特殊能力人間の登場。

実は今朝、妙なことがおきた。

俺はいつもどおり起床してコップにジュースを注いだ。

そしてジュースのパックを冷蔵庫に戻そうとしてジュース入りのコップからほんのわずか目を離したんだ。

一瞬だった。

注いだはずのジュースなくなっていたんだ。

これをリリーに話してみる。


「ばかじゃないの? 寝ぼけてたんでしょう?」


「そんなことない! 確かにジュースをコップに注いだんだ。おかしいだろ」


「はいはいー」


リリーは興味すらなさげでどこかへ行ってしまった。

すると次の日。


「辰真…謝るわ…私のとこにもでたわ…!」


「なにが?」


「きっと透明人間よ! 私一人しかいないはずなのにとっといた苺がいつのまにか消えていたんだもの…!」


やっぱり透明人間が実在するのか…?


「なに怖い顔して話してんの?」


そこに大津がやってきた。


「聞いてくださいよ! 俺とリリーのところに透明人間が現れたんですよ」


「透明人間?」


「はい! 俺はジュースを取られて、リリーは苺を取られました」


「そんなわけないでしょー。夢だよ夢」


そして次の日。

大津の顔が冴えていない。


「なにかあったんですか?」


「ん? 透明人間なんていないんだよ? いい?」


これは透明人間に出くわしたな。

でもなぜこんな身近なところに現れるんだ?


「あ、レベッカだ」


「はぁー…」


どうやら元気がないようだ。


「どうしたー?レベッカー?」


「実はですね…。とっておいたとっっっっっておきのチョコがいつの間にかなくなってたんです! ショックで立ち直れないかもしれません…」


これはまたまた身近な人が…。

これは事件のニオイがしますね…。


そしてまた次の日。


「やばい! 大ニュースだぜ! なんと俺! 透明人間にあっちゃったかもしれない!」


なんかこの流れわかってきたぞ。

全員なにかしらやられるな。


そして次の日はスクーが。

その次は赤城が。

その次にエルが被害にあっていた。

これはもうあいつしか心当たりはない。


「透明人間…? し、シラナイヨ?」


ホカがいつもと違って様子がおかしい。

それにしてもわかりやすいやつだな。


「そうかそうか。これからは自由に開発ができなくなるかもなー」


「ご、ごめんなさいいいぃぃッ!!」


やっぱり何か知ってるんだな?


「言いますっ! 知ってることすべていいますからっ!」


言うとおり知ってることを教えてもらった。


「実は…。特殊能力にあこがれてからがはじまりでしたっ! でも特殊能力なんて実在するのかもわからないもので技術力でなんとかできないかなって思ったんですっ! そしてホカはついに特殊能力の一つ、透明人間の作製に成功したんですっ! でもまだ人体に使えるものなのかわからなかったのでその透明化になれるもの自体に命を吹き込んだんですっ! そしてたら暴走してどこかに行ってしまったというわけでして…」


なんてこった。

それじゃあ今この国には透明人間がいるということか。

夢がある話しでちょっと怖い。


「それで? その透明人間を止める方法はないの?」


「はい…。止めるには捕まえるしか方法がないんですっ!」


透明人間を捕まえる…?

相手は見えないのにどう捕まえるんだ。

それに透明人間がなにもしてこないとも限らないぞ。


「大丈夫ですっ! 念のためにグレードを下げて作ってありますからっ! 透明人間氏は3時間透明になったら10分はチャージで透明人間が見えるようになりますっ! その10分で捕まえればいいんですっ!」


簡単に言うな…。

そもそも透明人間なんだからどこにいるかわからないんだから捕まえるっていっても姿がわからないんじゃなー…。


「それは大丈夫ですっ! ちゃんと対策として透明人間に発信器をつけましたからっ!」


なら見えなくても場所はわかるってことか。

これなら捕まえることができるかもしれないな。


「じゃあさっそく捕まえに行くかー」


メンバーは俺にリリー、レベッカ、レム、エル、ホカ。

発信器が示す場所にきたがほんとに見えない。

動いているのかもわからない。


「あっ! レムさん後ろですっ!」


「ええ!? そう言われてもな…。そうだ。掴むと感触はあるのか?」


「存在がないわけじゃないので感触はありますよっ! 見えないだけですっ!」


そして捕獲を目指す。


「あっ! レベッカさんの前に居ますっ!」


「えええいいっ!」


レベッカは手前にしてつかむ動作をするが捕まえることはできなかった。

やっぱり見えるようになってからが本番か。

今は2時間くらいたったか?


「エルさんっ! 左ですっ!」


「ござるっ!」


「あっ! 赤寺辰真の斜め左っ!」


「ここかっ?」


全然だめだ…。


「こんどはそっちっ!」


「あっ! こっちっ!」


「あっちっ!」


だめだ。

見えないとやっぱり捕まえるのは難しい。

すると誰もいなかったところに女の子が現れる。


「あれが、透明人間さん…?」


「そうっ! 早く捕まえてっ!」


これでやっと終わりだな。


「ちなみにあの姿は具現化の実体化してるだけで人間ではあっりませーんっ!」


そうなんだ。

なにか悲しいな。

これで突然物がなくなったりはしないだろう。


「それでまだ問題があるんだけどっ…。実は他の実験体も逃げちゃっててっ! ほんとごめんなさいっ!」


こんなのがまだいるって言うのかよ・・・。


「あと何体なんだ?」


「…3体と1匹ですっ!」


なんだそれ。

3体はまだわかる。

1匹ってなんだ?

