんとか情報を掴んでくれるはずです。それまで待ちましょう。お菓子を食べて…」


「それにしても大丈夫でござるか? レム殿にもしなにかあったときを考えて準備はしておくでござる」


「それなら平気だ。俺が突っ込んで助けるぜ!」


「それでは戦争が起こってしまうのでだめですね別の方法を考えないと」


パムの言うとおり、戦争だけは避けたい。

そんなことをすればいろんな人達が亡くなってしまう。


「僕は…戦争なんてしたく…ない…です」


「私も…嫌」


誰だってそうだ。

好きで戦争なんてしない。

全員でレムからの連絡を待つことにした。

それから10日がたった。


「ごめんね。めんどうかけて」


ホカがやってきた。


「最初は軽いノリだったんだ…。それがこんなことに。最初の頃は素人同然で技術力なんて皆無だった。それを捕まった友人、メクは他の国から技術を盗もうって…。それでメクはいろんな国に行っては技術を盗んできた」


過去の話か。

黙って聞いておこう。


「今まで1回も捕まったことなんてなかった。うまくいっていた。だからこうして技術がある。盗んだ技術を応用して独自にだって開発できるようにもなった。それが、それが…こんなことに」


泣きだしてしまった。


「大丈夫だ。必ずメクを取り戻す。絶対な」


俺はホカの肩に手を回す。

そのときだった。

通信が入った。

レムだ!


「いい情報があったぜ! 露の大統領の弟がブラジルにいるらしい。しかもだ、重犯罪を犯して捕まってるみたいだ。これは利用できるな。これから戻る。伯にいくぞ」


やっとこのときがきたようだ。

FACで伯に向かった。


「とりあえず留置所に行こう」


「そうだな。なんとかして連れ出して、こいつを使ってメクを助けよう。レム様今回頑張るぜ!」


それで留置所にいくわけだがどこの留置所に居るかわからないので近場からいくことにした。


「ハァ?! 米に移送する!? なんで!」


「それが…どこからか聞きつけた米が露の弟ということだけを理由にめちゃくちゃのことを言ってきて…。面倒を避けたい政府があっさり引き渡す…と」


ここまできたのが水の泡だ。

なんとかできないものか。

それより寒いとことか暑いとことか環境の変化がすごすぎて疲れが…。

おまけに時差が…。


「しょうがないわ。リリー達で米にいって交渉するしかないわね」


そして米へと渡った。


「それはできません」


「なんでですか?」


米大統領になんとか露の弟を譲ってもらえないか話したら拒否されてしまった。


「これは我が国にとって大きな盾。簡単に手放すわけにいきません」


「そこをなんとかできませんか? 露に捕まってしまった者がいるんです!」


「残念ながら…」


ここまでなのか…?

だがこんな終わり方は嫌だ。

まだなにか方法があるはずだ。


「どうするの? お菓子食べたいなー…」


「レベッカ…今言うことじゃない」


「ごめんなさーい…」


「赤城殿が空気読んだでござる…!」


なにもなしに帰るわけにもいかない。

俺は必死に頭を動かすがなにも思い浮かばない。


「いっそのことよ? ばれないように露の弟を連れ出さねーか。って無理だよな」


それだ…バースよくやった!


「そうしよう!」


「「「「「「「「え?」」」」」」」」


俺以外の全員が同じことを言った。


「た、隊長? 落ち着いてください? バースの言ったことは冗談で仮に実行しても米国が許すわけないじゃないですか」


「そうよ! 無理だわ! レベッカも!」


「そうです! そんなことできっこありませんって!」


「それでも、やるしかない!」


露の弟と面会をする。

そこでバースが控えた暴れっぷりを発揮する。

混乱に乗じて露の弟とスクーが入れ替わるためバースとスクー以外が弟とスクーを隠すように囲う。

バースが落ち着きを取り戻し、退却する。

これだ!

みんなに計画を話す。


「リリー、無理があると思う…」


「至難の業でござる…」


「レム様は賛成だ!」


「僕は賛成なんてできないけど反対してもどうせやるんでしょ?」


「パム…よくわかってらっしゃる」


「マジかよおい!」


「ちょっと待って、誰もスクーの心配してないのがすごい怖いんだけど。え? カレーを飲み物って言うくらい怖い!」


「僕はどうなっても…いいんですか…あはは…」


スクーには悪いけど仕方ない。

あとで絶対助けるから。


面会をしに留置所へやってきた。


「あなたが弟さんですか?」


「そうだけど、あなた達だれ?」


俺は小声になる。


「あなたを助けにきました」


「え?」


「いいですか? 反抗とかしないでくださいね?」


するとバースがいかれ狂う。


「なんでここは!! 空気がまずいぞおおおおおおお!」


なんだそれ。


「ふざけやがってええええええ!!」


一番ふざけてるのバースだけどな…(笑)

