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第25話 撮影決定 その1
それから、俺と吉田は綿密な打ち合わせを部室にて繰り返し、映画の大まかなストーリーを設定することができた。黒沢に関しては現場でカメラを操作してもらえばいいだけなので、この話し合いには参加させなかった。
「トイレの花子さん」に対しても、こういった内容の映画で行くと説明するのもなんだかおかしな話だと思ったので、完全に俺と吉田の二人だけの映画の流れを作っていった。
そして、一週間が経った。
夏休みまで残り僅かとなったその日の放課後。いつものように俺と吉田は部室にいた。
「……まぁ、こんなところか」
俺は企画をまとめたノートを前にしてそう呟いた。
「うん。大体大丈夫でしょ。脚本も大体できているし」
「そうか。では、明日ぐらいから撮影を始めるとするか」
「そうだね。このこと、黒沢ちゃんにも伝えておいた方がいいと思うんだけど……」
「はい?」
そこへ、タイミング良く黒沢が部室の扉を開けて入って来た。
「おお、黒沢。撮影、明日から始めるからな」
「え? 明日? そんな急に……また美夏に内緒で勝手に決めましたね?」
「いいじゃないか。監督は俺なんだ。日程を決めるのも俺だろ?」
「……はいはい。わかりましたよ。監督」
黒沢は心底嫌そうな顔をしながらそう言った。
「さて……日程決定の件は役者にも伝えに行かなければな」
「え? 役者って、あの『トイレの花子さん』にですか?」
「そうだ。なんだ、そんな狐につままれたような顔をして」
「だって……いや、まぁ、もういいです」
「はぁ? なんだ? まったく……変な奴だな」
よくわからない反応の黒沢は放っておくとして、俺達はさっそく花子に会いに行かなければならなかった。
「吉田。俺は花子に会いに行くぞ。お前はどうする?」
「え? あ、うん、じゃあ、僕も行くよ」
「そうか。黒沢。お前は?」
「……私は行きたくないです」
「なんだ? 行かないのか? 撮影係なんだから、役者とは親密になっておいた方がいいんじゃないか?」
「大きなお世話です! 私は行きませんから!」
黒沢はヒステリックにそう叫ぶと、今来たばっかりだというのに、乱暴に部室の扉を閉めてそのまま出て行ってしまった。
「なんだ? アイツは?」
「あはは……まぁ、黒沢ちゃんも色々溜まっているんだよ」
「溜まっている? 何が?」
「それは……ストレスとか?」
「ふーん。大変だな。まぁ、いいや。とにかく行くぞ、吉田」
仕方がないので俺と吉田の二人で、旧校舎に行くことにした。
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