子供政治。

tear

プロローグ。

子供と大人の違いはどこか?


知識の豊富さ?

見た目?

例を細かにあげるとキリがない。

結局どこなのか?

俺には違いがよくわからないので知りたいところだがここ、人工島『チャコ』には大人はいない。

例外というのがあるらしい。

チャコで大人になった時に子供がいればこの国をでなくてもいい。


この国が決めた大人というのは25歳からという。

つまり、0歳から24歳までが子供でそれ以上は大人というわけだ。


このチャコができたのは確か10年も前だった。

当然各国から非難の嵐。

戦争だって起きたという。

俺は5歳だったので記憶が曖昧だが一人の男だけ覚えている。


大津笹弥おおつささや


このチャコを造った人物で今でもこの国のリーダーとして活動中。

日本人であるもののなんとも偉大なことをしたもんだ。

もちろん大勢の力あってのことだと思うがこいつしか覚えていない。


言い忘れていたがこの国は子供であればいいので他国の子供がチャコに来るのである。

捨て子、内戦、あるいは大人に憎しみなどを持っているやつ。

さまざまいる中、俺はというとただ大人がいない国というのに興味をもち日本からここへ来た。

両親の反対もあったが最終的には無言で家を飛び出しなんとか生活できている。


チャコの主な言語は日本語。

他国からきた子供達にはまず日本語を使わせるため教材やら学校やらは無償で与えられる。

別にほかの言語を使ってはいけないとかはないみたいだが今のところ俺が知る限りでは日本語しか聞いていない。


―ダダダダダダッ!


銃声が聞こえた。

この国では珍しくない。

政治は軍がおこなっていて学校も軍学校と一般学校とで別れている。

俺は軍学校に通っていて家から学校まで徒歩5分の距離に住んでいる。

なので銃声が聞こえても…銃声っ?!

しまった! のんびりしたくをしていたら朝の自由射撃の時間が過ぎちまった!

今の時間は…6時38分。

朝の自由射撃をしていいのは6時30分から8時まで。

8時まで撃ちまくろうと思っていたのだが出遅れてしまった。


―ピンポン。


家のチャイムが鳴った。

おそらく同じ軍学校に通う海賀悠かいがゆうだろう。

クラスも同じで自然と仲良くなってしまった。

…いや、なっていた。


学校は一般と同じ3年制で各学年4クラスで1クラス30人ほど。

いろんな人種が集まっているがこれがうまくいっている。


「ねえー、私さきにいっちゃうよー?」


それはさせない。あり得ない。

俺はインターホンのスイッチを入れた。


「あと1分待ってくれ! すぐだからすぐ!」


言っても無駄だろうが悪あがきくらいはする。


「遅い! 辰真たつままたゆっくりしてたんでしょ? あのね、自由射撃始まってんのわかってるのかー! それじゃおっ先ー♪」


・・・行ってしまわれた。

それと辰真というのは俺の名前。

赤寺辰真あかでらたつま

っと、こんなのんびりしてられない!


俺は荷物を持ち家に鍵をかけ、走って学校へと向かった。


―ん?

校門が見えてきたのだが近くに怪しげな黒い車が止まっている。

俺は疑問に思いつつも校門に吸い込まれるように過ぎ去ろうとした時、黒い車から一人の男が降りてきた。


待ちがいない。

あの男、大津笹弥本人だ。


俺は一目みて止まることなく校門を通り過ぎた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る