ヒビはいつか割れてしまう。

この国の武装関連の問題がついに大きくなってしまったようだ。

この前のKが反乱をおこしたみたいだ。

約1万人の反対者が武装しはじめ実力行使にでた。

そこまではなんとなくわかっていた。

ただこの事態を大津は真っ向から受け、反乱軍を話し合いではなく武力による鎮圧にでたのだ。

こんなこと大人がいたからおこると思っていたが案外子供もいろんなことを考えているみたいだ。

もちろん人それぞれに意見があるのもわかっているが…うまくいかないもんなんだな。


「今回FACには本丸を叩いてもらうとしよう。ほかは軍とロボでなんとかする。早いとこあのKを捕まえてきちゃって。抵抗が激しいようならその場判断でよろしく」


特殊部隊の酷使ってすごくない?

だいたい姿出さないもんだと思ってたけど。

それほど大変なのかあるいは本当に早く終わらせたいのか。

それにしてもあのケーシーKとかいう女、ここまで人を集められるようなやつだとは思ってなかったな。

それと大津から言われて渡された端末があるのだがボタンが一つあるだけでなにか変わったようなものはない。

本当にピンチになったら押せとかって…。

・・・怖くて押しづらいって。

俺達は輸送ヘリCH-47に乗り敵の本拠地に向かう。

護衛としてアパッチAH-642機が付いてくれた。

今思うとやけに米国装備が多い気がするしこの資金はどこから…?

準備ができると離陸を開始した。

遠いところではないので3分で着くそうだ。


「ヘ、ヘリコプターって…怖いですね…」


スクーはヘリコプターが苦手なようだ。

飛行機みたいにゆったりした感じにはならないからな。

こう、不安にはなってしまう。

今回はアパッチもいるし安全だとは思うが。


「拙者は初めて乗るでござるがなかなか楽しい乗り物でござる!」


「リリーは乗り慣れちゃった。それよりもうそろそろ着くわね」


着陸を開始した。

降下の仕方は習ってないので着陸してもらった。

リリーはできるらしい。


「本拠地なんだろ? なにも問題なしっていうのは変だな。俺的にはすぐに戦闘かと思っていたんだけどよ」


バースの言うとおりなにか変だ。

見回りすらいない。

ほとんど出払っているのか?

とりあえず建物内へと入ることにした。

しかし、もぬけの殻だ。

どうなっている?


「みんな気を付けろ。罠があるかもしれない」


すると建物内に設置されたスピーカーから音声が流れた。


「まんまとかかったな! 特殊部隊のみなさーん。その建物はすでに包囲させてもらったわ!」


ケーシーの声だ。


「いつまで生きてられるか楽しみね! ハーハッハ」


やっぱり罠だったか。

袋のネズミとなってしまったわけだが相手は数が多すぎる。

見えるところでも50人はいるだろうか。

とりあえずは完全に攻め込まれる前に入口付近で戦闘態勢に入る。

レムと赤城は天窓から外へ出て建物の上から狙撃。

ほかは下で迎え撃つ。

裏口というのはないようだから正面だけに集中する。


「建物に侵入させるわけにはいかない。なんとかして隙を作って脱出する」


そして撃ちあいが始まった。

だがどう考えてもこちらが不利。

弾だって無限にあるわけじゃない。

今回だけは厳しいか。


「ちょっと! あたしまだお菓子食べてなーい! 誰かなんとかしなさいよ!」


「無茶いうな」


「リリー、ここで終わりなのね…短い人生だったわ…」


「怖い、怖い…怖いぃぃぃっ!」


本格的にまずいぞ…なにか方法はないか…。

そこで無線が入った。


「辰真、確か大津からなにか渡されてなかったか?」


あ、忘れてた。

大津から謎の端末を渡されてたんだった。

慌てて取り出してボタンを押す。

・・・なにも変化ないぞ。


「…どうする…?」


赤城も無線で話しはじめるということはそろそろ限界か。

するとレムが変なことを言い始める。


「信じられないと思うが聞いてくれ。こっちに向かってなにかが飛んできてる」


さっきまで変化がなかったはずがものすごい音と共に確かになにかがこっちに向けて飛んできているのが見える。

うっすらと見覚えがあるような…。


「あれはもしかして、ホカのところにいって戦ったケルベロス一号でござるか?」


「それがほんとなら充分すぎる援軍だぜ!」


間もなく空から舞い降りるケルベロス一号。

敵も姿をみて恐れたのか腰が引けている。


「シンゴウ、カクニン。コレヨリ、ヲカイシスル」


目の前に現れて数分、ミニガンによって周辺は死体の山となっていた。


「これ、俺らもう必要ない気がするな」


ケルベロス一号は一仕事終えるとまたどこかへと飛び去っていった。

なんという破壊力。

なんていうか、ケルベロス一号が敵じゃなくてよかった。


「よし、迎えのヘリがないため歩いて帰るぞ。1時間くらいで帰れると思う」


「これでお菓子が食べられるー! でもなにか忘れてる気が…辰真、あたしたちここへ何しに来たんだっけ?」


そうだった!

