軍学校初!超攻撃型特殊部隊FACの設立。
「はぁー…」
俺は朝の自由射撃に満足していなかった。
「なんだ? ため息なんかついて」
机でへたれていたところに声をかけられた。
だが今は何も話したくないしなにより相手するのがめんどくさい。
「どうせまた朝のんびりしすぎて海賀に置いていかれたんだろ? いつものことだろ?あ、それよりもあの噂、もう聞いたかよ?」
朝のんびりしすぎるのはいつものことで海賀に置いてかれるという話しはいつからか広まっていた。
それよりも噂とはなんのことだろうか?
気になったので適当に反応しておこう。
「あの、どちら様ですか?」
するとあーそうきたかと声にしなくてもわかるような表情を浮かべそいつは話し続けた。
「大津笹弥がこの学校に来てるって噂だぜ? それだけじゃない。なんでも軍学校初の特殊部隊を作るって。これはただ事じゃないぜ。あと一応言っておくが俺はレム様だ」
朝校門で見かけたのはやっぱり大津笹弥だったのか。それに特殊部隊を作る?
これは今までにない大事だがどう作るのかが気になるところだ。
話していると突然、校内放送が流れはじめた。
「本日の予定が変更、抜き打ちによるテストになります」
なるほど。抜き打ちテストときたか。
面白くなりそうだ。
放送が終わると軍の人と思われる2人の人物が教室に入ってきた。
「席に座れ! これより抜き打ちによるテストを行う!」
本格的というか、かなり本気みたいだな。
テストはなにをするのか?
まさか筆記じゃないだろう。
射撃かな?
そんなことを思っていると近くにいたレムは自分の席へと戻っていき教室は一瞬で静かになった。
静かになったところで軍人がまた話しはじめた。
「この抜き打ちテストは参加するもしないも自由! 自信あるものだけが受けるのを推奨する。覚悟が決まった者はグラウンドに集合、受けない者は帰宅し、明日、通常通り学校へ来い。」
強制参加じゃないということは過酷なんだろうな。
だが俺は受けないで帰宅はごめんだ。
辺りを見渡すと少しずつ立ち去る生徒がチラホラ。
1分くらいで三30人いたクラスが半数の15人になっていた。
俺が立ち上がりグラウンドへ行こうとした。
「ホラ! 行くわよ。こんな楽しそうなことしないで帰るなんて考えられないでしょ!」
「同感だな」
海賀と一緒にグラウンドに向かう。
「俺も一緒に行かせていただきますよ。一緒がいいですお願いします」
・・・レムと海賀の三人でグラウンドに向かった。
するとグラウンドには小さなバトルフィールドができていた。
他のクラス、学年も集まっていたが俺らのクラスとあまり変わらない人数しか残っていなかった。
それよりもこのバトルフィールド、室内を想定されているようだが天井が開いている。
どういうことだ?
見ただけで実戦同様のテストをするみたいだが。
学内戦? クラス対抗戦?
とにかく内容が気になる作りだ。
「ただ今から各クラス残った人数だけで大津笹弥の部隊と戦ってもらう。使用武器は自由だが実弾を使うわけにいかないので今回はゴム弾を使う。そうだな・・・下級生から順にはじめるとしよう。それと残った人数を考えて大津部隊は十人編成となっている」
ゴム弾ってまじかよ。
いくらゴム弾でも当たり所悪ければ死ぬぞ。
普通ペイント弾かBB弾にしないか?
それと戦闘服が用意されていないが銃のみなのか?
疑問に思っていると一人の生徒が声をあげた。
「戦闘服の着用はないのでしょうか?」
同じことを思っていたらしい。
「戦闘服はなしだ。ただ制服というのは動きにくいだろうから上はシャツにしても構わない」
強制参加じゃないわけが聞けた。
アザは確定か。
俺らは3年だからしばらく待つな。
さっそく、1年生が武器を手にとり入っていく。
いつもと違う雰囲気だからか震えているやつがいるがやる気だけはありそうな顔はしている。
扉を開け進入していくのが見える。
待っている方は中の様子はわからないが音は聞こえてくる。
バララララララッ!