動物ってことなのか…?

今リアルに顔が


(´・ω・`)


ってなってるよ。


「早いとこ捕まえよう」


「それがだねっ…。能力がみんな違うのっ!」


「えええ! あとどんなやつがいるの?」


「リリー、もうだめかも…」


「スライム男にスライス男っ! 蛇女に猛動犬クイルだよっ!」


スライム男以外やばそうなのしかいないのは気のせいかな?


「中でもスライス男は危ないやつっ!」


そしてまずは楽なスライム男から捕らえる。

一応発信器はみんなについてるらしいから探す手間は省ける。


で、スライム男なんだけど…。

ほんとにスライム。

っていうか、男かどうかもわからないんだけど。


「よし、レベッカ! いけっ!」


「えっ。 えー! あたしですか?」


レベッカは恐る恐る近づいてスライム男を掴んだ。

だが液状なのでつかんでもつかんでもきりがない。

そして俺の狙った通りだっ!

スライムでベトベトになったレベッカが…あとはご想像にお任せします。

結局掃除機で吸いこんで確保した。


次は蛇女だ。

髪の毛を蛇にできる能力らしい。

ちなみにメデューサではないので石化する心配はないらしい。


「ほんとだ。髪の毛が蛇になってる…」


いや、これは結構すごいな。 

迫力あるよ!

で、これあまり意味ないように見えるけどどうなんだ?


「言い忘れてたけど蛇は毒蛇だから気を付けてねっ!」


「え?」


そう言った瞬間レムに蛇が噛みついた。


「あああああああああっっ…!」


急いで処置してレムは大丈夫。

だがまだ体がだるいって寝込んでしまった。


「次は猛動犬クイル行ってみようっ!」


たぶん犬だと思う。

っていうか犬だ。

想像だとすごい気性荒くてなんにでも噛みついてくるみたいな感じなんだけど大丈夫かな?


「ここで問題っ! デデンっ! 猛動犬クイルの能力はなんでしょうか?! 1、とてつもなく凶暴で危なっかしいやつ。2、とても動くのが早くてすばしっこいやつ。3、とても弱っていてひ弱なやつ。 どれでしょうかっ!」


どう考えても2なんだよなー…。

これで1とかだったら泣くぞ。


「正解はっ…! 2でしたっ!」


確かに早いな。

ちょっと動くだけでいつの間にか視界からいなくなっている。


「でも1も正解なんだっ!」


「グルルゥ…」


一番だめなやつだった…!

いやいやどうすんの?

早くて凶暴とか捕まえるとかの次元じゃないんだよなー…。


「それで?」


「頑張ってくださーいっ!」


「よし、それじゃあエル。頼んだ」


「拙者でござるか…」


エルは腰を低くして近寄る。


「よーしよし。いい子でござるよー…」


不思議と大人しくなっている。

やるじゃないか! 

ちょっと見直したぞエル!


「ぎゃあああああああっっ!」


あとちょっとで手に触れる距離だったのに高速で手を噛まれたらしい。


「もう嫌でござる…! 痛いでござる…!」


「仕方ない。選手交代だ! リリー! 頑張ってくれ…!」


「今のを見て行けってどんだけ鬼畜なの…? あんたいきなさいよ?」


「いや俺この国の代表じゃん? ケガとかしたら大変なことになるかもじゃん?」


「腰抜けが…。いいわ! みてなさい?!」


リリーが中腰で近寄る。

おい!

それさっきエルやってだめなやつだぞ!


「いい子ね…。動かないでねー…」


すると動かないでじっとしている。

これはいけるんじゃないのか?

そして手が触れるあたりで犬は動いた!

リリーはなぜか正座をしていて犬はその正座しているリリーの足の上でくつろいでいる。


「なんなのこれ…? 懐かれたの…?」


すると今度は体育座りでおしりと脚の隙間に犬はいた。

ひょっとすると…エロ犬なんじゃないか?


「ま、解決だな?」


「早く助けないさいよ!」


「いやいや。そのまま懐かれといてくれれば暴れる心配もないからそのままで」


そして見事捕まえることができた。

これで全部だな。

あーよかったよかった。


「なあホカ。あんだけ完成度高いなら人間でも大丈夫なんじゃないのか?」


「それはやめたほうがいいねっ! あれはあくまで成功例で何回か失敗してるからねっ!」


「確かにやめたほうがいいな。それで? 特殊能力の開発はまだ続けるのか?」


「もうおしまいにするよっ! 危険な目にもあったしっ!」


「そっか」


こうして特殊能力の開発は終わってしまったがいつか本物が現れるときがくるかもしれない。

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