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第16話 トイレの花子さん その1
「よし。じゃあ始めるぞ」
トイレを出た俺達は、旧校舎の教室にいた。
「えっとだな……お前、名前は?」
教室にいるのは、俺と吉田。
そして、先ほど遭遇した「トイレの花子さん」である。
「トイレの花子さん」は教室で見てみるとより一層トイレの花子さんっぽかった。おかっぱ頭に、陰鬱な雰囲気。何より何故かずぶ濡。
こんな夜中に旧校舎でずぶ濡れになっているのなんて、まずお化けや幽霊と考えて間違いないと言える。
「わ、私の名前は……」
「なるほど。花子、な。だから、『トイレの花子さん』なんだな」
「ちょ、ちょっと待って、白石君」
「なんだよ、吉田。撮影中だろ。一旦カットな」
「ああ、ごめん……じゃなくて! 白石君、その子今自分の名前言おうとしてたと思うんだけど……」
「あ? コイツは『トイレの花子さん』なんだよ。花子以外の何の名前があるんだ?」
「だからさ……あのー……君の名前は?」
吉田が再び「トイレの花子さん」に尋ねた。
「わ、私の名前は……花子じゃなくて――」
「おい! 吉田!」
「え? な、何?」
思わず俺は怒鳴ってしまった。
「お前! 馬鹿か! お前が変なこと言うからコイツまで変なこと言い出しちまったじゃないか!」
「へ、へ? ど、どういうこと?」
「いいか? コイツの名前は『トイレの花子さん』なんだよ。そして、花子さん以外の何者でもない。『花子』でいいんだよ。な? 花子?」
俺がそう聞くと、花子は多少戸惑っていたが、その後小さく頷いた。
「な? 花子なんだよ」
「あ、あのね、白石君、その……言いにくいんだけどさ。この子が着ている制服、ウチの学校のだよね?」
「え? ああ、まぁ、そうだな」
確かに、花子が着ている制服はウチの学校の高等部のものだった。
「だからさぁ……この子、花子さんじゃなくて……人間なんじゃないかなぁ?」
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