ダンダンダンッ!
銃声が聞こえてくる。
五分くらいだろうか?
早くも終わったようだ。
「次!」
こうして俺らは順番が来るのを待った。
次々と終わっていく。
開始から二時間くらいだろうか? やっと順番が回ってきた。
最後のクラスだから時間かかったな。
「準備をして突入しろ」
テーブルには山のように置かれている銃の数々。
さてと、本腰入れるか。
「銃の所持に限りはあるんですかね?」
レムが質問した。
「好きにするといい。ただ身軽じゃないと動きが鈍るかもしれないぞ」
確かに軽いほうがよさそうだ。
俺は愛用しているAUGを手に取り、サブにP226を装備。
サブだけは全員共通ということで誰もが例外なくP226と決まっている。
「メイン2丁とかバッカみたい!」
「まぁまぁ、役に立つかもしれないだろ?」
海賀のメインはMP7。PDWというやつで扱いやすさには問題ない武器だ。
レムはというとメインにPSG-1にMP5というスナイパーライフルにサブマシンガンの組み合わせなのだがすでに見ただけで嵩張っているのがわかる。
・・・大丈夫か?
他のクラスメイトも準備はできたみたいだな。
最初の突入といきますか!
扉を蹴り破り突入する。
奥に2人見えた!
距離は約20メートル!
だがすでに察知されていたので先制されてしまった。
一人がライトマシンガン、もう一人はアサルトライフルだ。
ライトマシンガンの制圧射撃。
すんでのところで横の部屋にローリングで入り食らわずにすんだ。
このフィールドはT字の形をしていて左右に部屋があるようだ。
「海賀、大丈夫か?!」
「うん、平気だよ。それよりもいきなりハードル高すぎない? 入ってすぐこんなお出迎えありえない! それに…」
入口付近をみてみるとすでに六人やられているのがわかった。
全員が痛さで唸っているのが聞こえてくる。
「あれ、レムがいないよ? レムはどこだろ!?」
海賀が騒ぐと反対側の部屋から声が気こえてきた。
「二人ともいいか、俺がスナイパーでライトマシンガンをやる。だから相手の気を引き付けてくれ!」
「わかった! だけど大丈夫か? 狙える隙は一瞬だぞ?」
「大丈夫だ! やってくれ!」
レムを信じ、相手の気をこちらに向けるため海賀と撃ち始める。
相手は撃ってきた俺らをターゲットにし集中的に撃ってきた。
あとはレム次第。
「今だ! レム、頼んだぞ」
レムは瞬時に身体をだし、相手に狙いを定める。
それに気づいた相手がレムのほうへと銃口を向ける。
が、レムのほうが早かった。
バンッ!
レムは見事ライトマシンガンの兵を倒した。
あと一人!!