ケーシーの確保を忘れていた。

ミニガンの迫力がすごすぎて目的を忘れてしまっていた。


「各自散開。ケーシーを見つけたら教えてくれ」


「リリー思うんだけどこの状況じゃ生きてないと思うけど…?」


生きていなくても確認はしておかないとな。

近くのところにゴソゴソと動くのが見えた。


「そこにいるやつ、大人しく出てこい」


俺がそういうと死体に押しつぶされていたやつの顔が見えた。

紛れもないケーシー本人だった。


「もう抵抗しない…あんなもの用意していたなんて…もう好きにしてください…」


ケルベロス一号によって精神が死んだらしい。


「ケーシー発見。撤収」


するとヘリが迎えに来てくれた。

俺達はヘリに乗り無事帰ることができた。


大津のところにケーシーを連れて行く。


「お疲れ赤寺君。おっ、ケーシー生きてたんだ? ケルベロス一号が飛んでったからもう死んだかと思ってた。よかったねー端末持って行って」


「どうしようもなかったんでボタン押しました。結果、敵は全滅。ケーシーは死体の下敷きになって助かったみたいです」


そしてケーシーを突き出す。


「あんなの…あんなの…」


ずっとなにかブツブツと言っている。


「ケーシー、これでわかったでしょ? この国を誰よりも守りたいんだ。嘘じゃない。そのためにはやっぱり脅威となるものを所持しておく必要がある。例え使うときが来なくても」


「確かにそうかもしれないわね…うん…わかったわ」


これどうみても戦意喪失ですね。

二度と戦いたくないってことですね。

でもこれで過激派は抑えた。

それでも反対が無くなることはないだろうけど。

ケーシーは開放された。

だが大津の指示でケーシーは諜報員になった。

反対してたやつが仲間になるっていうのは違和感あるが一応監視下に置きたいんだろう。

別にいいけど。


「赤寺君、この国の未来はどうなっていくと思う? 意見を聞いておきたい。」


急にそんな難しい話しされても…。


「そうですね。他の国次第じゃないですか? 認められはじめれば問題ないと思いますよ。ただ現実はそんな簡単なことじゃないですけどね。そのほかにもこの国にいる子供達にもこの国の詳しい情報を教えるべきだと思います」


「ふむ。意外と考えているな。確かにそうかもしれない。簡単じゃないことは確かだね。この国の詳細? 例えばなにかな?」


「この国の資金源。そして最新技術の兵器。正直言って揃いすぎです。知っているのは軍の一部でほとんどが知らない人ばかり。これでは反乱が起きるのも不思議じゃないです」


俺は思っていることを話している。


「悪いけどまだ言えない。だがいつかは公言すると約束しよう。赤寺君、本当にこの国をよく考えてくれているな。感謝する」


「この国の住人ですから」


ここで俺が思ったことはいくつかあるが、隠されていることが多くて大きいことだけはわかった。

大津とは最近になってから会う機会が多いがまだまだよくわからない人だ。


「それとしばらく休暇をあげるよ。最近働きづめだったでしょ? 必要になったらこっちから呼ぶからさ。みんなに伝えておいてね」


それはありがたい。

久々の休暇だけどなにしようかな。

俺はみんなに伝えるため大津から離れようとするとなにか小声で言った。


「…子供のための国だ。そろそろ潮時か…」


・・・?

どういう意味だ?

なにか重要な気がしたが疲れが勝って考えられない。

気にしないでおこう。

みんなに休暇を告げると全員うれしそうにしていた。

疲れを癒すためにマッサージ店でも行こうかな。


「…辰真、ちょっといい?」


リリーに呼び止められた。

なにかあったのかな?


「どうしたの?」


「休暇なんだけどリリー買い物したくて、でも荷物が多くなるかもなの。だ、だから付き合いなさい!」


「なんだ、そんなことか…え?」


これは予想外だ。

リリーが買い物に誘ってきた。荷物持ちとして。

嬉しくもあり悲しくもある。


「遠いとこには行かないわ。近くのお店よ。いい? 後から予定入れて来られないとかやめてよね!」


「わかった。わかった」


流れでえーっと、これは…デート? が決まってしまった。

これで一応予定はできた。


「あとリリーあまり人多いのもいやだから誰も連れてこないでよ!」


「え? 買い物行くなら人なんていっぱいいるけど?」


「とにかく二人で行くのっ!」


リリーが早足で帰って行った。

よくわからないが二人がいいらしい。

こういうのは彼氏と行けば…彼氏?

リリーには彼氏いるのかな?

って俺はなに考えてるんだ!

とにかく今日は帰ろう…。

家に帰って鏡を見るとちょっとうれしそうにしている自分が映った。

女子からの誘いだ。

男としてこれ以上にうれしいことはないかもしれない。

しばらくして落ち着いたところで俺は寝ることにした。

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