すると看守が一斉にバースに集まっていく。

今しかない。

俺達はスクーと弟を身体で壁を作って隠し、お互い着ているものを交換させた。

そしてバースに合図をだして暴走を止めさせた。


「あーすまん。気の迷いだ。迷惑かけたな」


それで俺達は留置所を出た。


「うまくいったな」


みんなに声をかける。


「リリーは緊張で死ぬかと…」


「一生お菓子食べられないかと思いました…」


確かにスリルあったな。


「それで、こいつ連れて早いとこ露に行こうぜ」


「そうでござるな」


「まだだ」


俺にはまだ考えがあった。

それは国際軍の解散だ。

なんとかできないか考えたがぶっつけ本番にしよう。

あとはこの弟に兄の露大統領に国際軍の解散を申し出るように吹きこむ。


「弟さんさ、お願いがあるんだけど」


「なんですか?」


「お兄さんに国際軍を解散させるように言ってくれないかな?」


「言っても無駄だと思いますよ?」


「ダメ元で頼むよ」


「それならいいですけど…」


よし!

うまくいけばなにもかもいい流れになるぞ!

もうひと踏ん張りだ。

だが露の大統領の都合が悪く、会えないため一度チャコに帰る。


「それにしても大胆な行動をしましたね。僕だったら絶対しませんよ」


「パムがあんなことするっていうときはなにがあってもありえないだろうな! ま、レム様もやらないが」


「それをやってのける隊長殿がここにいるでござる…」


「こうしないと…進展ないのは明白…」


「でも俺が暴れたのあってこそだぜ! 変なこと口走っちまったが」


それを聞いていた露の弟が話し始める。


「いいですね。なにか楽しげで。チャコですか…うらやましいな」


成功したから楽しいのであって失敗していたらどうなっていたか。

とりあえず露の大統領の予定があくまでスクーがばれないといいけど。

こいつと話していてとても重犯罪者には思えないのだが一体なにをしたのか?


「お前と話しててとても重犯罪者には思えないんだけど一体なにをやったんだ?」


「伯で米の極秘情報をハックして見たんです。それがばれて捕まったということです」


「どうしてそんなことを…?」


「いえ、ちょっと気になることがあったので…」


露の大統領の弟だ。

こいつにもいろいろあるんだろう。

そして2日が経ちようやく露の大統領と会うことができるようになった。


「いやー申し訳ないね。それで? なにかな?」


「はい。実は…」


露大統領の弟にかぶせていた覆面を取る。


「貴様! どういうつもりだ? おいっ!」


露大統領が声を荒げると数人の兵士がでてきた。

まずいぞ…。


「話しを聞いてください。交換しませんか? あなたの弟さんとこちらの人間を」


「ふざけた真似を…。おい! もぐらを連れてこい」


一人の兵士がどこかに行ったと思ったらメクを連れて戻ってきた。


「これでいいか?」


「はい」


交渉は成立した。


「ありがとうございます」


「今回だけだ」


すると弟が口を開く。


「兄さん、国際軍なんだけど解隊しない? あんなものいらないよ」


「お前、なにを吹きこまれた? そういうわけにいかない。それほどこいつらは今や世界中の脅威となっている」


どうやらそううまくはいかないらしい。


「これで話しは終わりだ。帰れ」


俺達はメクを連れて帰った。


「リリー内心焦ったわ。兵士が出てきてだめだと思ったもの」


「そんなのみんな同じこと思ったと思うぜ? ま、さすが辰真って感じだな」


「でももうこんなのはうんざりですよ。隊長? これっきりにしてください?」


「辰真…さすが…」


俺はメクに声をかける。


「大丈夫か? なにもされてないか?」


「はい…ありがとうございます。おかげで助かりました。あの、大津さんは?」


「ああ。実は今行方がわからないんだ。だから俺が代わり」


「そうでしたか…」


「それよりもチャコでホカが待ってるぞ」


「…!」


これで俺達の役目は終わりだ。

だがなにか忘れてるような…。


「そんなことよりよ、スクーはいいのか?」


…あ。

でもどうしよう。

あそこから出すには…正直に話すしかないか?