と思ったらすでに倒れているのが見える。
「私やっちゃったよー? いやーまさか倒せるとは思わなかったけど万事解決じゃん?!」
この海賀、射撃の腕だけはいい。
にしても良すぎなのが俺的に腹が立つが状況が状況だ。
上出来すぎてなにもいえない。
「おう、よくやったな」
「なにー? その反応? もっとホメてくれてもいいのよ?」
「ばか言うな。まだ二人だぞ? 始まったばかりなんだからこのくらいな」
しかし最初からクライマックスだった。
この先なにがあるのか見当もつかない。
とりあえずは落ち着けるようなのでレム他残ったクラスメイトと合流する。
「大変だったな! まー俺のスナイパーにかかればこんなもんよ!」
確かにレムが居なかったら危なかった。
「おうおう、助かったよ」
こんなことが続くともたないので全員で話し合った結果、二手にわかれることになった。
俺、海賀、レムは同じチーム。
9人でわかれたのだが連携を重視するため3対6になった。
「あの大丈夫ですか? 3人できつくないですか?」
クラスメイトの一人が心配してくれた。
だがこの3人だ。
大丈夫だろう。
「大丈夫。そっちこそ気をつけてな。よし、海賀、レム。いくぞ」
道が左右になっていたので俺らが左を担当することに。
どうやら部屋が2部屋あるようだ。
まずは手前から入るとしよう。
俺らはさっきのことを経験に扉をあけた瞬間にひっくり返るテーブルをバリケードにするように倒し身を潜める。
やはり撃ってきた。
だが銃声はかなり聞こえてくるので何人いるのかわからない。
「これ、何人いると思う?」
「私もわからない。右のほうも戦闘して撃っているから銃声が重なったりしてて判断できないよー。」
「まず合計を考えてみようぜ? さっき2人倒したから残り8人だろ? 部屋数は2つ。右側も2つだとすると単純計算で2人だな」
「なるほど」
さすがレムだ。こういうとき冴えてる。
しかしどうしたもんか。
一緒のところにいるから囮もできない。
このままというわけにはいかないしな。
だからといって身をだして撃つのもやられるようなもんだ。
困っていると海賀が近くにあった空マガジンを手に取った。
「ねね、これ敵側に投げたら反応するかな?」
それはいい案だ。
やる価値あるな。
というかそれしかない。
「やってみるか。レムはなにもしなくていいや」
「え」
そんな会話をして海賀が空マガジンを相手の近くに投げる。
なにを投げられたのかを確認するためなのかわずかだが銃声が止んだ。
今だ!
「「いっけーー!」」
2人で勢いよく相手に向かって銃を撃つ。
敵が2人倒れるのがみえた。
が読みが甘かった。
なんとこの部屋には敵が3人いたのだ。
俺と海賀は急いで隠れようとするが予想外の出来事にちょっと遅れてしまった。
そこで1回の銃声が鳴り響いた。
P226を構えるレムが目に入った。
レムのやつ。とことんおいしいところを取っていくな。
「なにもしなくていいんじゃなかったのか?」
小馬鹿にしたような口ぶりで喋ってきた。
だけどこのときだけは神様と思えるくらいレムが頼もしく思えた。
「ふんっ! ナイスカバーね! ま、私もあのくらいやってのけるくらいできたけどゆずってあげただけだしー?」
「なにをー? でも今のは俺がやってなきゃ全滅間違いなしだったぜ」
「いいや、私がなんとかしてました!」
「あーだめだ。ほんとにムカついてきたぞ…」
やばい。この状況で喧嘩はよしてくれ…。
確かに今のはレムが居なければ海賀と俺はやられていたかもしれない。
なのでここは海賀が正直になるべきだ。
「海賀、今のはレムの言うとおりだ。レムに感謝するべきだと俺は思うぞ。レム、今のは助かった。ありがとう。」
海賀は不機嫌ながらも顔をちょっと赤くして素直になった。
「…確かにそうね。ありがとう…」
「いいってことよ!」
これこそチームの連携だと俺はつくづく思った。
この部屋を出て次の部屋へと向かう。
「いよいよ最後の部屋だな。」
「なにがでてくるかわからねぇぞ。十二分に注意しないとな」
「私たちなら大丈夫でしょ? 余裕よ余裕。たぶん」
たぶんって…。
そんな会話も一瞬の一休み。
ここが正念場。
勢いよく扉を開けようとしたときだった。
レムが小さな鏡を手に扉の下の隙間にちょっと入れて中を覗きはじめた。
「奥まではみえないけど手前くらいなら見えるな。コンクリの柱に土のう。身を隠せるところはあるらしいな」
「じゃあ先に撃たれてもすぐに隠れることはできるってことね」
こういう行動でちょっとでも情報を頭にいれるだけで安心感が違う。
それに最後の部屋なんだからよく警戒しておかないといけない。
俺達は扉をあけ急いで身を隠した。
「お、やっと入ってきたかー。なに話してたの?」
ん? この声は・・・?
大津笹弥だ。
もしかして最後のボス的なのは大津笹弥なのか?
