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第21話 花子さんVS学校の怪談 その1
「さて、では、映画の撮影について話して行きたい」
翌日の昼休み。
俺はさっそく映画部の部室に黒沢、吉田を招集した。黒沢は、ばつが悪そうにそっぽを向いている。
「いいんだよな? 黒沢?」
「……い、いいんじゃないですか。幽霊が見つかったなら」
「よし。じゃあ、それでいいな」
黒沢は納得していないようだった。だが、昨日、俺と吉田を残したまま逃亡してしまった手前、強く言うことができないようである。
「まず、映画のタイトルから発表する。タイトルは……ずばり『トイレの花子さんVS学校の怪談』だ!」
俺は部室に響き渡るように大声でそう言った。それを言った途端、黒沢も吉田もキョトンとした顔で俺を見た。
「どうだ? 素晴らしいタイトルだろ?」
「あー……あの、ちょっといいですか?」
「ん? なんだ、黒沢。言ってみろ」
黒沢はジト目で俺を見ている。
「……確か、先輩はホラー恋愛映画を制作するって言っていた気がするんですけど……今のタイトル……なんでしたっけ?」
「『トイレの花子さんVS学校の怪談』だ」
「ああ、そうですか……それ、どう考えても恋愛映画じゃないですよね?」
一転して強気でそう言う黒沢。俺はチラリと吉田を見た。
「ああ……えっとね、黒沢ちゃん、その……花子さんが、恋愛映画はちょっと……って言ってきたから路線を変更したんだよね?」
「はぁ? な、なんですか、それ? 花子さんが?」
「ああ。そうだ。花子の方から俺との恋愛映画はNGだと言って来たんだ。だから、俺が譲歩して普通のホラー映画で行こうってことにしたんだよ」
すると、黒沢は肩をすくめて俺と吉田を見た。
「やっぱり……そんなことだろうと思いましたよ。どうせ、花子さんなんていなかったんでしょう?」
「なっ……黒沢! お前、逃げたくせに何を言う!」
「だって! おかしいでしょ? 花子さんが恋愛NGって。それじゃあ、なんですか? 花子さんに先輩がフラれたってわけですか?」
「ああ。そうだ」
俺は正直にそう言ったが、それを聞いても、黒沢は再び大きく溜息をついただけだった。
「……はいはい。わかりましたよ。もういいです。美夏はこの部活、辞めますから」
「おい! 黒沢!」
「なんですか。止めても無駄ですよ。もっとも、約束通り恋愛映画を撮るっていうのなら話は別ですけどね」
黒沢の態度は真剣だった。おそらく、マジで部活をやめようとしているのだろう。
しかし、今ここで黒沢に部活をやめられるのは困る。せっかく面白い映画が撮れそうになっているのだ。
「……分かった」
俺は立ち上がった。
「な、何が分かったんですか?」
「……放課後、行こうじゃないか。旧校舎に」
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