赤寺辰真。

俺の小さい頃の記憶。

一番よく覚えているのが一人の男が戦っている姿だ。

これは10年前、チャコという国ができると同時におきた戦争の映像。

そのときの俺はまだ5歳だったので詳しいことは覚えてない。

そして俺がまだ日本にいたころの話しになる。


俺は毎日問題なく中学校へ通っていた。

友達もそれなりにいた。

しかしいつからかチャコに憧れをもつようになった。

なぜなら好きなことができるからだ。

あの国に行けば自由になると信じていた。

だがいざ両親にチャコに行きたいというと当然のごとく拒否されてしまった。

それはそうだ。

大人からの印象はとても悪く、反逆国家とまで言われているのだから。

それでも俺はなおさら行きたくなった。

そこまで言うなら興味がわく。

そしてこの興味が俺を動かしてしまったのだ。

学校のない休日に俺は家を出た。

そしてなんとかチャコへいけないか模索する。

しかしわかったことは一つだけだった。

行く方法は一つで船しかないということだ。

もちろん俺は船なんて動かせないし所有なんてしていない。

チャコ行きの船というのも聞いたことがないし見たこともない。

そこで一つの噂を耳にする。

なんでもチャコ行きの船は違う行先を表示しているそうだ。

それでわからないわけだ。

俺はさっそくどこに向かうように表示しているのか調べることにした。

インターネット、聞き込み、裏業者。

あらゆるものを使って調べた結果、八丈島ということがわかった。

だがそんな行先にすれば関係のない人たちだって乗ってくるはずだ。

意味がわからなかった。

でもこれに賭けるしかなかった。

俺は八丈島行きの船に乗った。

特にかわったところもなく、何事もなく出発する。

そしてあと少しで八丈島につくというところで子供たちが小型船に乗り移っているのが見えた。

そういうことか。

俺は躊躇なく小型船に乗り移る。

そして小型船が動きだし、チャコへと着いた。

そしてここで海賀と出会った。


「あなた、日本からですよね…?」


「そうだけど」


「あっ! すみません。私、海賀っていいます。海賀悠です!」


「赤寺辰真です」


なんだこの女?

すごい馴れ馴れしい。


「心細いので近くにいていいですか?」


「どうぞ」


「ありがとうございます♪ 同じ小型船に乗ってましたよね? 一目みて上陸したら声かけようって思ったんです」


よくまわりをみてるやつだな。

俺なんてここまでくるのが一苦労でまわりをみてる暇なんて全然なかったのに。


「チャコには何をしにきたんですか?」


ただ興味があったからとかじゃ笑われてしまうかもしれない。

俺はとっさに、


「軍に入るため」


と言ってしまった。

すると海賀は、


「同じですね!」


と笑いかけてきた。

なんて運が悪い。

これじゃあ行動一緒になってしまう。


「それじゃあ軍学校入りましょうか!」


海賀に連れられ軍学校にいった。

ここは普通の学校とは違って武器の扱いを習うところみたいだ。


「楽しみですねー!」


不思議と俺もワクワクしてきてしまった。

そして軍学校へと入り、武器の扱いを学ぶ生活がスタートしたのだった。


こうして振り返ってみると海賀は最初から怪しかったのかもしれない。

でもなぜ俺に声をかけてきたのか。

それだけが疑問に残る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る