「わかってると思うけど最後はこの大津が相手でーす。んまぁ、ちょっとやりにくいかと思うけど手加減とかなしでよろしくー。」
そういうと大津はXM8を持ち、撃ち始めた。
「おいおいおいおい、こんなの聞いてないぞ? 確かにこの人以上にやりがいある人なんていないけどよ。俺らが太刀打ちできんのか?」
「私はやるけどね? 手加減しなくていいってよ?こっちは3人だしバリバリにしてやろー!」
「…不安だ」
それぞれ大津に集中しはじめる。
それにしてもリロードが早い。
あれ、5秒かかってますかね?
歴戦の兵士ってすごいなー。
するとレムが一番にしかけていった。
「とりあえずやるしかない!」
レムは素早くスナイパーを構え大津に向けて撃つ。
だが相手の反応が早いのに加え、うまく狙えないことから違う方へと弾は流れる。
「スナイパーは引っ込むべきね!」
海賀がコンクリートの柱を転々としMP7を撃ちまくる。
こんなものは簡単に避けられてしまうが距離は縮めることができた。
「ごめん、動けない…(笑)」
その先の行動も考えておこうね…。
「仕方ない。俺が正面から撃つ。レムは右から。海賀は左から撃て。三方向からアタックすればなんとかなるだろ」
身を乗り出しAUGを撃つ。
それをみた海賀が撃ちながらまた距離を縮める。
レムは狙うも大津が激しく動くため弾が当たらない。
まずいな。
このままじゃ体力を消耗するだけだ。
そう考えてるうちに反撃を食らう。
ちょうどリロードしてた俺はとっさに隠れたがレムがやられてしまった。
「ひとりずつでどうー?」
レムは肩を痛そうにしている。
「レム! 大丈夫か?!」
「平気だけどよ、さすがにスナイパーじゃ分が悪い。くっそー」
話していると大津が言った。
「だめじゃない。撃たれても身を隠さなきゃ」
そういってレムに向けてひたすら発砲。
「クッ…」
レムは耐え切れず気絶してしまった。
それをみた海賀が限界だったのか無謀にも突っ込んでいってしまった。
「よくもレムをっ!!」
海賀は撃ちながら突っ込むも大津には当たらず、逆に蹴りを食らって吹き飛ばされてしまった。
それをみた俺はただひたすら撃ち続けるしかなかった。
どれくらいの時間がたったのかわからない。
俺はどうしたらいいのかわからなくなっていた。
こんなテスト、やっぱり受けなきゃよかったのかもしれない。
いろんな考えが頭に巡る。
そんなとき、レムがひっそりと気を取り戻し、こちらをみてきた。
手にはMP5が握られている。
最後の攻撃にでるようだ。
海賀も気づいたのか特攻する。
俺も距離を詰めるためかけ寄る。
「辰真いいか、俺はもう限界だ。最大限囮になる。だから必ずやれよ!」
そういって握っていたMP5を俺に投げ渡してくる。
レムはP226を構え、撃つ。
海賀はMP7を投げ捨て、近接戦をするつもりだ。
俺はAUGとMP5を両手に大津に向かって撃つ。
だがなにかおかしい。
俺の放った弾を無視し海賀に集中していた。
俺はヒットしたのを確認し撃ちやめ海賀の手に注目していた。
ナイフ!
ゴムナイフじゃない!
本物だ!
大津は一番の危険物を優先した。
だが俺の放った弾を受けたため反応が鈍り、大津は海賀が振り回してきたナイフが頬をかすり、海賀めがけて回し蹴りでまた吹き飛ばした。
「おお、あっぶねー。終わりだ終わり」
すぐに衛生兵が大津にかけよる。
やっちまったか。
俺達どうなるんだ?