メクをホカのとこに連れていったらスクーのところに行くとしよう。


「メクーッ!!」


「ホカちゃん!」


感動の再会だった。


「ケガはないのかっ! 大丈夫? よかった…本当によかった」


「なにも心配ないよ! ありがとう!」


2人抱き合って喜んでいる。


「赤寺辰真、本当にありがとうっ! このことはずっと忘れないっ!」


頑張った甲斐があった。

で、スクーのところに行かないと…。


「米大統領申し訳ないです! スクーと露大統領の弟をすり替えました!」


「そんな大胆なことをしてばれないと思ったか?! 一瞬でわかったぞ! まあわかったときには時すでに遅しだったが」


「本当にすみません!」


「今回は大津に免じて許してやろう」


「は? 今なんと?」


「大津と言ったのだが?なにも聞いてないのか? ということは大きな企みがあるなこれは。実は先ほどまで大津が来ていたんだ。この件は目をつむれってな」


なぜ引き留めてくれなかったんだ…。

企み?

大津、一体何を…。


「すぐどこかにいってしまったがな」


そして今回は何事もなかったようにスクーが無事戻り解決した。


「隊長…信じてよかったですぅ…」


そしてすぐに事は起きた。

露が単独でチャコに攻撃するという声明をしたのだ。

これはまずい。

望んでもいない戦争が起こってしまう!


「全員戦闘準備!」


今回ばかりはチャコは終わりかもしれない。


「くっそ! 結局こうなるのかよ…! 嫌になるぜ!」


「俺はアーマーで前線で敵を叩く!」


もう露が見えるところまで来ている。

こちらもいろいろと新調したんだ。

簡単にやられるわけにいかない!

俺は大人のこういう部分が嫌いだ。

思い通りにならないとすぐ実力行使。

子供だって人だ。

なんとかわかりあえないものか。

そして戦争が始まってしまった。


「上陸はされてるが数は多くない。これも訓練とかのおかげね」


「リリー、それでも人が死んでるんだ。俺はよくわからない心境だよ」


通信が入る。


「バースだが、一応前線に火力を置いたほうがいい! 海軍も空軍も頑張ってるみたいだけどよ。抜かれ始めてる!」


それなら…。


「私と…ガードマスクが行く…!」


「今赤城とガードマスクが行く!」


「それは心強いな!」


「それでは、FACは散らばって戦闘しますかね」


俺達はそれぞれ散って戦闘を開始した。


「これはいけませんね…。数が多いですね」


敵はどうやら数で押してきているらしい。


「パム! 大丈夫か?」


「今のところは…! …!」


パムからの通信から急にノイズが入る。

これはなにかあったか?

それとも通信障害か?

通信が切り替わる。


「チャコの諸君。聞こえているかな?」


これは露大統領!


「これは始まりにすぎない。大津はよくないことを考えている。手におえないくらいの。だから我々がそれを終わらせる」


一体なにを言ってるんだ?

がそれとは逆に露の軍が引き上げていく。

なにが起こっているのかサッパリだ。


「辰真っ…! 来て…! バースが…」


赤城だ。

俺は急いで赤城のところに駆ける。


「辰真ぁ…バースが…私をかばって…」


俺の目に映ったのはすでに息をしていないバースだった。


「私のせいなの…私が油断したから…!」


泣きじゃくる赤城。

嘘だろ?

あのバースだぜ?


「赤城。お前のせいじゃない。お前のせいじゃ…」


戦争の嫌なところが見え始めた。

そこにみんなが来た。


「こんなの嘘よね…バース…リリーはずっと忘れないから…!」


「…」


レベッカは言葉がでないらしい。

脱力してしまっている。


「ふざっけんな! もう、もうこんなのは嫌なんだよ!!」


「バース…さん…今まで…お疲れさまでした…!」


あれ?

パムがいない。

どこに行ったんだ?

俺は一人、パムを探しに行く。


「おーい、パムー! どこだー?」


すると一人の兵士が報告してきた。


「こちらに来てください…!」


ついていくと一人の女の子が泣いていた。

その近くにパムが血を流し倒れていた。


「パム!」


「隊長…僕また…ドジしちゃいました…。女の子助けようとして無理したら…このざま…です。あとは頼み…」


話しの途中で息絶えた。


「うわああああああああああ!!」


俺は叫んだ。

なにが大人だ?

なにが戦争だ?

なにが子供だ?

いいことなんて一つもない!

みんなのところへ戻りパムのことを話す。

一度に2人の仲間がいなくなりみんなボロボロ泣いて言葉がでなかった…。

この戦争を終わらせたのはまた米国だった。

米国には頭が上がらないな。

その日は戦死者たちを弔うことにした。

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