海賀のやつなんでナイフを…。
パニックになっていた俺とレムは謝るしかできなかった。
「「すみませんでした!」」
大声で謝る俺達を大津は笑っていた。
「いやいいって。まさか本物でてくるとは思ってなかったしなー。でもまぁ、君たち合格だよ」
そういってニヤっと笑っている。
「でも本物…ルール違反ですよね?」
俺がそういうと
「そんなルールあったっけ? 事故とは言え負傷しちゃったしなー。これは俺ら大津部隊の負けだよ」
本当にいいのだろうか。
それに海賀もやりすぎだ。
「レム君もすまんね。ちょっと撃ちすぎたかな」
「いえ、大丈夫です」
原因はそれか。
あとで海賀には言っておかないとな。
「とりあえず今後のことはあとで連絡するから今日はかいさーん。ほら、帰った帰った。」
大津に言われたとおり帰ることにした俺とレム。
海賀は目を覚まさなかったので学校の保健室に泊まりだ。
それにしても海賀があんな大胆の行動をするとは…。
でもそれだけ仲間思いということなのだろうか。
今日は疲れたため早々と帰宅し明日の学校に備え寝ることにした。
朝になり学校へ向かう。
そこには大津の部隊兵がいた。
「君たちは別で訓練する。海賀君はもう先に行っている」
そういわれ用意されていた車にレムと二人で乗った。
十五分くらいだろうか。
訓練所のようなところについた。
海賀がすでにいた。
「昨日はごめん。つい頭にきちゃって…」
どうやら反省しているらしい。
「大丈夫だよ。今後気を付けよ?」
そんな会話をしていると大津がやってきた。
「特殊部隊になる前のミッションだ。これができたらほんとに合格だよ。そんな難しいものじゃない。僕の護衛だよ」
・・・難しいなんてものじゃない。
ましてや護衛なんてしたことない。
どうするんだ…。
そういえば俺ら以外の人がいない。
どうなったんだ?
「君たちのクラスメイトも合格だが護衛の任務は君たちだけだ」
確かに護衛が多くても邪魔になるだけか。
それでその護衛とは?
「近いうち米国の大統領が訪問にくる。だが味方というわけじゃない。そのときの護衛のために訓練してほしい」
重大すぎるぞ…。
それに米国…。
このチャコは国というのを主張しているがだいたいは認められていない。
噂では日本が後ろ盾になっているとか聞くがそれ以外なにも聞いたことがない。
このタイミングで米国…。
不運だ。
「そんな気を張らなくていい。表面上はただの視察になっているが裏ではなに考えているのやら」
それで暗殺等を警戒ということか。
なにも起きなければいいな。
「それと訓練の教官のリリー。あ、こいつも護衛についてもらうから。じゃ仲良くよろしくー」
そういうと大津はどこかへと消えていった。
リリーとかいう教官、結構かわいい。
これで強いのだからこの国は怖い。
「適当な紹介があった通り、私はリリー。護衛の教官を務める。といってもほとんど立ってるだけよ。なんの心配もない。なにかあれば大津のバカを守ればいい」
口悪っ!
なんだかんだ大変になりそうだ。
「よろしくお願いしますね。私は海賀っていいます。あとそっちの鼻が伸びてるのがレム」
「そんなことない! 断じて!」
「あら、そう。よろしく。それで君は?」
俺に指をさしてそういった。
「辰真です。」
「そ」
興味なさげ。
ちょっと悲しい。
持っているM4A1に手をかける。
「それじゃ、訓練やりますか。って言ってもほんとに教えることちょっとしかないんだけどね」
それから護衛に関しての訓練がはじまったのだったが。
「ちょっと、ほんとにこれだけでいいんですか?」
俺は疑問しかなかった。
「え? 護衛なんてこんなものよ? ほとんど大津の周りにいるだけ。なにかあれば警戒、敵がいるなら応戦。でもそのまま戦闘するわけにもいかないから人数割って戦闘班と逃走班に。簡単に言えば殿決めて逃げるってことね」
これは楽…なのか?
確かになにかあれば大変だがなにもなければ立っているだけだ。
「忘れちゃいけないのが大津を守るのが最優先事項ってことくらい? でもまぁ、大津も素人ってわけでもないから手間とかはかからないと思うけどさすがに数いたらキツイってことね」
それにしてもこの前のテストで合格者がいなかったらどうしていたのか?
大津部隊が代わりに護衛を…?
それなら最初から大津部隊がやったほうがいい。
何か、裏がありそうな気がしてきた。
「私、思うんだけどさ。この任務簡単じゃない?」
海賀、そんな本音を言うんじゃない!
「俺もそう思うな。ただ俺は狙撃専門だから近接とかはあまり得意じゃないけどな」
レムまで…。
「残念ながら今回は何か起きそうだからあんた達に頼んでんのよ。この国もいろいろとあるからね」
心当たりがあってのことだと気を引き締めていかないとな。
でも変だ。
なにか起こりそうってことはもうちょっと詳しい情報があってもいいだろう?
敵はなんなのかとかどこの者なのかとか。
ちゃんとは把握できていないということかのか。
「リリーは教官だけどあんた達と同年代だから。しばらくの付き合いよろしく頼むわね」
同年代?
ちょっと年上かと思っていたけど外れてしまった。
でもこれでやりやすくはなったかな。
付き合いという意味で。
「それじゃあ皆、当日まで訓練よろしくね」
それから訓練と言う名の射撃、格闘、護衛の仕方をひたすら繰り返した。
レムは狙撃がメインだからどこか嫌そうにやっていたが海賀は楽しそうにしていた。
教官は厳しくもなくアドバイス等を教えてくれるのでありがたい存在になっていた。
最初から友達のような感覚が生まれた。
そしてついに明日、護衛決行となったので作戦会議になった。
「とりあえず殿と逃走で別れようか。リリーは殿するけどあと一人殿がほしいんだけど誰がやる?」
「こういうのはバランスよく別れないと」
俺は提案することにした。
「リリーとレムで殿、俺と海賀で大津の逃走。でどうだろう?」
「私もそれで賛成! これで決定ね」
「まぁ辰真が言うならいいんじゃないか?」
どうやら全員賛成らしい。
これで明日に臨める。
それにしても嫌な予感がする。
ちょっと援軍を頼んでおくか。
もしものときのためにテストを受けたクラスメイトに連絡をとっておくことにした。
そして当日。
米国の大統領が来た。
それを港で迎える大津。
ここチャコはほとんどが海からの入国になる。
空もあるがあまり使っていない。
お互い愛想笑いをして握手をしているが裏では探りを入れているだろう。
船からぞろぞろとAIロボットが降りてくる。
今の米国はそれぞれプログラムされているロボットを採用している。
もちろん人間もいるがロボのほうが多いな。
確か特殊構造でEMPにも多少強い作りになっているとか…。
サイコと呼ばれるらしい。
大津の護衛は4人に対して米国はサイコ100機…はいるだろうか。
「今日は頼むよ大津クン。それにしても護衛が少ないようだが?」
「こちらこそお願いしますよ。護衛なんてちょっとでいいですよ。そちらはやけに多いようですが。半分は港に置いてってくださいね?あんなに多いと邪魔なので」
「わかった」
そういうと議事堂へと向かった。
この会談、お互いに利益があるらしい。
チャコは米国がくることで周辺国への国としての主張。
米国は視察とこの国は米の監視下にあるという主張。
だから特別に大人を入れた。
「しばらく大統領と2人で話す。護衛は外で待っててくれ」
大津がそういうので部屋の外で待つことになった。
しっかしロボットというのは近くにいると怖い。
それに武装もしてるとなるとな。
30分はたっただろうか。
議事堂の二階の部屋にいると下から大きな爆発がした。
これが心当たりの正体か?
それよりも緊急事態だ。
急いで大津と大統領のいる部屋に入る。
「大津! 大変だ。爆発が起きた。逃げた方がいい」
俺はそういうと大津の周りを囲むように護衛に入る。
襲撃してくる事も考えてシェルターに行くことを決める。
「いやーこの国の嫌なところを見られたな。大統領、すみませんがシェルターにお願いします」
「早く行こう。サイコ達に鎮圧を命じたから多少は平気なハズだ」
そういうと俺達は二階の非常階段から議事堂をでると銃声が聞こえてきた。
ん? 相手は子供だぞ?
慌てて物陰に隠れる。
仕方ない。
ここで別れることにしよう。
「ありゃチャコの反政府の過激派だな」
大津がそういうが俺は今までに反政府のそれに過激派がいるなんて知らなかった。
「とにかくここでリリーとレムには殿を頼む。それと援軍呼んであるからしばらくするとくるはずだからそれまで耐えてくれ」
「いつの間にそんなの呼んだんだ? ま、このレム様にかかれば問題なしよ!」
「リリーもいることだし大丈夫よ! 早くシェルターに行きな!」
シェルターまでは10分くらいかかる。
だが俺は行ったことがないので詳しい道がわからないが大津が指示してくれるらしい。
「邪魔があればサイコを置いて行くから敵は無視しよう」
米大統領の気の効きがすごい。
「それはありがとうございます。あ、そこ右ね」
途中で敵に会うもサイコが囮になるためシェルター入口まで楽に来ることができた。
「今扉を開ける」
大津がパスコードを打つと分厚い扉が口を開けた。
入ろうとした瞬間近くにいたサイコがやられるのがみえた。
・・・ウソだろ。
「辰真、ごめんね? 本当はこんなことしたくないんだけど仕方ないの」
海賀がサイコを破壊し敵意を向けてきた。
俺にはこの状況がわからなかった。
あの海賀が? 裏切り?
「どおりでテストの時に命を狙ってきたわけだ。赤寺、悪いけど先シェルターに入ってる。大統領は任せとけ」
大津、大統領がシェルターに入り扉が閉まる。
「なんでだ?」
「なんで? それはこんな国必要ないからだよ。今じゃ各国から狙われてる」
「だからって…」
こんなのあんまりだ。
「どういうつもりだ?」
「私は最初からスパイとして生活してた。だけどだんだんとここの生活が馴染んできてスパイなんてそっちのけだった。けどそうもできなくなった」
「ならこのままでいいじゃないか?!」
「それができてればこんなことしないよ・・・」
海賀は涙を流していた。
海賀の言ってることに嘘はないだろう。
けれどなにかだめな要素ができてこうするしかないようだ。
「ごめんね、本当にごめんね。今までありがとう」
そういうとナイフを構えて振りかざしてくる。
「さようなら」
―!?
俺はサブのほうが早いと思い、ホルスターから拳銃を手に海賀に向けて撃つ。
ほんの僅かナイフが肩に刺さるが俺の放った弾は海賀の胸元に命中。
海賀は倒れ、そのまま動かなくなった。
「たつ…ま……」
「なんだ!!」
「気を…つけてね………主要国は…信じちゃだめ………」
血が大量に流れでてきている。
ちょっとずつ体が冷えてきているのがわかる。
「もういい、喋るな…もういいんだ」
海賀は微笑み、力尽きた。
「おい、まだお前には聞きたいことが山ほどあるんだよ・・・おいっ!」
事態が治まったのかリリーとレムが駆け寄ってくる。
俺は事情を説明した。
「海賀がスパイ…もう、わかんねぇな」
「リリーも残念に思います…」
状況整理は増援として来てくれたクラスメイトがやっているらしい。
俺達は大津と大統領を確保し、とりあえずは会談終了。
米大統領は帰っていった。
そのあとすぐに海賀の葬式が行われた。
「仲間の死はどんな形であれ悲しいものだ。これを無駄にするわけにもいかない。今後、君たちの活躍に期待する。海賀君に敬礼!」
大津も参加するほどの葬式。
海賀…お前、たいしたやつだよ。
皆で敬礼し海賀を見送った。
そしてテスト合格者とリリーは大津に呼び出された。
「そして本日よりテストを受け、合格した者とリリーを合わせた9人は特殊部隊、FACに任命する」
・・・本当は海賀もいたはずの部隊か。
「この国のため、頑張ってくれたまえ」
こうして特殊部隊ができたがあまりにも犠牲がでかい気がした。
この先も大津を支えることになるがいつどこで命を落としてもおかしくない。
それと米大統領はなにを考えているのか今回の騒動は公にはしないと言ったらしい。
ほんとに読めない人だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます